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【邑南町 寺本英仁 #3】ミシュランから得たヒント、行くのではなく来てもらう

東京で商品を売ることの難しさ

加藤:2011年にオープンした地産地消レストランの「AJIKURA」が生まれるにあたって、どのような背景がありましたか。

寺本氏:まずは、町村合併をして人口が減っているのがご多分に漏れずありました。そんな中で「人口が減ったら町内の商品は売れないから東京に売りに行こうか」という話になったんです。
 当時、宮崎県の東国原知事がマンゴーとかキャビアを東京で売っていたじゃないですか。ああいう外貨獲得をしないと、今の人口減少の中では地域の循環経済はもたないだろうと。

加藤:町のものを外で売ろうとしたわけですね。

寺本氏:はい。それで、東京で売ろうとブルーベリーのジャムをデパートに持って行ったんだけど、最初に言われたのが「あんまりデザインが良くないね」と。生産者が自分でやっているわけだから、それはそうですよね。
 どうすれば良いか聞くと、「デザイン直したら置いてあげるよ」と。「どういうふうに直せばいいんですか」って聞くと、「うちにデザイナーがいるから、デザイナー紹介してあげるから」って言うからお願いしたら「30万円です」って。

加藤:大金ですね。

寺本氏:デザイン費が30万円もするなんて、僕にはちょっと見当もつかない額だったんですね。それまでは生産者や職員が自分でできることだと思っていたから、そんなことに30万円もかかるのかと。
 仕方ないのでお願いしてデザインを直したら置いてもらえることになったんですけど、今度は「2週間しか置けません」と。「なんで2週間しか置いてくれないんですか?」って聞いたら、「いやいや、寺本さんのような町の自治体って全国にあって、どこも順番待ちなんですよ。デパートとしても目新しい商品の方が売りやすいから、あまり代わり映えしないものは2週間が限度なんです」と。まあそれは自分もそうだよな、なんて思って。

加藤:全国の自治体が東京のデパートで売りたがっているんですね。

寺本氏:だけど生産者ってそういうことに納得できないわけですよ。もっと東京で売りたいと言うので違うデパートに行ったら「ラベルがあんまり良くないですね」なんて言われて(笑)
 「えっ、直したばっかりなんですけど」って言ったら「いや、それはうちの客層に合わないので直しましょう」と。「いくらかかるんですか」って聞いたら今度は「50万円です」とか言われて、これはいかんと。

ヨーロッパのミシュランから得たヒント

加藤:東京で売ろうと思うと、どんどんお金が出ていったんですね。

寺本氏:東京で何とか売ろうと思って動き回った一年間って、交通費と、デザイン費と、懇親会費なんか合わせたら、それで売上が消えちゃうぐらいのことになっていて。
 よく世間では六次産業とか農商工連携をして「東京で売ろう」とか言っているけど、実際にやってみると地方の現実を痛感しました。

加藤:そんなにうまい話はないと。

寺本氏:ええ、もう決定的に駄目だなと思ったのが、石見和牛っていう牛肉を売りに行ったときの話なんですけど。東京のホテルで「良い肉だね」なんて言われて喜んでいたんだけど、「じゃあ、とりあえずフェアやるので200頭分のヒレ肉とサーロインを持ってきてください」と言われて。

 でも、うちではそもそも年間200頭しかやってないんですよ。しかもそこに全部対応できたとしても、残る部位があるじゃないですか。そこは使えないか聞いたら、「そこは自分の所ではかしてくれ」なんて言われて、それだと残った部位は売れないですよね。それで、うちみたいに人口1万人とか、それ以下の町村が東京に物を売るのってちょっと厳しいということが分かりました。
 そんなときに、ミシュランの話を本で読んだんです。ヨーロッパの星付きレストランは地方にあって、そこには良い食材があると。だから良い料理人はわざわざ地方でレストランをつくって、そこに世界中のグルメな人たちが食べに行くんだと。

加藤:地方から都会に売りに行くのではなく、都会から地方に来てもらうということですね。

寺本氏:そうなんです。日本の場合、ミシュランの星付きレストランは東京や大阪、京都にあって、それに合わせて地方から良い食材が都会に送られる形ですよね。そうなると、当たり前の話で地方にはなんにもないって話になっちゃう。だからヨーロッパ方式に変えることをまず邑南町からできればいいなと思って。

加藤:邑南町がその先駆けになろうと思われたのですね。

寺本氏:はい。東京で色んなところに営業に行っていたので、きらびやかなレストランを見るとこれが邑南町にできたら町民も生産者も喜ぶだろうなって思って。
 その頃リーマンショックがあって雇用系の補助金があったので、まずは料理人を探すことからやり始めました。結局「AJIKURA」ができるまでは3年ぐらいかかりましたね。

加藤:ちなみに、イタリアンを選んだ理由はあったのでしょうか。

寺本氏:きっかけは、「情熱大陸」で料理人の奥田政行さんの回を見て、田舎でイタリアンってウケるんだと思ったことですね。郷土料理とか日本料理だと集客できるか不安だった。
 フランス料理でも別に良かったんですけど、やってみてわかったのはフランス料理って素材よりソース重視なんですよね。だから素材の味にこだわるイタリア料理に目を付けたのは、今振り返ってみて良かったなと思います。

(文=小野寺 将人)

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※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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