役所のなかでやりたいことを実現するためには
加藤:役所のなかでやりたいことを実現するコツやノウハウはありますか?
佐久間氏:難しいですけど、予算をかけないでできる提案をすることですかね。あと、大義名分ですね。公平性はやっぱり求められます。
住民のためになると理屈で説明できるよう準備し、かつ、予算をかけない。もしくは、かけたとしても、しっかりと対費用効果を見込めると理論武装をしてあげれば、基本的には通るはずなんです。
あとは、自分でやりたいと言ったからには、自分で最後まで責任をもてるかどうか。不測の事態があっても、しっかりと責任をもてるのなら、やれるはずです。
加藤:上司の賛成を得られないというか。苦戦したことはないですか?
佐久間氏:ないですね。全部通ってます。
加藤:通すコツはありますか?
佐久間氏:最初から無理そうなものは提案しないですね、時間の無駄だから。いける見込みがあるものを、しっかりと理論武装をして提案をする。あと、予算をかけないことが重要です。予算をかけずに官民協働で課題をクリアする。
例えば、ハロー!プロジェクトとのコラボでは、三芳町広報大使の金澤朋子さんが所属するJuice=Juiceの新曲リリースをするタイミングで、プロモーションを兼ねて三芳町役場をポスターで埋め尽くすジャックを行いました。狙いは3つあって、一つはハロプロファンに三芳町に来てもらうこと、二つ目はパブリシティの獲得。3つ目は柱や壁にポスターを貼ったのですが、将来的に柱や壁を広告の場として活用し、財源確保につなげる取り組みのテストとしての狙いがありました。
実際、ハロプロファンが福岡など全国から役場に足を運んでくれ、聖地のようになり、それをメディアが取り上げてYahoo!ニュースになったりと、かなりの効果がありました。先方もプロモーションやメディア露出という観点から、とても意味のあるものだと感じてくださっています。お互いにメリットを見出せることを相手に提案することも大切なことです。
町としては、三芳町にたくさん人が来てほしい、三芳町を町内外に知ってほしい、財源確保をしたい、この3つを予算ゼロで実現できますと、提案をするのです。ポスター100枚を無償で先方からいただきましたので、一切費用は掛かっていないんです。
また、西武ライオンズとのコラボもして、毎週木曜日はライオンズデーとして、期間限定で赤いユニフォームを着るというプロモーションも行いました。この時のユニフォームも先方から無償で職員200人分を提供していただきました。
共に予算ゼロ事業です。一方で、企業も自治体や行政とどのように絡めばよいのか方法をしらない。CSRの視点から、まちとして協力できることを説明すると納得してまちへの大きな力となってくださいます。
自分の仕事を顧みて、改善できるポイントを指標化する
加藤:今後どんなことをしていきたいですか?
佐久間氏:今後は、働き方改革の推進。あとPDCAサイクルを自分のグループのなかでも回していきたい。あとは、KPI測定ですね。広報って、非常に結果は出やすいですけど、こうやったからこんな効果があって、住民サービス向上につながりましたっていうような、何かパッケージング的なものをしてみたいな、と試みていますね。
個人的に毎年行っているのですが、100人以上の自治体職員が集まる自主勉強会「全国広報PR会議」を継続して開催したいなって思っています。9月下旬に大阪でやる予定でいるので、たくさん来てほしいなって思っています。
あと、UDフォントを世の中に浸透させていきたい。広報に異動してきた年に、「文字が小さい」「読みにくい」という苦情がたくさんありました。2年目にUDフォントを導入したところ一切そうした苦情がなくなったんです。民間出向していたモリサワの社是は「文字を通じて社会に貢献する」。私は文字に救われたと思っています。UDフォントをもっと広めていきたいなって思っています。
加藤:よく、役所は売上がないからKPIを測定できないと言われますが、民間企業だって直接的に売上に関わらない部署もいっぱいあります。それでも、KPIに落とし込んでいることも多いですよね。
佐久間氏:そう思います。たとえば、月20時間残業していたのを、月10時間減らして、年間120時間年間下げます、というKPIを立てる。そういう簡単なものでもいいと思うんですよ。もっと言うと、納付書の封入封緘を今までよりも5分早く処理するという指標でもよいわけで。自分の仕事を顧みて、改善できるポイントを指標化する。時間をどう削減できるかっていうのは、一つの指標になると思うんですよね。
公務員だからこそ挑戦できる
加藤:最後に、地方自治体で働く醍醐味を教えてもらえますか?
佐久間氏:昔の上司から言われたことがあります。公務員は、よっぽどの不祥事を起こさない限り、基本何をやってもクビにはならない、これほど挑戦のしがいのあるところはない、と。民間に出向してなおさら、それが確信に変わったところでもあります。
公務員は安定しているからこそ、いっぱいチャレンジができます。それに対しての対価は大きくないかもしれないけど、やりたいと思ったことは実現できる環境にある。それはすごい醍醐味ですよね。自分が考えたことをやっても、行政のバックアップがあることによって、守られるというのは大きな強みです。
加藤:守られるという意味合いのなかに、公務員に対する信頼もありますよね。
佐久間氏:もちろんそうです。それは武器になりますよね。先ほどのハロプロやライオンズの企画は自治体が関わることで、企業としてはCSR、つまり社会貢献としてもメリットがあります。官民協働で、WIN-WINの関係になれれば、日本を元気にする方法はいくらでもあるのではないでしょうか。
(編集:市岡ひかり)
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※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。
第1話 広報誌は町の名刺
第2話 もはや、公務員は安泰ではない
第3話 一線で活躍している人ほど、実は周りに迷惑をかけている
第4話 「出る杭」が打たれないために
第5話 異動して半年がカイゼンのチャンス