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自治体職員ネットワーク活動の効果・成果-坂本勝敏#2

【坂本勝敏 経歴】
 大和市役所入庁後、財政課、障害福祉課、教育総務課を経て、現在はすくすく子育て課家庭こども相談担当係長として、子育てに関する相談や児童虐待への対応を行う。
 庁外では、スキルを高める勉強会などを主催する自主研究活動に深く関わり、広域で自主研グループが一堂に会する関東自主研サミットの実行委員会の代表を務める。

前回は「ネットワーク活動の変遷」として、これまで活動されてきた全国規模のネットワーク活動の特徴について述べたが、今回は自治体職員がネットワーク活動をすることによって得られる効果と成果について述べたい。
まず、効果と成果の全体像をおさえるにあたり、静岡市職員の杉山(井上) 宏氏が法政大学大学院にて行った研究『地方自治体における職員の自主研究活動に関する調査研究〜その実態と人づくりの可能性について』を紹介したい。この研究は、自治体職員有志が行う自主研究活動の実態と効果を明らかにし、職員や自治体組織へ活用方法の提言を行うことを目的にしたものだが、表5において具体的な効果と成果の内容についてまとめられている。
具体的な効果・成果
この表では、自主研究活動により得られることを、「個人的効果」と「組織や地域への成果」の2つに大きく分け、さらに個人的効果を3つに細分化して整理している。全体を俯瞰する上でこの表は大変わかりやすいため、この表の視点を参考にしつつ、これまで自ら活動してきた中で、個人的に特に影響が大きいと感じた4つの効果・成果について述べる。
1点目は、行政全般にかかる様々な知識を得ることができること。
それにより、個人としてのベーススキルが高まり、結果として業務の質を高めることにつながる(表5:個人的効果/質的成長)。
社会人として学び続けることは官民にかかわらず重要だが、一般的には業務にかかわる専門性を高めるための学びになる傾向が強いのではなかろうか。それが自治体職員によるネットワーク活動(特に自主研究活動、略して自主研と呼ばれるようなもの)は、業務の専門性を追求するような学びの場もあるが、自らが担当する業務分野以外の知識を吸収できる場として適している。「人事異動が転職級」といわれる自治体職員にとって、この効能は大きい。異動後に短期間で即戦力となるためにも、様々な分野で適した判断ができる知識量をストックするためにも、業務分野以外の学びも大きな価値があり、結果として個人の質的成長に大きく寄与するといえる。
さらに、知識を得るという点でもう一つ自治体職員特有の学びとして「地域を学ぶ」活動がある。この学びは、地域に対する“地元愛”のような想いが育まれ、結果として日々の仕事に対するモチベーションを高める効果を見込むことができる(表5:組織や地域への成果)。
続いて2点目は、組織、所属、肩書きにかかわらないネットワーク(人脈)ができること。これは社内、社外で異なる効果が見込まれる。
まず、社内の人脈としては、顔が見える関係性ができることにより、調整等に要する時間が短縮されやすくなる(表5:個人的効果/人脈形成)。
「縦割り」のお役所組織体質の中では、庁内人脈があることで何かと話が進めやすくなるため、業務上の効果が認められる。特に若手のうちは、肩書きを越えたつながりがあると、とても心強く感じることだろう。
一方、社外の人脈としては、発信されるメールやSNSにより、有益な情報にコンタクトしやすくなり、結果として個人の企画力の向上や多角的視点の醸成につながる(表5:個人的効果/人脈形成+質的成長)。
現在、自治体の数は約1,700。程度の差はあれ、概ね同様の課題を抱え悩む、逆に言うと助け合える仲間が1,700団体もあるといえる。ネットワークを活用した情報共有は業務スキルに直結させることも可能だ。このHolgのインタビューでも以前紹介されたマイナンバー担当者が集うFacebookグループや公会計担当者が集うFacebookグループでは、有益な情報にコンタクトできることに加えて、ヘルプ発信があるとコメントでサポートが入ることも多く、互いに助け合い、高めあう関係性ができている。
同業他社以外の、民間、学生、地域の方々と幅広く人脈をつくり、獲得する情報の幅を広げることも強く推奨したい。役所世界の狭く、限られたロジック中で仕事をしていると「井の中の蛙」になりやすい上に、お上の力だけでどうこうなる時代ではなくなっていることからも、今後ますます同業他社以外とのネットワークの意義は増していくものと考える。
続いて3点目は、組織や地域にある課題に対して自ら解決に向けたアクションを起こすことができるということ(表5:組織や地域への成果)。
前述のとおり転職級に異なる業務分野の集合体である自治体で、個人として担当したい業務につける可能性は決して高くない。例えその部署に行くことができても組織の判断により思いを実行に移すことができない場合もある。それが、ネットワーク活動であれば、自ら行動に移すことが可能だ。
例をあげると、この4月に「NPO法人 6時の公共」法人設立パーティーが千葉県幕張にて開催された。この法人は、自治体職員が中心となり立ち上げたもので、市民も議員も行政マンも膝を突きあわせて同じ感覚で学び、気づき、自分ごととして考え、それにより「自分たちのまちは自分たちでつくる」社会の実現を目指している。まさに住民自治を推進するような活動なわけだが、自治体職員として気づき、かつ実現させたいという想いを、プライベートの時間を活用することで実践できた好事例といえよう。
また、程度の差はあるだろうが、減点主義文化がはびこる自治体の中では、新しい取り組みに対して、事業の方向性は理解できても「失敗する(かも知れない)くらいならやらない方がマシ」と捉える職員も(が?)多く、そんな組織にいると、そもそも挑戦するマインドも育たない。それが、ネットワーク活動であれば、トライ&エラーを積み重ねていく事業化プロセスも体験でき、その経験は自らを成長させ、モチベーション向上にもつながる。(表5:個人的効果/質的成長)
最後4点目として、キャリアステージに応じてプレ体験ができることをあげる。ネットワーク活動であれば、若くてもリーダーシップを発揮しイベント等を企画することもできるし、管理職になる前にも組織マネジメントの疑似体験もできる。結果として、キャリアステージに応じた職責を全うする力を身につけることができる(表5:個人的効果/人脈形成+質的成長)。
職場では職位によって果たせる役割が限られやすい。私が知る世界の話になるが、管理職につくまでは概ね一兵卒として扱われるが、役職についた時を境に急にマネジャーとしての役割が求められる。新任の管理職は、繁忙期の4月に複数の研修を受講し、それによって係や課をマネジメントしていくことになるが、そんな短期間の研修で職責を全うできうる力を習得することは、個人差は勿論あるだろうが、かなり無理があるのではないか。
それに対して、ネットワーク活動は自主的な活動であるから、若手、中堅、ベテランに関係なく、やりたいと手をあげた者がリーダーシップを発揮して事業が動いていく。その活動が一定の大きさになると、事業企画を通じて事業の進行管理やメンバーの役割分担、メンバー間での関係調整などチームマネジメントの疑似体験を行うこともできる。そうした経験の上で役職に就くことができると、求められる職責を担う力が一定程度養われているものと考えられるし、昇任した本人自身にとっても、新しい職務に対する不安を軽減できる効果を見込むことができる。
ここまで述べてきたように、ネットワーク活動に参画することは、一定の時間とお金を要するも、それ以上の効果と成果、さらには個人のモチベーション向上につながる大変意義のあるものと捉えている。
なお、個人の成長への効果に関しては、その裏付けとして総務省のHPサイト「地方公共団体人材育成・人事評価関係」にある「地方自治・新時代における人材育成基本方針策定指針」を紹介したい。この指針では、「人材育成は本人達の意欲、主体性があってはじめて可能となるものであることから、自己啓発は人材育成の基本であると考えられる。」とある。さらに、「自己啓発を促進するためには、個々の職員の自主性に委ねるだけではなく(略)自己啓発のきっかけづくりや自己啓発に取り組みやすい組織風土づくりに組織として取り組む必要があることから、そのための具体的な方策について検討すること。」と自治体に要請していることからも、人材育成の観点として自治体職員のネットワーク活動は、国からお墨付きを与えられるほどの価値があるといえよう。
ここまでプラス面の話ばかり述べてきたが、最後にリスクについても触れておきたい。「ワークショップ温泉」という言葉が一時期ネット上で話題になったが、ネットワーク活動に積極的に参加し、新しい知識を蓄え、そういう場で出会う仲間と一緒にいると、場に参加することが目的化し始める危険をはらむ。その世界の住人の一員になると、同じような知識をもって話し合える仲間がいて、居心地がとてもいい。そうして、日常の疲れをネットワーク活動に参加することで癒す、まさに温泉と化してしまっている例がある。
なお、この温泉機能を一概に否定するものではないと筆者は考えており、そもそも主体的な学びはしているわけで、インプットされた情報をいつか活かす日が来るかもしれないことから、何もやらないよりマシだ。
ただ、参加すること自体が目的化することがないよう自戒に努める必要があり、さらに「自分、意識高い系だから」と鼻高々な態度をとって、周囲から白けた目で見られることがないよう注意したうえで、ネットワーク活動に取り組むことが望ましい。

(文=大和市 坂本勝敏)

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