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【邑南町 寺本英仁 #4】事業を始めるのは役所、利益を出したら民間に譲渡する

失敗しない仕組みで始めて、民間に渡す。

加藤:地産地消レストランの「AJIKURA」は、なぜ成功できたと思われますか。

寺本氏:絶対に失敗しない仕組みをつくったことが大きいんですね。地域おこし協力隊という制度をうまく使うことで、絶対赤字が出ない仕組みにしました。
 そして、3年ぐらい直営でやる中で、人件費を払えるようになってから民間企業へ事業売却したんです。

加藤:まず役所がチャレンジして、うまくいったものを民間に任せるというルートはすごいですね。普通はどうしようもなくなってから渡したくなるものだと思います。

寺本氏:もともと儲からない仕組みで始めちゃったら、いくら「民間の活力を」と言っても無理な話ですよね。まず赤字が出ない仕組みではじめて、自走できるようになったらあとは民間の方が得意だと思うんですね。想像力とか展開力とか、そういうのは民間の方が強い。目標期間を設定して利益が出せるようになったら、そこからは役所がやるべきことじゃないと思います。
 そしてこのスキームができたことで、当時20店舗程度だった飲食店が今43店舗ぐらいになっているのは一つの成果だと思います。

役所はノウハウを公開することが大事

加藤:ちなみに「AJIKURA」を始めたときには、例えば、「ここを下回ったら、もうやめます」みたいなラインは設定されていたんですか?

寺本氏:いや、していません。期間の設定は重要ですが、うまくいくことだけを設定した方が良いし、実際に失敗しない仕組みにしていたので、その必要もなかった。
 その0から1の仕組みさえ作れれば、それをパッケージにして、ノウハウも公開して、次の展開をつくりやすくするんです。民間と役所が違うところは、ノウハウを公開するスタンスですよね。民間だったら出さない方が良いことが多いけど、役所だったら出したほうが良い。そこは全然違っていて。ノウハウを出すことによってマニュアル化するというか、パターン化していくことがすごく大事なんです。

 「てらだのぱん」っていうパン屋さんが町に生まれましたが、それも同じ流れです。

加藤:「てらだのぱん」は、町民から期待されて大きくなった事例ですね。。

寺本氏:はい。やっぱりそこが大事なんですよね。世間で成功と言われている地方創生の事例で、「ふるさと納税で億売りました」とか「道の駅で何億売りました」って話があるじゃないですか。
 その売上比率構成を見ると、大体地元の大企業1社か2社で8割とか9割とかがつくっていたりする。それだとほとんどの住民に関係ない話になっちゃうんですよね。町づくりとしてうまくいっているのかって。儲かってはいても、町づくりとして町民の満足度が高くないとやっぱり意味がないですよね。

加藤:町民の満足度が大事。

寺本氏:そう、だから誰もが参画できる町づくりをするためには隅々までノウハウを公開して展開できることがすごく大事だし、頑張るモチベーションを上げることもすごく大事。そういうことが町づくりを担う職員の役割だと思います。
 売上を上げるだけなら民間にできるけど、町の人のやる気をつくっていくことは役所ができること。それによって町の人たちがやる気を持って自走していく、町を動かしていけるようになる仕事を、役所がやらないといけません。

加藤:役所だからこそできる仕事ということですね。

公務員の役割とは

加藤:寺本さんが思う公務員の役割ってなんだと思われますか。

寺本氏:ちょっと例えが難しいんだけど、道路の真ん中に動物の死がいがあるとしますよね。その道路を向かい合って家があったとして、どっちもその処理をやりたくないと言い始めたとします。じゃあ誰がやるのってなったときに、役所に電話がかかって来るわけですよ。

加藤:だれもやりたくないから。

寺本氏:そう。でも、誰かがやらないといけない。そういうことをやるのが役所の役割なんですよね。こういう町の人はやりたくないけど、誰かがやらないといけないことってあるじゃないですか。
 それはもちろん今すぐ必要なこともあれば、将来に向けて今やる必要があることもあります。今は町の誰もやらないけど町のためにやらないと大変なことになることは、まず役場がやる。たとえ、それがネットショップだろうがレストランだろうが。そういうやるべきことをやっていって、やりたい人が現れたときには、すぐに引き継ぐことが大事ですよね。

(文=小野寺 将人)

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※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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