インタビュー

【大阪府 領家誠 #3】予算大幅カット「商工労働部は営業マンになれ!」

領家誠3

苦境、しかし、直接支援に舵を切るチャンス

加藤:2006年から中小企業支援を続ける中で、どんな変化がありましたか?

領家氏:まず、2008年から橋下徹さんが知事になって、セーフティネット系以外の予算をかなり削減したんです。商工予算も例外でなく、かなり激しく切ったんです。そして、「商工労働部は、中小企業の営業マンになれ!」、と。

 今まで役所は財団や組合、商工会議所などへの補助金を通じて、企業を間接的に支援していました。橋下さんの言葉は「間接支援から直接支援に切り替えろ」と明確に指示するものではなかったんですが、間接支援の予算が減ったことで、団体との関係性も変わり、いままでどおりの役割を外部の団体に担ってもらえなくなりました。

 ただ、ビジネスマッチングなどをやっている中で、いずれ、直接支援に舵を切らなければいけないと思っていましたので、予算が減るのは苦境ですけど、一方で、この機会に直接支援に向けた環境整備ができそうだと思いました。「やるなら、今しかないな」という感じでした。

お金がない中で何をすべきか

領家氏:島根県庁の若手職員研修で登壇したときに、島根県と大阪府の状況を比較してみたら驚いたんですよ。大阪府の予算は、制度融資予算を除く事業ベースで41億円、島根は42億円。職員数は大阪が142人で、島根が106人。そこまでは良いですけど、大阪府には製造事業所数が41000社あるのに、島根県は2300社。

 もちろん、制度融資のお金は大阪の方が圧倒的に多いんです。でも、これで直接支援ができるのかと、厳しい現実を見ました(笑)。島根の職員が106人で2300社を担当するとしたら、このなかで頑張る企業は2割くらいとして約400社でしょ。だとしたら職員1人で5社を担当したら、全部まわれます。ところが大阪府の場合は、職員142人で41000社。よほど考えて直接支援のコンセプトを練らないと、寝ずに仕事しても追いつかないと気づいたんです。

加藤:コンセプトをどのように固めたのでしょうか?

領家氏:まずは、施策の利用企業へのアンケートをしました。支援施設を運営しているコーディネーターなどスタッフへのヒアリングも実施し、それをもとに『大阪府ものづくり支援に関する有識者会議』というものを立ち上げて、お金がない中で直接支援として何をすべきかを提言書にまとめました。特にミッションとして「企業の自立成長型の施策提供」や「支援をする側ではなく活用する企業側の視点」、「人が人を呼ぶような支援機関を作っていくこと」が重要だと考えました。

出向者が本庁に戻り、財団が機能不全に

領家氏:ちなみに当時、大阪府が関わる様々な財団には、府の職員が現役で出向していて、重要なポジションに就いていました。これも橋下さんの就任後に見直しがあって、全部引き揚げたんですよ。商工関連だけではなく他の財団もほぼ全部です。それは、神戸市の外郭団体の給料の出所について裁判が起こっていることの影響で、そもそも、大阪府と財団の仕事の役割分担が不明確だということもあって、一気に人を府に戻したんです。

 そうしたら、今まで財団が進めていた仕事が回らなくなりますよね。どうなったかというと、「できない」とお手上げに。直接支援と言っても、今までみんな財団頼みでやってきた部分もありますから、「どうすんねんっ!」ということになりました。

 この財団は、公益財団法人大阪産業振興機構といって、マッチングを中心に直接的に中小企業支援をしていました。特に、ものづくり支援は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が建ててくれたクリエイション・コア東大阪という施設に財団も入居して複数の団体と一緒に、このクリエイション・コアを運営していました。

 クリエイション・コアができたときはとても華々しかったんです。でも、やがて来場者数や相談件数がガタ落ちになってしまい、リーマンショックもあって、日経新聞にも『クリコアの光と影』という感じで特集記事を書かれてしまったこともありました。

ものづくり支援課を東大阪に移転し、有識者会議の提言を実現

加藤:本庁の予算も減って、財団も厳しい状況でした。その時、どう対応したのでしょうか。

領家氏:ものづくり支援課がクリエイション・コア東大阪に移転する話を進めたんです。当時、大阪府は、大阪市が第三セクターで建てた、大阪ワールドトレードセンタービルディング(現 大阪府咲洲庁舎)というビルを買い取って、そこに移転しようとしていました。

 本来、我々ものづくり支援課もそこへ移転する予定でした。でもそうなると、クリエイション・コアがあるのは東大阪で、企業の集積地からも遠くなる。今でさえうまくいっていないのに、この距離が広がればもっとダメになるから、商工労働部の中で、ものづくり支援課だけはクリエイション・コアに移転すべきだと考えました。

 それも、課長以下全員、本庁機能の移転で調整しました。この結果、財団の職員と一緒のフロアで働くことができるようになりました。職員も現場に近い場所で、意思決定をしていろんな取組みを進められたことは、すごく大きかったですね。

加藤:よく、移転の決裁が通りましたね。

領家氏:当時ね、民間公募で元経産省の人が商工労働部長だったんですよ。初の公募部長ということもあって部内での軋轢もあり、大変な状況もあったんですが、クリエイション・コアの移転には賛同してくれました。

 当時、私は課長補佐でしたが、赴任当初に「部長どうせ単身赴任やから土日暇でしょ?」とか言って、飲みに誘ったりしたこともあって、仲は割と良かったんです(笑)。そんなのもあって恐れ知らずで、有識者会議の提言をもとにした移転プランを部長の前で1時間、パワポ50枚くらいの資料でバーってプレゼンしたんですよ。
 部長は「説明は10分くらいで終わらせろ」って言う人だったんですよ。でも、45分くらいじっと黙って聞いてくれて、終わった後に、「よっしゃ、これでいこう!」と、後で、ベストプレゼンだったと、褒めてくれたんです(笑)。

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※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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