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【三芳町 佐久間智之 #1】広報誌は町の名刺

【佐久間 智之(さくま ともゆき) 経歴】
埼玉県三芳町 広報PR担当 ユニバーサル・デザイン・アドバイザー。2002年埼玉県三芳町入庁。独学で広報紙「広報みよし」を作り全国広報コンクールで日本一の内閣総理大臣賞受賞。予算ゼロ円でプロモーションも担当し、ハロプロとのコラボを仕掛ける。Yahoo!トップニュースになるなどパブリシティ戦略の評価も高い。講演多数。フォントメーカーのモリサワに約1年の民間出向を経験。著書に「パッと伝わる公務員のデザイン術」「すぐに使える!公務員のデザイン大全」(学陽書房)。

年配層はもちろん、若い世代からも支持される埼玉県・三芳町の広報誌「広報みよし」。
平成27年全国広報コンクールでは内閣総理大臣賞を受賞。雑誌のようなインパクトのある誌面は、佐久間智之氏の独学で作られたもの。いかにそのノウハウを培ったのか。また、庁内や議会にスムーズに意見を通すコツや、公務員としての在り方やその考えについて聞いた。

捨てられた広報誌、「税金の無駄」と一念発起

加藤(インタビューアー):本日はよろしくお願いします。佐久間さんは2011年4月から2018年5月まで広報を担当し、民間企業の出向を経て、現在は再び三芳町の広報担当としてお仕事をされています。

 どういう経緯で三芳町の広報を担当することになったんですか?

佐久間氏:介護保険担当時代、とあるマンションへ調査に行ったとき、マンションのゴミ捨て場に、うちの「広報みよし」がチラシにまぎれて捨てられていたんです。それを見て、もったいないなと思って。
 このもったいないっていうのは、二つの意味があります。一つは、税金と資源の無駄。もう一つは、住民に対して、町の情報が届いていないということ。どうにか改善したいという思いが、その時から心にずっと引っかかっていました。そんなときにタイミングよく、町長が公募で広報担当者を募集したので、手をあげました。

 以前、ビジュアル系バンドをやっていたときに、フライヤーみたいなものを作っていたので、そのノウハウでできるんじゃないか、と町長にプレゼンしました。町長は「どこか変わっていて面白い職員だな」と思って配属したそうです。そこで町長と「日本一の広報作ります」と握手をしたのを覚えています。

加藤:なるほど。ほかの職員の方も同じように広報誌が捨てられているシーンを見たことがあると思うんです。なぜ佐久間さんはそこに引っかかったんですか?

佐久間氏:僕は、広報誌ってそもそも町の顔というか、名刺代わりだと思っているんです。「三芳町です」って言ったときに渡すものって何? と言ったら、広報誌だと思っています。だから、自分が勤めている町の名刺が、かっこ悪いのがいやだったんです。恥ずかしい、これをどうにかしたいという思いが以前からありました。そういう気持ちが常にあったからこそ目についたんじゃないでしょうか。

広報誌がコミュニティの新たな担い手に

加藤:三芳町の広報誌が、だんだん有名になっていきますよね。町の人の声や、読者の人の声が変わってきたと感じたタイミングはありましたか?

佐久間氏:最初に変化があったのは、タイトルをローマ字に変えたとき。実は、めっちゃ苦情があったんです。ただ、それはすごくポジティブなことだと思って。それだけ見られるってことは、伸びしろがあると思ったんですよ。「改善の余地があるな」と思いました。

 それまで広報誌では、特集を組んでなかったんです。そこで、毎月特集を組むようになりました。それ以降、「今月届いてない」といった声を聞くようになり、毎月楽しみにしてくださっている広報誌に、生まれ変わったと感じました。

 広報誌といえば大人が読むものだと思うじゃないですか。町内の学校で町の魅力を伝える授業で講師をするとき、必ず冒頭で、子どもたちに「『広報みよし』読んでる子?」って聞くと、みんな手をあげるんです。「なんで? 読めない漢字もあるでしょう」と聞くと「近所の子が載ってる」「隣の子が載ってる」「お母さんが載ってる」と。広報誌が、地域のコミュニティのひとつの担い手というか、フックになっていると気づいたんです。これが、広報の力なんだなと。

 他に変化を感じたのは、2015年の第5次総合計画策定のためのアンケート結果を見たときでした。「どんなツールで町の情報を取得してますか?」という質問に対して、70代の「広報みよし」の購読率はなんと94%でした。「広報みよし」と答えた若い人が、以前は73%だったのに、その5年後には8割を超えていました。これは、フォントを読みやすいUDフォントを導入するなど、細かな配慮をしている結果かなと思います。
 ほとんど「広報みよし」を見てる。若い人も読んでくれるようになったと思いました。お母さんたちに「広報見てますか?」って聞くと、「いつも楽しみにしていて、必ず見てます」って言ってくださいます。

 ただ、暗黒時代もありました。さっきも言ったように、広報誌のタイトルをローマ字に変えた結果、「日本語のほうがよかったのに」とクレームがありました。そこで、表表紙はローマ字、裏表紙はひらがなにして、裏からも表からも読める「両開き」にするという思い切ったことをやりました。その結果、混乱をきたして迷走してしまったんです。住民のこと、相手のことを考えていませんでした。
 しかし、それを許してくれたトップや上司の理解と支えがあったから、挑戦することができました。本気で変えたいという思いに共感してくれる環境で仕事をさせていただけるのは、ありがたいことです。三芳町の職員は本当に素敵な人ばかりなんですよ。

2つのターニングポイント

加藤:その後に躍進ができたターニングポイントはありましたか?

佐久間氏:ほかの自治体の広報誌を取り寄せたことです。全国広報コンクールの常連の福岡県福智町の広報を取り寄せて、衝撃を受けました。「なにこれ!これが広報誌とは。まるで雑誌じゃないか」と。自分は一生懸命頑張ってるつもりだったんですけど、ここまで頑張んないと、住民に愛される広報を作れないんだ、と感じたことは大きかったです。同時にこんな素敵な広報誌が毎月ポストに入っていたら、住民はうれしいだろうなって思いました。こんな広報誌を作りたい、そう思いました。

 もう一つのターニングポイントは、僕が広報に異動した直後にありました。NHKの記者さんから観光系のイベントの中身を聞かれたときに、「僕ちょっとわかんないんで、観光課のほうに聞いてください」みたいなことを言ったんですよ。
 そしたら、「いやいやいや、広報担当は町のことを全部知っていて、メディアに説明するのが仕事だから、ちゃんと広報の役割を果たしてください」と怒られたんです。確かにそうだと思いました。すごく悔しくて情けなくて、ガツンと頭たたかれたような感じがしたんです。言った本人は覚えてないそうですが(笑)。

 広報担当は広報誌を作るところという固定概念が自分のなかであって、そればっかりやっていたんですけど、振り返るきっかけになりました。
(編集:市岡ひかり)

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※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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