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領家誠6

人を知る

【大阪府 領家誠 #6】「できる」「できない」ではなく、「やってみます」

本気じゃないのは相手にも伝わる

加藤:ここからは個人のお考えについて伺います。これからの公務員に必要な力はなんだと思いますか?

領家氏:大阪府の人事異動のサイクルは、3年。みんな異動しながら上に行きますから、気がつくと、なんの専門性も外部のネットワークも持たないゼネラリストになっていくんですね。

領家氏のこれまでのお仕事

領家氏のこれまでのお仕事

 一方で、課題は複雑で、重複・複合化する。それでいて、調査費やコンサル費に予算を割かなくなって、外部の専門家に話を聞くこともなくなりました。専門性の無い事務屋が施策を動かす。素人なんで、外部のヒアリングも怖がってしないから、どんどん政策が稚拙化していく。それを見ていて、本来、自治体職員にはゼネラリストというだけでなく、専門性が必要な時期にきているなと思いました。

 それと、生涯関わるつもりで仕事をすることも大事な気がします。私は介護保険制度の導入時の社会福祉基礎構造改革の中で、元厚生省の炭谷茂さんがまとめた「社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方について」という報告書をバイブルのように読んでいました。

 ある時、この炭谷さんのセミナーを聴きに行ったんです。その時、炭谷さんが、お話されていたことが印象的でした。当時、社会福祉法人の方とある施設の立ち上げの仕事を一緒にされていて、その関係者から「炭谷さんは、すごく良い人だけど、どうせ2年で異動でしょ?」と言われた、と。そして、炭谷さんは「40歳以上に関わる仕事は、すべてライフワークにする」って答えたらしいんです。

 炭谷さんは、実際それを実践していたんです。その話を聞いて、私もそうしようと思いました。「異動があるから、じっくり話ができへん」とか「ネットワークを築いても、どっちみち3年で無駄になるやん」とかって言っていると、外部の人と本気で付き合えないじゃないですか。

 相手もこちらが本気かどうかは分かる。その関係では、お互いが腹を割って話せないですよね。今では私もライフワークが増えて来ました。KNSもそうですし、JICAの事業で担当したベトナムのプロジェクトは、今もやっています。全部ボランティアですけど、相手が必要としてくれている間はやっていこうと思っています。

「できる」「できない」ではなく、「やってみます」

加藤:今までのご経験から、公務員の方に伝えたいことはありますか?

領家氏:これ、3S(整理・整頓・清掃)の師匠の言葉なんですが「昔のことは言わない」「人のことは言わない」そして、「やりもしないのに『できない』と言わない」。この3つが、新しいことを組織に落とすときの基本なんです。これをどこまで皆と共有できるかが大切ですね。

 私は入庁32年で、非ルーティン業務を約70件、そのうち新規の業務を50件弱、関わらせてもらいました。何かと案件仕事を頼まれる訳ですが、その時に、「できます」「できません」じゃなくて、「やってみます」って言うのが一番良い答えなんですよ(笑)。

 できませんとは言いにくいですよね。でも、初めてのことは、できるかどうか分からないじゃないじゃないですか? かといって、「できます」って引き受けちゃうと、すごく自分にプレッシャーがかかって、成果があがらないこともある。
 「やってみます」の積み重ねで場数を踏めたことが仕事の引き出しとなって、意外に役に立つなと思っています。ぜひ、みなさんにも使ってもらえたらと思います。

 20代の頃は、内部管理でしたが、この時の庁内での経験や人脈が、30代で市町村や団体、NPOの方と、40代で企業や大学の方と、外部の人と仕事する上で役立ちました。「内を知って外を知る」この順序がよかったと思っています。役所の中には、機会あれば、役に立ちたいと思っている職員がたくさんいます。同時に、役人と関わることで、活動の領域を広げる民間の人もたくさんいます。役所の中にいて、その接点となることができるのは、触媒として、悪くないと思っています。

編集後記

 領家さんは温かい空気をまといながら、その表情の奥に強い信念を覗かせる瞬間がある。周囲を牽引するリーダーに多いタイプだ。

 領家さんの魅力の最も大きな源泉は、物事の表層に留まることない“本質”への探究心ではないか。
 大阪の中小企業を自動車メーカーの工場に連れて行った逆見本市に、危機意識を感じ、ロジカルな根拠にもとづき新たな事業を進めた。「事業の奴隷になるな!」という率直な物言いや、中小ものづくり企業の実利を念頭に置いた姿勢も、「自らの立場にとらわれずに企業の役に立つ」という、“本質的”な意味を追求したスタンスによるものだろう。

 しかしながら、本質的なことを進めることはとても難しい。世の中であれ、組織であれ、様々な利害が積みあがったツギハギの状況に我々は立っている。本質的に正しいことが常に歓迎されるわけではなく、むしろ、嫌悪されることすらあるのだ。領家さんが語らなかったストーリーには、きっとそういう側面や経験も数多くあるのではないか。

 「やってみます」という話もきっと、そういう困難や失敗の存在を前提とするものだろう。できるかできないかは試してみないと分からない。しかし、たとえ失敗をしたとしても、その場数が仕事の引き出しを増やしてくれる。
 「あの世にお金を持って行くことはできない」とよく言われるが、恐らく、恥も外聞も同じだろう。私自身も「やってみます」の精神で、これから先も多くの失敗を積み重ねたいと、領家さんのお話を聞いて感じたのである。

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※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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