インタビュー

【大阪府 領家誠 #1】事業の奴隷になるな!事業は解決手段のひとつ

領家誠1

領家 誠(りょうけ まこと)経歴
 1987年大阪府に入庁。2010年に、ものづくり支援拠点MOBIOをオープンさせ、年間100回を超えるものづくり企業の交流の場MOBIO-Cafeを主宰。同年、大阪の消費財のネット通販「大阪ミュージアムショップ」を企画・実施。2014年には、大阪版エコノミックガーデニング「EGおおさか」を創設。また、中小企業の海外進出に関するベトナム及びタイにおける調査やJICA等のプロジェクトに参画。プライベートでも、関西ネットワークシステム世話人やまちライブラリー・サポーターなど地域活性化活動を実施。

 バブル崩壊以降、行政を取り巻く環境は行革志向、規制緩和、リーマンショック、少子化とめまぐるしく変遷した。そのなかにあって大阪府庁の領家誠氏は、中小ものづくり企業を強力に支援し、産学公民金のネットワーク作りを主導した。
 本インタビューでは『地方公務員が本当にすごい!地方公務員アワード2018』を受賞した領家氏の取り組みについて、今後の展望も含め踏み込んで伺った。

きっかけは、「ものづくり支援課」創設の庁内公募から

加藤(インタビューアー):商工労働部ものづくり支援課に異動したことが、領家さんが中小ものづくり企業の支援をするきっかけになりました。どのような経緯で異動されたのでしょうか?

領家氏:まず、商工労働部にものづくり支援課を創設されるのを機に、ものづくり戦略を作るポストの公募がありました。元上司がこの庁内公募を手がけていて、「応募を検討してくれないか?」と打診があったんです。

 当時、私は健康福祉部で8年目でした。その前の企業局に7年いた時もそうでしたが、いわゆるベテランで、最後の方はどんな玉が飛んできても座ってラケットを振るみたいな感じでした。信頼してもらえて、ある意味、ラクなんだけれども、逆に重鎮のようになって、周りもやりづらいのでは? という時期に差し掛かってきていたんです。

中小企業支援が障害者雇用拡大につながる

領家氏:健康福祉部時代は介護保険導入から始まり、その後、同部総務課の企画グループで同和問題やホームレス支援などの人権担当も経験しました。その中で、「行政の福祉化」という取組みの一環で、行政発注や保有資産を活用した就職困難者や障害者の雇用促進制度を作ったりしていたんです。そして、福祉有償運送制度の導入を担当した時に、近畿大学の三星昭宏先生に出会いました。

 三星先生は「障害は、当事者ではなく環境が作る」とおっしゃいました。福祉の世界にそんなことを言う人が私の周りにはいなかったので、びっくりしました。一番わかりやすいのはメガネだって言うわけですよ。「メガネが存在していなければ、視覚障害者が世の中にもっと存在するはずや」、と。

 当事者支援が中心だった福祉の世界で、メガネの話は、環境が障害を生んでいるという指摘で新鮮だったんです。障害者の就労における課題は、当事者支援だけでは進まない。受け入れ企業側の環境に働きかけないといけないのではないか、と。

 丁度その頃、大企業だけでなく、中小企業にも障害者を雇ってもらおうという動きが出てきました。でも、中小企業は生き抜くだけでも大変な環境下にあって、障害者雇用の経験もない。「雇え」と言っても難しいですよね。だとしたら、受け入れ側の中小企業を元気にすれば、障害者雇用が進むのではと思いました。

 また、仕事内容自体が興味深いとも感じていました。それまで、たくさんの特命案件を担当させてもらっていたんですけど、振り返れば、あくまで役所の中の「お題」を解決することが多かったんです。でも、公募された仕事でものづくり戦略を作るためには、そのプロセスで現場に出て、中小企業の人の意見をたくさん聞く必要がある。ヒアリングをもとに「お題」を設定する側に回り、政策を構築するのがすごく面白そうだと感じたんです。

100社ヒアリングをして、問題を見える化した

加藤: 2006年の4月に公募を通じて、ものづくり支援課に異動されました。初めにどんな仕事をされたのでしょうか。

領家氏:中小企業100社のヒアリングをやったんですよ。ラッキーだったのが、大阪の経済統計とか、いろんな産業のリサーチをする経済リサーチセンターの研究員と一緒に企業を回れたこと。彼らは、業種毎の状況や製造現場のことをよく知っていますから、現場の濃厚な話を聞けたんですね。しかも、行き帰りの道で、業界動向や何を聞くべきかまで教えてもらうことができました。

 ちなみに、これは100社ヒアリングをもとにした、課題と施策を整理したマインドマップです。

ヒアリングを元にマインドマップで細かくまとめた

ヒアリングを元にマインドマップで細かくまとめた

 

 このマインドマップを見返して面白いのは、今の中小企業が抱える課題について、10年以上前から声が上がっているんですよね。UIJターン、工業高校の卒業生が獲得できないとかから、外国人労働者の問題。マインドマップの下のほうを見ると、廃業問題や事業承継の問題も書かれています。また、このときに立案した事業は長く続いていて、外の話を聞いて、課題を整理していくと、しっかり根付くことを実感しました。

行政組織の縦割りの切り口が、経営者の課題意識と合わない

加藤:ヒアリングを通して、どんなことを感じましたか。

領家氏:もちろん、当時の私には技術の中身も経営の実態も分かんないです。でも、経営者はいろんなことに課題を持ち、悩んでいると思いました。

 それと、役所が縦割りになってしまっている弊害を感じました。ここは技術支援、ここは特許の支援、ここはデザインの支援、ここは海外とか、部署の切り口でしか企業のことを見ていなかったから、他にどんな課題を抱えているかは、まず、聞かないんです。

 でも、直接、課題や悩み事のヒアリングをすると、「人手が足らない」とか「工場用地がない」とか、そんな話が出てくる。住工混在問題なんかは8割の企業が言っていましたが、役所の中では、まったく議論されていなかった。キーワードとして出てきたこともなかったんです。

役人は解決できないことは聞かない

加藤:住工混在問題とはどういうものでしょうか。

領家氏:人口が減って景気が悪くなると工場が閉鎖する。工場が閉鎖すると潰れた工場の跡に住宅が建つ。あとから入ってきた住人が「うるさい!」と言って、周辺の工場が操業できなくなるという現象です。

 仕事はあるのに、平日の夜や土日に機械を動かせない。だから、また移転・廃業して、そこに家ができる。ドミノ倒しのようなことが、東大阪や大阪市内で起こっていました。なんで府がこの対応をやらないのかと戻って聞いたら、結局は、都市計画の問題で、産業部門で解決できる方法がないということだったんです。

 役人は真面目なので、解決できないことは聞かないんですよね。聞いてしまったら、なんとかしないといけない。それが、プレッシャーになってしんどいじゃないですか。だから、解決できることは聞くんだけど、そうでないことは聞かない。うちが担当でないと割り切るしかなく、経営者が喋っていたとしても頭に残らないんですよ。

事業はあくまでも手段のひとつ

加藤:領家さんの地方公務員アワードの推薦文にあった「事業の奴隷になるな」という言葉がつながっている気がします。

領家氏:事業はあくまでも手段のひとつなんです。当時、企業の社長からも「役所が解決できへんのは100%分かっているけど、どこに言ったらいいのか分からんちゅうのは、どないやねん。窓口くらいあってもええやろ」と言われてね、そりゃそうやなと思いました(笑)。

 だから、重工混在は、大阪市と周辺の市町村の人に協力してもらって、すぐに調査したんですよ。リサーチセンターのメンバーにも手伝ってもらって、協議会を作りました。「解決はできないけど、課題は共有して、できることをみつけようや」ということです。

 もちろん、究極的には工場しかできないように都市計画を変える、あるいは、特別用途地域の指定をするというのもあるんですが、そもそも住民合意がかなり難しい。だから、「それ以外で何ができるか?」という点で取組みを重ねていくしかなかったんですね。

▼「地方公務員オンラインサロン」のお申し込みはコチラから
https://camp-fire.jp/projects/view/111482

・時間、場所、費用にとらわれず、月に2回活躍する地方公務員や首長、著名人のお話を聞くことができます
・地方公務員が大手メディアに寄稿することが可能となります

 

▼「HOLGファンクラブ」のお申し込みはコチラから
https://camp-fire.jp/projects/view/111465
・月額500円から、地方公務員や地方自治体を支援することが可能です

※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

他のインタビュー記事を読む

ネイティブアド



頁トップへ