本記事では、有料メルマガ「週刊寺本英仁@島根県邑南町/「巻き込む力」と「ビレッジプライド」の育て方」の一部(A級グルメ連合についてのストーリー)をご覧いただけます。なお、掲載するメルマガは約3か月前に配信した内容です。最新かつ、全文の閲覧を希望する場合はコチラからお申込みください。
【第7号の目次(2019年7月24日配信)】
1.近況ーー父親が教えてくれる「田舎の楽しみ方」
2.里山レストラン「香夢里」は立ち止まらない(7)
3.<A級グルメ連合>の仲間たち 都農町編(1)
4.著書の案内、質問募集!など
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3.<A級グルメ連合>の仲間たち 都農町編(1)
=志を同じくする5市町の取り組みを連載形式で紹介します!
邑南町から中国道へ、そして九州道へとレンタカーのマツダ・デミオを走らせる。今回も「食と農人材育成センター」の川久保さんと岡田くんと一緒である。
都農(つの)町に到着するまでに、7時間30分はかかった。
前回、2月に都農町に講演会で呼ばれたときは広島駅まで自家用車、広島駅から博多駅まで新幹線、地下鉄を乗り継ぎ福岡空港から宮崎空港へ飛んで、空港に役場の職員に迎えに来てもらい、そこから都農町まで1時間……。
列車や空港の待ち時間をプラスすると、間違いなく車と所要時間は変わらない。それならと思いレンタカーを借りて3人で向かうことにした。
前回、小浜も車で5時間30分かけて向かったのでそれほど、車に乗っている時間は気にならなかった。まー運転は、大半を岡田くんがしてくれたから、僕が楽なのは当たり前だが(笑)。
本題に戻そう。
「にっぽんA級(永久)グルメのまち連合」に加盟に加盟した、宮崎県都農町は宮崎県の中部にあり、県庁所在地の宮崎市の北北東40㎞の場所に位置する。
この町の人口規模は、邑南町とほぼ同じの約1万人だが、面積は邑南町の420平方キロに対して、102キロ平方キロと4分の1なのだ。その分、町が凝縮していて、人口密度も高い。
平成の大合併でも合併しておらず、来年なんと町政100周年を迎える歴史ある町である。その象徴とも言える都農神社は宮崎県で最も格式の高い神社として、県内外から多くの参拝客が訪れる。
しかし、この町の凄さは農業生産額が桁外れの150億円!
人口規模がほぼ同じである邑南町が15億円だから、比べものにならないほどの農産物の豊かさががよく分かる。まさに、町の名前どおり「農の都」なのである。
後で触れることになる「ふるさと納税」の納税額も、この豊かな農産物があってこそ、成し遂げられる数字だ。
2月に都農町で講演したとき僕は「平米あたり1億5000万円もの農業生産額のある土地は、全国を見てもなかなか例がないのではないか」と話した。
邑南町からして見れば、ただただ「羨ましい!」の一言につきるのである。
こんな歴史があり、基幹産業の農業が桁外れに豊かな町が、なぜ「A級グルメ連合」に加盟したかを少し触れたい。
2年前、僕は宮崎県主催の講演会に呼ばれたのだが、このとき、コーディネーターとして、僕の講演をプロデュースしてくれたのがサンワード・ラボ株式会社代表の長友まさみさんだ。
講演終了後、彼女が言った。
「主人がNHKで『プロフェッショナル 仕事の流儀』を見てから、寺本さんの大ファンなんです。今度ぜひ家族で邑南町に遊びに行かせてもらってもいいですか?」
「ご主人は公務員の方ですか?」
「以前は淡路の道の駅で働いていて、今は道の駅のコンサルやっています!」
僕は、コンサルタントとは「なかなか来ない、すぐ去る、たんと儲ける」と思っている人間であるから、正直あまり良い印象は持たなかったが、まーこれも社交辞令だろうと思い、聞き流していた。
数か月後、長友まさみさんから連絡があった。
「主人と子供を連れて、邑南町を見学に行ってもいいですか?」
僕は「へー、あの時の言葉は社交辞令ではなく本当だったんだ」と驚いた。
そして、その連絡から数日後、長友さんの家族が邑南町を訪ねてきた。ご主人の名前は金山宏樹さん。夫婦別性なのか、仕事上、旧姓の名前を使っているのかは定かではないが、夫婦の苗字が違っているのが印象に残った。
彼は僕より年齢は一回りくらい年下だが、恰幅は良く、黒のTシャツと黒のスキニーパンツにエルメスの靴が印象的だった。
彼の笑顔は、洒落た服装に似合わないくらい愛嬌があり、すぐに親近感が持てた。「ajikura」で彼らと夕食を一緒にしたのだが、石見和牛肉にえらく感動してくれたことは今も鮮明に覚えている。
彼は相当食べ歩くことが好きらしく、スマートホンにお気に入りのイタリアンを入れていて、「ajikura」と比較しながら、僕に的確なアドバイスをしてくれた。
彼と話をしていく中で、僕の「なかなか来ない、すぐ去る、たんと儲ける=コンサルタント」というイメージはかき消された。ただ者ではないと直感したのだ。
たしか、奥さんのまさみさんからは、道の駅のコンサルをしていると聞いていたが、具体的に何をしているかは聞いていなかったので、彼に、今までの経歴を聞いてみた。
彼は兵庫県の淡路島出身で高校を卒業後、人形浄瑠璃の淡路人形座にで5年間人形遣いとして働いていた。その後、島の観光協会で1年勤務、いったん町を離れ大阪と東京で営業職を経験した後に、再び島に戻り「道の駅うずしお」の運営に携わったのだった。
「道の駅うずしお」は、地方創生や道の駅に携わっている者なら、一度は耳にしたことがあるはずだ。
鳴門海峡のうずしおが間近で見られる絶景が魅力で、近年ではレストランで提供される地域の食材の良さを最大限に生かしたメニューが注目を集め、一時は赤字に陥りながら、年商14億5000万円まで伸ばしたことで有名だった。
この再生に大きく関わったのが、目の前の金山氏だった。
彼がとくに得意とするのが、レストラン部分のメニュー開発だったので僕の取り組みと重なり共感したし、一回り以上も若く感性も違う。それがとても面白かった。
彼はいろんなお店をリサーチしていて、飲食店のメニュー開発ではそのリサーチ力が役立つと思った。
これをモノマネという意味に悪く捉える人もいるかもしれない。だが僕は、すべては真似から始まり、そのコアな部分を自分のものにすることが大事だと思っている。
僕はこの金山氏に「香夢里」のメニュー開発を協力してもらいたいと思い、その場でさっそく依頼した。
ただ彼は、淡路の道の駅をすでに退職、株式会シカケを立ち上げており、全国の道の駅からコンサルを依頼されていて、まったく時間の余裕がなさそうだった。
それに、たとえ時間があったとしても、「香夢里」はオープン直後から店舗改修費用のために1600万円も銀行から借り入れしているから資金に余裕があるわけではない。絶対に断られると思った。
ところが金山氏は嫌な顔一つするわけでもなかった。
「もともと、テレビ見たときから寺本さんの大ファンだったので、ぜひ協力させていただきたいです。それに、地方創生はお金ではないですから」
僕はその言葉に甘えた。
甘えるだけでなく、今後<A級グルメ構想>を全国の自治体に広げていきたいのだと、畳かけるように情熱を込めて語った。
「寺本さんの構想にピッタリの町があります。ぜひ担当者を紹介したいです」と返ってきた言葉の町が、この宮崎県都農町だった。
それが2018年の3月のこと。その3か月後、彼は都農町の担当者2名を本当に邑南町に連れてきてくれた。このときの職員が、今回の都農町をアテンドしてくれた猪股利康さんと、宮崎県庁から都農町へ出向している甲斐慎一郎さんだった。
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