インタビュー

【有田川町 中岡浩 #1】特命係長として事業推進、6億円以上の利益を見込む

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【中岡 浩(なかおか ひろし) 経歴】
有田川町建設環境部環境衛生課 課長。1985年、旧金屋町役場に入庁。発電所計画を含めた「有田川エコプロジェクト」を提案して計画が認められ、2009年度より町長からの特命を受け現課に配属。太陽光発電・太陽熱利用への住民向け補助制度の整備や公共施設への太陽光発電設備の設置、小水力発電所建設などを行い、再生可能エネルギー分野を町に根付かせた。小水力発電所建設は年間約5,000万円の売電収入があり、基金へと積んで住民のエコ設備補助制度の原資として活用してさらなるエコなまちづくりに活かされている。

 町の中心を流れる有田川をはじめ自然に恵まれた町、和歌山県有田川町。この豊かな自然を生かして生まれたのが、町営の小水力発電だ。この小水力発電を発案した同町の中岡浩氏は、河川法や水利権などさまざまな壁にぶち当たりながらも、県や国などを相手に粘り強い交渉を続け、実現へと導いた。
 中岡氏はこの功績により、地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワードを受賞した。周囲から「夢物語だ」と言われたアイデアをいかに実現へと結びつけたのか。交渉での紆余曲折のほか、革新的なアイデアを生むための組織のあり方などについて聞いた。

補助金が出るのは儲からない事業

加藤:中岡さんを「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2018」で表彰させていただいたのは、「有田川エコプロジェクト」で、維持放流水を活用した町営の小水力発電を誕生させた点でした。総事業費はどれぐらいの事業だったのですか?

中岡氏:設計や負担金など総額で2億8600万円くらいですね。
 全て市町単独の予算です。議員の方からも「補助金もらわなかったんか」と聞かれるんですけど、国にも県にも1円もお世話にならずに作ったんですよ。そもそも補助金が出るんだったら、それは儲からない事業のはずでしょうし。

加藤:そうしますと、小水力発電で利益が出るという算段が立っていたのでしょうか。

中岡氏:この事業自体は、平成18年から計画していたのですが、平成9年に京都議定書が示されたのをきっかけに、RPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法:平成24年に廃止)が制定されたんです。
 電力会社は一定以上の電力量を、自然再生可能エネルギーから生成された電気で賄わなければならないという法律で、水力で発電すれば買い取ってくれる状況になったんです。

加藤:関西電力が買い取ってくれるわけですか。

中岡氏:そうです。そこで関電に「もし、町で水力発電を実施したら、いくらで買ってくれますか?」と問い合わせたら、1kWhあたり8円20~30銭といわれたんです。出力が140万kwぐらいだとして、年間1千数百万。だいたい採算の目処が付くなと思ったんです。

 総工費は、およそ2億円と予想していました。当時、合併した自治体が借りられる特例債という起債があって、7割か8割はそこから借りる計画を立てました。この起債は後々、9割ほどは国から交付税として戻ってくるんです。それで、大体15年でペイできるなという計算でした。
(※平成18年の1月に、金屋町、吉備町、清水町が合併して有田川町となった。中岡氏はもともと、旧金屋町役場に勤務していた)

町長に直談判し、特命係長となる

加藤:そもそも、どういうところから着想したアイデアだったのでしょうか。

中岡氏:ダムから水が勢いよく放流されているのを見て「この勢いなら発電に使える」と思ったからです。
 この小水力発電に必要な維持放流設備は平成10年に完成していました。ただ当時は合併前で私は金屋町職員、ダムの所在地は清水町。これが合併によって、同じ有田川の町域になったのです。
 有田川町は文字どおり、高野山の源流である有田川を中心に合併した町です。有田川には、有田みかんや鮎など、「自然の恵み」という強みがあるんです。ちょうどその頃、京都議定書や低炭素社会といったキーワードがメディアを賑わせていた時代だったので、維持放流水を町の水力発電に活用できれば「有田川からの新しい恵み」「エコの町」といったPRに活用できるんじゃないかと考えたんです。

 合併の2年ぐらい前から「合併協議」が始まっていて、合併したら、ダムの所在地である旧清水町の維持放流水は発電に使えると思い、合併が正式に決まったのを機に、真剣に調べてみることにしたわけです。

 調べているうちに「小水力発電、これはイケるかも」と感じるようになりまして、人事異動の希望を出すタイミングで町営での発電事業のアイデアを提案していました。しかし、水道事業の庶務係に異動となりました。要は、発電構想は無視されたというか「そんなのは夢物語」と思われたんでしょう。

加藤:それでも、引き続き提案したんですか?

中岡氏:当初はそれほど具体的な計画や収支計算を立てていたわけではありませんでした。ただ、水道の庶務がどうしても面白くなくて、とにかく仕事を替わりたいと思っていたんです。でも、普通に提案書を出しても無理だという雰囲気もありました。

 そこで、庶務を抜け出したい一心で、収支計算などを具体的に出し、「町長に繋いでくださいよ」と、当時の課長に話したら、話し合いの席を用意してくださったのです。それで町長と副町長、当時の人事課長の前で構想をプレゼンテーションしました。当時は「儲かる話」としてではなくて、「損はしないよ」という提案内容だったのですが、すると「じゃあ、お前やってみろ」という運びになったんです。
 平成21年4月には、環境衛生係の新エネルギーの推進係長になりました。1人しかいない係の長ですけれども、「特命係長やぞ」と言われ身の引き締まる思いで拝命したのを覚えています。

 それまでは、ネット検索で探したり、知り合いに電話して聞く程度だったんですけれども、係長の拝命以降は、ようやく有田川町役場の職員というかたちで、公の仕事としてあちこち聞いてまわったりできるようになりました。

6億円以上儲かる計算

加藤:では、合併特例債を中心に、工事費を捻出したのでしょうか?

中岡氏:いえ、特例債は受け取っていません。町役場の庁舎を建て替える場合などに備えている基金をいったん流用して賄いましたので、結果的に国の補助金には一切お世話になっていません。

加藤:なぜですか?

中岡氏:実は、水利権に関して県の河川課と交渉している最中、平成23年に東日本大震災が起こり、交渉が中断したんです。この年には和歌山県でも8月の末に紀伊半島大水害があり、県下の市町村が壊滅的な被害を受けたんです。私たちだけでなく、県の河川課もその対応に追われ、交渉そのものが途絶えたんです。

 また、福島第一原発の事故の影響で、国の原発推進政策がストップし、再生可能エネルギーが必要という気運が高まりました。それで風向きがコロッと変わったんですね。ちょうどうちが交渉している間に、当初計画の1kWhあたり8円20銭程度だったものが、RPS法の廃止で全量買取制度というのができて、1kWhあたり34円に、レートが一気に上がったんです。

加藤:維持費は、年間どのくらいかかるんですか?

中岡氏:水力発電は5年か10年で大規模な改修などがあります。だいたい20年スパンで、支出は年間約450万円。それに対して、収入は少し厳しく見て年間4500万円で見積もっています。20年間でトータルすると、最低でも約9億円となりますね。メンテナンス費用などが余計に必要となったとしても、6億円以上は確実に儲かるという計算になります。

 実際、運営を開始して丸2年になりますが、初年度の収入が5003万円、次年度が5080万円でした。
(編集=長嶺超輝)

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※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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