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【邑南町 寺本英仁 #1】地方創生の成功事例「地産地消レストランのAJIKURA」は、反省から始まった

【寺本 英仁(てらもと えいじ) 経歴】
1994年、島根県石見町役場に入庁。2004年の町村合併により邑南町役場の職員となる。2009年産業おこしでの取り組みを評価され、「地域産業おこしに燃える人」のメンバーに選出。2016年にはその活躍がNHKの目に留まり、「プロフェッショナル仕事の流儀」に取り上げられる。2018年、自身初の著書『ビレッジプライド 「0円起業」の町をつくった公務員の物語』を出版。

島根県の山間地域に位置する邑南町は、人口約1万人・高齢化率40%を超える町だ。どこにでもある田舎のようであるが、この町には飲食店が次々とオープンし、年間90万人もの観光客が訪れている。その仕掛け人が、町役場に勤める寺本英仁氏だ。「プロフェッショナル仕事の流儀」でテレビにも取り上げられた寺本氏の仕事術を伺った。

自分はなんのために役場の仕事をしているのか

加藤:寺本さんはこれまで「AJIKURA」、「耕すシェフ」、「食の学校」、そして「農の学校」など数多くの取り組みをされてきました。順を追ってそれぞれどういうものか教えてください。

寺本氏:まず「AJIKURA」というのは、地産地消のイタリアンレストランです。邑南町が「A級グルメ」の町として発信していく拠点の一つとして2011年にオープンしました。

加藤:最初から人気が出たのでしょうか。

寺本氏:メディアにも注目してもらえて、最初から多くの人が訪れてくれてくれました。
 ただ、「もうそれで良いのかな」と思っていたら、意外なことに町民の皆さんはあんまり喜んでなかったんです。

加藤:町に人気店ができても、町民は喜んでいなかった。

寺本氏:あれ?と思って。理由を聞いてみると「自分たちとは関係ない」と。「A級グルメって、役場が勝手にやってるんでしょ」とか、「そんな高級食材つかって」とか…まあ評判はよろしくなくて。

加藤:なぜそうなってしまったのでしょうか。

寺本氏:要するに、ちゃんと町の人たちと一緒につくって行かなかったのが一番の反省点だったんですね。特にA級グルメは町の人にちゃんと理解してもらう必要があると後になって気づきました。

加藤:なるほど、それで「関係ない」とか「役場が勝手に」という言葉が出てきたんですね。

寺本氏:そこで「自分はなんのために役場の仕事をしてるんだっけ?」と思いまして。結論、やっぱり町の人に喜んでもらうためにやっているわけじゃないですか。なのに、まだ町民になるかならないかの人たちとか、観光客に対して喜んでもらえるようなことだけやるのはちょっと違かったんだなって。それでまた次の手を考え始めたんです。

お客さんが来なくても回る仕組み

加藤:次の施策の話に移る前に、「AJIKURA」を語る上で欠かせない「耕すシェフ」の取り組みについても伺えますか。

寺本氏:「耕すシェフ」は、地域おこし協力隊を邑南町で募集するときにつけた名前です。邑南町で「農と食の両方を学べる」ということを打ち出しました。

加藤:農と食だから、「耕す」と「シェフ」ですね。

寺本氏:はい。この地域おこし協力隊の制度に目を付けた理由は、さっき言った「AJIKURA」でイタリアンを運営するためのシェフやスタッフがいないから、何とか人件費をかけずに集めたくて。

加藤:なるほど、たしかに地域おこし協力隊であれば町からの持ち出しはゼロで人が確保できますね。でも「AJIKURA」で求めているA級グルメのシェフが応募をしてくれるでしょうか。

寺本氏:まさにそこがポイントで。地域おこし協力隊に渡されるお金は「報償費」と「活動費」があるんですけど、「報償費」は要するにお給料ですから国から町に来て、個人に払うじゃないですか。ただもう一つの「活動費」は国から町にきて、町から委託契約先である観光協会に支払われる形にするんですね。

 来てもらった地域おこし協力隊は一人じゃありませんから、その活動費は人数分まとめることができます。まとまったお金があれば、より公益的な使い道が出てくるわけです。
 複数人分の活動費をまとめたお金で一流のシェフを雇って、家賃など必要なコストを払えれば、変な話一人もお客さんが来なくても回っていけます。

加藤:確かにそれだとシェフとスタッフとその他必要な経費が、地域おこし協力隊の制度だけでまかなえますね。

寺本氏:地域おこし協力隊の制度をうまく活用できている自治体って少ないんですけど、その理由として「1人に対して1人の活動費を使う」からだと思います。

町民も地域おこし協力隊も納得できる仕組みが必要

加藤:1人に対して1人の活動費を使うと、うまくいかないんですか。

寺本氏:具体的に話をすると、よく活動費の使い道として車があるのですが、10人いたら10台も用意するわけです。そもそもそんなに要るのかって話でしょ?

加藤:そうですね。

寺本氏:であれば委託先の会社を1社つくって、活動費を全部、例えば10人×200万円で2,000万円にして委託費として渡すことができれば、いろんなことができるじゃないですか。

加藤:一般的な自治体はそういう使い方をしないんですね。

寺本氏:例えば、ある自治体だと「地域おこし協力隊を10人雇って、10人がそれぞれ起業するために頑張ります」となるわけです。
 もし10人の目的が全然違ったら、一緒に活動できないので10人それぞれ公用車を頼まないといけない。そうすると200万円からいろいろ差し引かれたそれぞれの活動費で町のために何ができるんですかって話になりますよね。

加藤:たしかにそうですね。しかも目的の違う10人を役所が受け入れるのも大変そうです。

寺本氏:そう、そこで邑南町で言えば「料理で起業する」という一つの目的に集まれば、いろんなものが共有できますよね。実際、そのまとまった活動費のなかからシェフも呼ぶことができて、町のためにうまく活用できました。

 その後、「AJIKURA」は一年間観光協会の職員として働いていただいた方に譲渡しました。その際、レストランの調理器具などの資産を計算して減価償却を支払ってもらい、晴れて民間に事業譲渡をする運びとなりました。

加藤:民間に渡ってからも、うまくいってるのでしょうか。

寺本氏:もちろんです。当時1店舗だったのが、今は4店舗になっています。

加藤:ちなみに、地域おこし協力隊の皆さんは起業できたのでしょうか。

寺本氏:それがなかなか、起業はできなかったんですよ。飲食の経験はできるけど、学べる機会をつくれなかったというのが反省で。さっき「AJIKURA」で町民に対する反省の話をしましたけど、この「耕すシェフ」の反省も含めてなにか施策を打たなればいけないと思いました。
 「AJIKURA」を「耕すシェフ」で運営して、外から人は連れてこれたところだけ見れば成功と言えるかも知れません。ただその当事者たち、つまり町民や地域おこし協力隊が納得できる仕組みが必要だとわかり、「食の学校」をつくったんです。

(文=小野寺 将人)

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※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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