インタビュー

【有田川町 中岡浩 #2】水利権をめぐる第一歩、プロも逃げ出す「アロケーション」

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資源ごみの処理費用をゼロ、有料で引き取る業者も

加藤:町に2億8千万円を超える基金があるというのは恵まれていますね。

中岡氏:じつは、基金に余裕があるのは理由があります。町の資源ごみで得た収益を積み立てていたのです。

 合併してしばらく、有田川町では資源ごみの収集、運搬や処理に、年間およそ3千万円をかけていたんです。しかし、複数業者の競争入札にしてみたところ、資源ごみの処理費用が0円に。2回目の入札では、逆に260万円を支払ってでも資源ごみを引き取りたい業者が現われました。これで浮いた予算を基金に積み立てたところがうちの町のすごいところなんです。

加藤:ごみ処理業者は、どうしてお金を払うんですか?

中岡氏:有田川町の資源ごみの品質が良いからです。もちろん、燃えるゴミと不燃物の処理費用は、町が負担しているんですけれど、資源ごみに関しては分別が徹底されていますので、資源としての品質が高い点をリサイクル業者さんから高い評価を頂き、買い取って頂くことが可能になったんです。

 つまり、住民の皆様がごみの分別を徹底して頂いていることによって、資源ゴミが買い取って頂ける商品にまでになり、そのおかげでゴミ処理にかける行政コストを大幅に削減することが出来ました。これで財政や基金に余裕が生まれ、小水力発電所の建設に充てることも出来たのです。

 「この小水力発電所は、みなさんの日々のゴミ分別の協力で完成することができた。しかも、この発電所は今まで捨てていたエネルギーを回収している。だから地球にも優しいし、町の財政にとってもエコな発電所です」と住民の皆さんには説明しているんです。

利用されなかった資源に着目

加藤:そもそも放流水というのは何のためにあるものなんですか?

中岡氏:このダムは治水と発電を兼ねた、いわゆる多目的ダムですが、ダムができると川の下流域には全く水が流れなくなります。特にダム直下の区域では夏場にはドブ川のようになって強烈な臭いも発生してしまいます。これを放置すると河川の生態系にも悪影響を及ぼしますので、環境維持のためにダムから一定量の放流をします。これが維持放流水です。正確には「河川環境維持放流水」といいますが、環境整備の一環として作られています。

加藤:ダムにはそういう維持放流水の機能が付いているのですね。

中岡氏:いえ、関電の多目的ダムは昭和42年にできた古いもので、維持放流の設備がなかったのです。それで、下流域の川が全く流れなくなることがあり、夏場には悪臭が凄いことになっていました。そこで、住民の生活と生態系維持のため、平成10年に維持放流を行える施設が新たに増設されたのです。毎秒600~700リットルの維持放流を行う仕様になっています。

加藤:維持放流水と発電用の放水とで、水量はどのくらい違いがあるんですか?

中岡氏:関西電力の発電所は最大毎秒15t、一方で維持放流水は0.7tですから、約20倍の差があります。落差も3倍。エネルギーというのは水量と落差のかけ算で決まりますから、維持放流水に比べると約60倍の発電能力があります。

加藤:たとえ60分の1であっても、維持放流水のエネルギーは、今まで捨てられていたようなものですよね。このような状況は、全国の他の地域のダムでも当てはまるのではないでしょうか?

中岡氏:はい。おそらく活用したほうがいいと気づいていても、多くの場合は水利関係の調整が複雑で諦めてしまうのだと思います。水力発電というのは、ものすごいローテクなので、技術的には問題ありません。ただ、河川法に掛かる流水や多目的ダムなどの建造物を拝借しようとすると権利調整や規制との戦いになると思います。
 たとえば同じ河川用水でも、河川法にかからない灌漑用水に関する施設はすぐ作れるんです。

加藤:では、維持放流水を小水力発電に使うというのは、河川法にかかるわけですか。

中岡氏:河川法に掛かる申請もありますが、特に多目的ダムを使わせてもらうと言うのはかなり難しいんです。小水力発電の施設を町で作ったというと「水利権関係が大変だったでしょ」と、よく尋ねられますし、私も最初はその程度の認識だったんですが、水利権うんぬんの前に、多目的ダムを使わせて頂くには高いハードルがあるということは全く知しりませんでした。

水利権をめぐる第一歩、プロも逃げ出す「アロケーション」

加藤:河川法の何がやっかいだったのでしょうか。

中岡氏:一番やっかいだったのは、ダム施設のアロケーション(allocation)の問題ですね。「ダム建設に掛かった費用をどう再計算(負担)するか」という問題があるんです。このダムは、県が管轄している治水目的と関西電力の発電目的を兼ねてますがそれぞれの施設だけでなく、ダム管理事務所や水位の測候所、警報設備などいろんな共同管理設備もあるんですが、これらを和歌山県と関西電力で共同経営していたわけですが、この経営に有田川町が新たに経営参加するということになるんです。
 この多目的ダムは、おもに「治水」と「発電」を目的に運営されているんですが、そこにわれわれのような町が、新たに小水力発電で参加するということになると、負担割合の算定が難しくなるのです。当初だいたい、「県の治水目的8割・関西電力の発電2割」という割合を前提に出資し合って多目的ダムは建設・運営されていました。そこに新たに小水力発電で参加するなら、参加しようとする者が妥当な出資額を提示しなければなりません。
 河川法に基づく各申請(一般的に言われる水利権申請)をする前にこのアロケーションを解決しておかなければなりませんが、当事者間の負担割合を提示すること自体がかなり難しいんですね。

加藤:交渉はどのように進んだのでしょうか?

中岡氏:「当初はどこと交渉すれば良いかも解らず、ダム事務所長に相談に行ったら「水利権が絡むから有田振興局建設部と協議をするように」といわれ有田振興局に計画を持って行ったら「ダムの水利権は関西電力が持っているから、まず先に関西電力に水利権をもらって来てください。」と言われたんです。
 それで関西電力さんに、「小水力発電の水利権を譲ってくれませんか」と持ちかけたら、どうやら、そのような問い合わせ自体が初めてだったようで、何日かして「水利権については県の管理だから、県の河川課と相談してください」と回答がありました。
 こうして和歌山県の県土整備部の河川課が交渉相手として定まったのです。
(編集=長嶺超輝)

 

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