インタビュー

【中央児童相談所 鈴木浩之 #3】組織で新しい活動を普及させる時、過去は否定しない

鈴木浩之3

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子どもは虐待のない世界で生きたいだけ

加藤:鈴木さんがモヤモヤしていた時期にサインズ・オブ・セーフティを知って、「これだ!」と思われて実践したのでしょうか?

鈴木氏: 2005年からものすごい勢いで虐待が増えてくるわけです。だから、児童相談所が相談だけではなく、早期の保護などを含めて毅然と対応することが求められてきました。

 だけど、その対応によって傷つく子どもも親もいたんです。もちろん、安全は以前より守られるようになったと思いますけど、子どもを一時保護したとしても、子どもが子どもの夢や希望を持って生きていくことは難しくなります。

 子どもは親と離れたいわけではなくて、虐待のない世界で生きていきたいだけですよね。それを実現していくためには、危機介入や一時保護だけでは実現できないとモヤモヤしていました。私は24年間児童相談所の仕事をしていますが、常にこれで良いのかと自問自答し続けてきたと思います。

実践する中で実感が出てきた

加藤:新しい手法を始めて、すぐに手応えはありましたか?

鈴木氏:いえ、私の感覚では本当にサインズ・オブ・セーフティの価値を理解できたのは、この4、5年だと思います。それまでも見よう見まねでやっていましたけれど、家族が主体者として子どもの安全を作る方法がうまく回ると感じ始めたのはここ数年です。実践している仲間と交流したり報告したりしながら、ようやく自分の中で実感が生まれました。

新しいことを進めたい時は、過去を否定しない

加藤:サインズ・オブ・セーフティを取り入れる時に、周囲の抵抗はなかったのでしょうか?

鈴木氏:それは今も多くの児童相談所でもあると思います。ただ、「良い実践をしたら、子どもや家族の役に立つ」というのは、いろんな立場を超えて共有できる方向性です。

 そして、本当に優れた実践者の動きには、サインズ・オブ・セーフティの要素が既にあったんです。新しいもので横文字だったりするために、すごく嫌がる方もいましたが、サインズ・オブ・セーフティは従来手法の対極には位置しません。

加藤:少なくともゴールは同じですよね。新しいことを組織でおこなう際に気を付けた点はありましたか?

鈴木氏:過去を否定しないことです。むしろ、過去の歴史の中には必ず新しいものと共通の方向性が存在するので、それを見つけて強調することが大切だと思います。実際、サインズ・オブ・セーフティを普及するために、先輩の業務に既に含まれているサインズ・オブ・セーフティの要素をまとめて広めるようにしました。

加藤:最近、“改革”といった表現だと過去を否定してしまうので、“アップデート”といった表現が使われることが増えましたね。

鈴木氏:何か変化を加える場合、一見、昔と大きく変わったように見えるんだけれども、実は過去の歴史とつながっています。ここをちゃんと踏まえて、先輩たちへのリスペクトを忘れないことが大事だと思います。

広めるために理論やモデルケースに落としていく

加藤:普及活動を進める時に仲間の協力が必要だと思います。仲間を作るためにどのような動きをされましたか。

鈴木氏:良い実践は発信していかないと伝わらないので、所内に子ども支援方針を決める『援助方針会議』というところなどで発信していました。あるいは、研究して学会や研究会に論文を出したり、本にして発信しました。

 サインズ・オブ・セーフティを実践して「良かったね」、「役に立ったね」で終わってしまうと、自分たちが頑張っていくモチベーションにはなるんですけれども、周りへ広がりません。

 他の人たちが使える形にするために、理論やモデルケースに落としていく。「あの人にはできたけど、私たちにはできない」と言われないように、しっかりと内容が伝わるようにすることが大切です。

加藤:勉強会なども開催されたのでしょうか?

鈴木氏:はい。実践家や研究者と一緒に研修や勉強会を開催しました。東海大学准教授の菱川愛さんが中心となって、関東圏で10年以上続いています。そこに月に1回、現場の実践者が集まって話をするのです。

 市町村職員の方たちに向けて話をすることもあります。勉強会に出て「いいね!」と言ってくれる人が増えていくのは大きな力になりますね。こういった勉強会の延長線上で、サインズ・オブ・セーフティの普及が進むように、仲間で『サインズ・オブ・セーフティ+ネットワーク(SIGNs+)』という団体を今年に立ち上げました。

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