インタビュー

【中央児童相談所 鈴木浩之 #4】劣等感を払拭する方法が“勉強”だった

鈴木浩之4

プライベートで論文を執筆

加藤:様々な活動をされていますが、過去に虐待に至った保護者にインタビューして論文にまとめているとお聞きしました。

鈴木氏:当時の上司は所長でしたが、保護者の話をまとめたいと言ったら、「それは大切なことだからやりなさい」と仰ってくださったので、私の通常業務の合間にやることになりました。子ども支援課の課長の時でしたが、課の担当者が家庭訪問する時に連れて行ってもらって、そこで許可をいただけた方にインタビューをおこないました。

加藤:虐待対策支援課に移られる前からされていたんですね。

鈴木氏:はい。ですので、インタビューは仕事として、論文はプライベートで書きました。

加藤:論文はプライベートになるのですね。

鈴木氏:私は出勤時間が往復で5時間あるんです。だから、論文には土日も使いますけど、打ち込む作業は電車の中でやることもできます。

自分の知識が全く役に立たなかった

加藤:論文を書くのは大変ですよね。なぜ、そこまでして書こうと思えたのでしょうか?

鈴木氏:私が児童相談所に来たのは35歳の頃です。もともと福祉関係の仕事をしていたので、自分の中ではそれなりに学んできたつもりでした。でも、児童相談所では自分の知識が全く役に立たなかったんです。

 まず、同僚が話していることがわからない。同僚が家族に対してアセスメントをした結果を聞くと、「限られた情報の中で、なぜここまで分かるのか?」と本当に驚きでした。
 一方で、当時の人たちは厳しかったので、怒られたり、傷つくことも言われました。そういう体験をして「自分がこんなところで終わるのは悔しい」と思った時に、私の選んだ道は勉強することだったんです。

「おまえが担当する子どもが不幸だ」

加藤:どういう言葉に傷ついたのでしょうか?

鈴木氏:「おまえが担当する子どもが不幸だ」と先輩に言われたことはすごくショックでした。その先輩とはその後に仲良くなりましたが、当時、「私じゃなかったら、もっとうまく話が進んだかな」と、先輩の言うことが腑に落ちる部分もあったんです。

加藤:他の人が同じ思いを繰り返さないように、論文をまとめて共有したいと思ったのでしょうか?

鈴木氏:当時はそういうことをあまり考えていなくて(笑)、自分の劣等感を埋めるような意味合いで勉強して、自分が取り組んだことの成果を確認する作業という感じです。家族に理解を得て、心理学の勉強のために2年間、平日の夜と土曜日に学校へ通いました。

 修士論文では、性的虐待を受けたお子さんにインタビューして、自立して大人になっていくプロセスをまとめました。当時、そういった論文は少なかったです。その他にもいろいろな実践を研究としてまとめると、色んなところで取り上げてもらいました。引用されたりすると、自分が書いた論文でも注目されるのかと気づきと驚きがありました。

現場と研究は一対のもの

鈴木氏:最初は自分を確認するために研究を始めましたが、やがて、実務の中でも研究が必要ではないかと思うようになりました。本来、現場と研究は一対のものなんです。お互いに行ったり来たりしないと、お互いが高まっていかない。

 実務家はすごく貴重な経験をしていますが、忙しいからあまり研究できていないですよね。でも、親御さんの言葉を代弁できるのは、現場にいる人だけです。特に虐待対応のような変化のある分野は、現場のほうが先に進んでいくんです。私はソーシャルワークは研究者と実務家が離れがちな分野だと思っています。心理学領域では比較的できていますが、福祉学領域にはあまりない印象です。

壁にぶつかる度に勉強の必要性を感じる

加藤:コンプレックスを力に変えて成功する起業家などは多いですよね。鈴木さんは劣等感を払しょくできたタイミングはありますか?

鈴木氏:臨床心理士という資格を38か39歳の時に取りました。ただ、私は心理の仕事をするためではなく、ソーシャルワークの中に心理学の要素を取り入れることで、良い仕事ができるようになると考えていました。自分の存在価値みたいなものを資格に頼るのはちょっとせこいような気もしますが(笑)、それでも自分しかできない仕事領域を感じられました。

 以降、論文などに興味を持ってもらえるようになり、ようやく自分の中でポジションを見つけられたように思いました。だけど、仕事をしているとまたどこかで行き詰まるんですね(笑)。そういう壁みたいなものにぶつかって、その度にもっと勉強しなければいけないと感じる繰り返しです。

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※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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