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【有田川町 中岡浩 #5】公務員の「仕事の壁」は、どこにある?

「地域通貨」を構想した時期も

加藤:このエコプロジェクトをどうしても進めたい理由があったんですか?

中岡氏:水力発電に限らず「とにかく何でもいいから面白いことをしたかった」という思いがあります。面白いアイデアは、他にもあったんです。

 例えば、有田川町の独自の「地域紙幣」を作る構想です。従来の地域通貨というと、ポイントを貯めて、何かのサービスを受けられるといった、民間の小売店のポイント制度のみたいものしかなかったので、もっと「貨幣」「お金」に近いものができないものかと妄想が湧いていたんです。

加藤:実際に、どんな貨幣が検討されたのでしょうか?

中岡氏:国が認めるかどうかは別として、いろいろなアイデアはありました。主なものは「期限付きの地域紙幣」の構想ですね。
 地元の商工会の加盟店だけで使える商品券、そういうものは昔からありました。
 しかし、独自のより「紙幣」に近づけられれば、地域経済がもっと活性化するのではないかと考えました。通貨名はCAN(カン)です。何でもできる「I CAN」のキャンです。室町時代は通貨のことを一貫、二貫と言っていたし、和歌山の有田みかんの柑橘にも引っ掛けたカンやと、取りあえず名称に拘って妄想を広めましたね。

 例えば、最初は実験として5000万CAN、レートはYEN(円)と同じで5000万円分の紙幣を印刷するわけです。役場の支払いのうち工事費や物品、謝礼などの支払いのうち何割かをこの地域紙幣で支払うのです。地域紙幣を受け取った方は町内での支払いに使い、受け取った店は町内での支払いにも使えますが役場に持ち込めば現金に交換もできます。

 町内でしか使えないただの地域紙幣では持っていようとするインセンティブが働きませんので、一番恩恵を受ける地元の商工会や業者さんなどに「地域紙幣の方は20%割引!」なんかのキャンペーンを常に打ってもらうんです。「町営温泉は地域紙幣で30%割引!」なんて言うのも考えられます。こうすると同じ物を買うんだったら地域紙幣を手に入れて町内で買い物をしようとしますから、町外への資本流出を抑えられ町内経済に好循環が生まれると考えたんです。
 役場も5000万円分の信用供与をするだけですから、現金支払いが不要になるのでその分財政に余裕が生まれます。
 例え失敗に終わっても役場が損をするのは紙幣の印刷代と職員の手間だけです。
 実現するためには、財務省と相当戦わなければならないだろうととか、地域紙幣の人気が高まり過ぎてヤミ取引が現れたら先物市場を開設しないといけないかも?なんて妄想はかなり広がっていきましたね。

加藤:そのタイミングでエコプロジェクトへの興味が高まり、そちらへ情熱と行動力をシフトさせたわけでしょうか。

中岡氏:維持放流水を使った水力発電のほうは、より実現可能性が高いというイメージがありました。地域紙幣のほうも、誰か取り組めば面白いんじゃないかなと今でも思っています。

公務員の仕事の「壁」は、どこにある?

加藤:新規プロジェクトは必ずしも実現に到りません。これには、どういった理由があると思いますか?

中岡氏:本来は「難しい仕事ほど面白い」ですよね。では、なぜ、したいことが今できないのか。それは「いろんな壁があるから」です。じゃあ、「壁」って一体なんなんやと。外的な「壁」ってありますよね。例えば交渉ごとがあれば相手が理解してくれないとか。一方で、ノウハウや予算がないといった内的な「壁」もあります。

 しかし、実は、これらの壁よりもっと手強いのは、自分の心の内面にある「壁」だと思うんですよ。「もし失敗したらどうしよう」とか、「こんな言いよったら人に笑われへんかな」とか「協力してくれへんのじゃないかな」とか。臆病で、失敗を恐れる壁といえますかね。

加藤:特に役所の中にいると、余計そうですよね。

中岡氏:あるいは「こんなことやっても何にもならん」「やって何の得になるの」とか「めんどくさい」とか。いわゆる「怠けの壁」とかね。

 僕は、「自分でつくる壁」の方がよっぽど大きいと思うんですよ。それでも、内面の壁は自分で解決できるから、可能性はありますよね。例えば明治維新の志士が、日本の独立を維持するために、イギリスの艦隊に大砲ぶっ放した。あの時代の日本は外的な壁だらけ、制約だらけなはず。それでも、方々に足を運んで世界の現状を研究したり、資金を集め、船を作ったり……。それを考えたら、役場の中で難しいと言っている問題なんか屁でもないと思えます。

加藤:とはいえ、それができる人はそんなに多くないと思うんです。なかなか自分を奮い立たせられない人もいるなか、なぜ中岡さんは実現できたのですか?

中岡氏:僕、もともと飽き性で。「面白いことないかな」「何かうまい儲け話ないかな」とか、常にそんなことを考えているからだと思います。
(編集=長嶺超輝)

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※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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