3度目の正直で、念願の公務員に
加藤:公務員になる前は、どういうお仕事されていたんですか?
中岡氏:役場に勤めたかったのですが、高校を卒業してからは地元の中小の建設資材会社に就職しました。生コンや建築資材など全般を扱っている会社です。
私は小さなミカン農家の長男ですが本当は大学に進学したかったですね。でも、高校生で進路を決めるタイミングで、ちょうど母親が脳梗塞で倒れちゃって、農業が忙しいなか「大学に行きたい」なんて言っていられない状況になりました。
加藤:会社に勤めながら、公務員試験を受けていたんですか?
中岡氏:そうです。当時勤めていた会社というのが、気性に合って楽しかったんですけど、社長や社長の親族もいます。親族経営ですから納得できないと思うことがある中で、絶対的なものに仕えるというのが私の性格に合わない気がしていました。
民間だったら嫌な上司でも従わないといけないところがありますが、役場だと、いやな上司がいたとしても正しいと思えばやり込めてしまえば、もしかしたらヒーローになれるかもしれませんよね。公務員を目指す方に「公務員の何が一番魅力的か」と聞かれたら、「悪いことせんかったら、思いっきり好きなことをできる」と答えるでしょうね。まあ路頭に迷うことも少ないでしょうから。
加藤:それにしても、なぜ3回も受けようとしたんですか?
中岡氏:勤め先が他にないんですよ、田舎には。だいたいお役場か農協かという感じで。
加藤:3回目は手応えがあったんでしょうか。
中岡氏:一回目は自信満々だったですけど、さすがに3回目は現役の大学生や高校生が相手ですから自信はなかったんですが、なんとか面接まで行ったんですね。
町長から「お前、今、給料いくらもらっているんや」と聞かれたから、正直に答えたら町長から「役場はいくらもらえるか知ってるか、今のほうがええんと違うか」と言われたりしましたがなんとか3回目で採用されました。
「3回も受けに来たやつはお前が初めてや」と当時はよく言われました。
加藤:給料は下がったんですよね?
中岡氏:はい、役場って安月給だと思いましたね、それでも役場のほうが魅力的でした。
自ら水道管の工事も行った
加藤:中岡さんの市役所人生で、最初の職場はどこだったのでしょうか。
中岡氏:最初の配属は、旧金屋町役場の福祉課の衛生係でした。当時は小さな町役場だったので、ゴミ関係とか健康診断、子供達の予防接種、公害関係とか。そういう仕事を4人ぐらいで担当している部署でした。
2年ほどいたんですけど、ネクタイ締めて事務をしたり、健診の手伝いなどをしているのが、どうもかったるくて……。
そんなとき、福祉課に「水道係」というのがあって、水道係の人たちは作業服を着て現場へ出かけているんです。庁舎の中にずっといる仕事を続けていると、なんとなくそういう現場の仕事に憧れていたんです。同じ課に総務課長の奥さんが係長でおられたので「旦那さんに水道係に変えるようにお願いしてよ』と頼んだら、すぐ変えてくれたんです。
ただ、外から見るのと、実際に現場で働くのとでは大違いでした。田舎の水道係なので、毎日々スコップやつるはしを持って、穴を掘ったり水道管をつないだり、住民から電話で「風呂の水が止まらない」と言われたら直しに行ったり。普通は公認業者制度があり民間に任せるんですが、当時の旧金屋町にはそういう制度がなく、役場が全てやってたんです。
だったら、水道の公認業者制度そのものを作れば自分が楽もできるし業者も儲かると思いつき公認業者の制度を作りました。思いついたらすぐに取り組んでいましたね。
加藤:次は、どの部署でしたか。
中岡氏:建設課の管理係でした。事務方のほうに配属され、そこに3、4年いました。
その後、福祉係で障害者の団体とか遺族の団体、厚生医療などに関する手続きの仕事をしていました。ここではいろんな団体の方と出会えてとても楽しかったですね。
その次が教育委員会の社会教育係です。公民館や文化財、文化協会やPTAの団体なども担当してきました。土曜日も日曜日も夜でも何かしらの会議や行事、準備や打ち合わせなんかがあって、とにかく没頭して充実していましたね、嫁さんと子どもには悪いことをしたと思っています。
この頃の、平成18年の1月に金屋町、吉備町、清水町が合併して有田川町になったのです。
信頼できる業者であるかどうかが一番大事
加藤:現在は環境衛生課の課長とのことですが、今のお仕事について教えてください。
中岡氏:廃棄物関係や公害苦情、犬の予防接種、斎場の管理なども管轄しています。新エネルギーに関する分野も担当しています。
町が議会と一緒になって誘致した出力1300KWの風車10基が、吉備町舎の目の前の山頂に完成していたんですが、私が環境衛生課に新エネルギー推進係長として配属されたころから、近隣住民から騒音の苦情が大きくなりはじめ、その対策に追われるようになりました。
当時の課長と一緒に夜も住民の家を回ってお話を伺い事業者に対策をお願いする一方で、議会には「住民の命と健康を何と思ってるんだ、住民が納得するようにしろ」とお叱りを受けるという、そういうことが2年ぐらい続きました。今では風力発電の事業者が地域住民の騒音対策などの要望を聞き入れて頂き、良好な関係を保っていますので良かったのかなと思っています。
加藤:環境衛生課が再生可能エネルギーの部門を担当するきっかけだったんですね。
中岡氏:最初、風力発電を誘致したのは企画部門だったのです。それは他の自治体と同様だと思います。ただ、風車が完成し苦情が出るようになると「新エネルギーの担当係が出来たので対応はそちらで」と言うことになり環境衛生課で対応することになったのです。
当時、風車被害についての知識は全くなかったので同様のケースの自治体を見てこようと、ある自治体を視察にいったのです。その自治体の担当者は「風車事業者の対応がひどいもので、法律に則って造っている。何が悪いんや、と言わんばかりで、文句があるなら訴えてという対応しかしてくれない。」と担当者の方は嘆いておられましたね。
風力発電事業というのはかなりの資本を先行投資して事業化すものですから、完成した後に発電を停止してくれと言ってもほぼ無理なんですね。信頼できる事業者であるかどうかというのを見極めておくのが一番大事だなとつくづく思いました。
再生可能エネルギーは採算の問題だけでなく、地域の環境への視点が一番大切ですね。
(編集=長嶺超輝)
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※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。