コラム

自治体職員ネットワーク活動の変遷-坂本勝敏#1

坂本さんコラム

【坂本勝敏 経歴】
 大和市役所入庁後、財政課、障害福祉課、教育総務課を経て、現在はすくすく子育て課家庭こども相談担当係長として、子育てに関する相談や児童虐待への対応を行う。
 庁外では、スキルを高める勉強会などを主催する自主研究活動に深く関わり、広域で自主研グループが一堂に会する関東自主研サミットの実行委員会の代表を務める。

 全国にいる地方公務員は約274万人。うち、教員、警察、消防等を除いた一般行政部門でおよそ92万人。その92万人の中では完全にマイノリティな存在であるが、自治体職員が自ら業務の枠を超えて自主的に学びあい、そしてつながりあう活動がここ数年の間に急速に広がりをみせている。

 自主研究または自主研修活動(略して「自主研」)、オフサイトミーティング(略して「OM」)などと呼ばれる活動がそれにあたるが、こうした業務の枠を超えた活動(これらの活動は個の学びに加えて、参加者同士による“つながり”が大きなメリットを生み出すことから、本稿では以下「ネットワーク活動」という。)を筆者は「個人良し、組織良し、地域良し」の三方良しの活動と捉えている。そんなネットワーク活動の現状、効果、そして未来について語ってみたいと思うが第一話目ではネットワーク活動の変遷についてまとめてみたい。

ネットワーク活動の変遷

●第一世代:自治体学会
 公務員によるネットワーク活動の歴史をまずは振り返りたい。福岡県市町村研究所研究年報(2005年3月)に掲載された『地方分権時代における自主研究活動とその支援のあり方(溝口泰介)』によると、1980年代初頭、公共施設や道路建設などの量的な基盤整備が一定の水準に達し、質的な地域づくりが求められるようになったことなどを背景に政策研究が全国的に広がっていった。
また、そうした質的な地域づくりは、国が定めた政策を実施するのではなく地域の特性にあったオリジナルな政策を構想する必要があり、それを自治体職員が認識し始めたことなどが指摘されており、こうした状況の中、自主研究活動が一種のブームとなり、地方自治体に次々と自主研究グループが形成されていった。
 そのような折、1984年10月に神奈川県の呼びかけにより独自の政策を進めている自治体が集い「自治体政策研究交流会議」が開かれた。その中で人事異動によって職務が変わっても参加できるよう、個人として参加する、そしてそこに学者、研究者、市民も加わる「自治体学会」といったものがつくられるべきとの発言があり、賛同者のもと検討が進められ、1986年5月、自治体職員を主力とする「自治体学会」設立となった。
 自治体学会はネットワークをつくり相互交流をはかり、必要な情報を提供するとされ、毎年総会を開催するとともに年2回学会誌を発行している。その活動は現在も続いており、平成28年度決算報告によると、会員数約1,100人、年間予算規模1,500万円をほこり、今なお全国規模でつなぐ力、そして発信力をもつネットワーク活動といえる。

●第二世代:自治体職員有志の会
 自治体学会を第一世代とすると、次の大きな流れとしては、自治体職員有志の会(以下「有志の会」という)を第二世代の代表例としてあげたい。
 2003年6月に第1回オフ会が開催され、これまで25回のオフ会やシンポジウムが開催されている。この有志の会設立の時期は、バブル経済が崩壊し右肩下がりが続く中で行政改革が叫ばれ、あわせて価値観の多様化が進み始めた時期であり、まさに自治体を取り巻く環境の大きな転換期であった。そんな情勢の中、三重県庁の山路栄一氏らが中心となり「自治体職員として個々人が主体的に、地域の発展を担うための自治体のあり方とそれを支える自治体職員像を考え、志を同じくする職員が協働して「脱お役所仕事」を実現していくため」に有志の会は設立された。
 なお、第一世代と異なる社会環境要因としては、インターネットとメールの普及があげられる。有志の会ではメーリングリストによる情報共有が行われてきており、筆者もメーリングリスト会員として登録することで、会員間での意見交換を見ることができ、日頃から業務以外の分野の情報に触れることができる貴重な情報源となっている。なお、現在の会員数(メーリングリスト登録数)は、約1,000名にのぼっている。

●第三世代:東北まちづくりオフサイトミーティング
 SNSの普及は自治体職員のネットワーク活動に弾みをつけた。オフ会や学習会の場などで出会いがあり、名刺交換をする。しかし、その後リアルに会う機会が積み重ならないと記憶力が悪い筆者は大変失礼ながらその出会いが激しく薄れていってしまう。それがSNS(特に我々40代世代はFacebook)の普及によって、飛躍的に関係性を継続させやすくなった。このようなSNSが普及した環境下で第三世代として時代を築いたのが東北まちづくりオフサイトミーティング(以下「東北OM」という)だ。
 社会背景としては、経済の停滞どころか人口減少の到来を迎え、まちづくりや地域活性をめざす必要性が高まったことが要因となっている。東北OMの発足は2009年。結成当初は30名ほどであった会員数も、今やおよそ1,000人規模を誇るネットワークにまで成長している。
 東北OMの特徴は、民と官の垣根を越えた取り組みが必要不可欠という前提のもと、民官協働による取り組みを進めようという姿勢があることだ。それにより、公務員や政治家、学会系の方々を中心とした従来のネットワークから一歩踏み出したといえる。
また、この東北OMの設立趣旨にある「志高く,されど敷居は低く」の精神は、それまで多くあった「自主研究→政策提言」という、人によっては「意識高い系」と揶揄されるような壁を壊し、参加者の裾野を広げることに力を入れている。この精神は広く支持され、全国各地で同様のオフサイトミーティングが立ち上がることに発展していく。九州、上州、四国、新潟、福島、秋田などの各地でその地域OMが生まれることにつながるが、この地域OMの設立には東北OMを立ち上げから現在まで引っ張ってきた山形市の後藤好邦氏の存在が極めて大きい。地域OMが立ち上がる際、また立ちあがった後もそれらの活動を応援する意味もこめて、後藤氏は各地で開催されるOMに参加しており、この後藤氏のこうした姿勢が地域OM立ち上げにあたって大きな後ろ盾となっている点を補足しておきたい。

●第四世代:よんなな会
 今、最も多くの公務員を集める力をもっているのは「よんなな会」だ(きっと)。よんなな会は、総務省(2018年4月現在、神奈川県庁へ出向中)の脇雅昭氏が、自治体から国に出向派遣で来ている方に恩返しができたらという思いをもち、そういう人たちに喜んでもらえる場創りができればと思ったことをきっかけに2010年に第1回が開催された。
 それ以降活動が継続されるなかで「全国の公務員のモチベーションを1%高めることができれば、社会や地域はもっとよくなる」という想いが確立され、国や自治体同士がしなやかに連携できるよう、全省庁の官僚と47都道府県の地方公務員が参加しつながる活動を草の根で広げている。
 その脇氏の想いに共感する仲間は増え続け、2017年11月に開催された第10回では、渋谷ヒカリエを会場に、公務員600名、家族100名、学生100名の計800名以上が参加するという規模に拡大。これまで全国で様々なネットワーク活動が行われてきているが、これだけの集客力をもった企画は他に類をみない。
 また、よんなな会も東北OMと同じように「よんなな〇〇会」という派生グループを生んでいるが、地域版(例「よんなな北海道会」)の他に、他分野におけるネットワーク構築の流れまで生んでいることはこれまでになかった流れとなっている。「よんなな人事会」「よんなな体育会」、その他にも家業会、高専会、お坊さん会などなど、「公務員」という職業の枠を越え、「よんなな」という共通キーワードのもと、官民にかかわらず様々なネットワーク活動が生まれている。

 このように、ネットワーク活動の変遷を改めて振り返ってみると、「自主研究→政策立案&資質向上」をめざす仲間が集うという、自治体の仕事の枠組みの中でより良い成果を生み出す職員の醸成というスキームから、徐々に官民の枠を越えたネットワークづくりに主眼が移行してきている。これは時代背景の変化によるところが大きいと考えられ、元々官が大きい時代には職員の政策立案力が高いことがより良い地域作りに直結しやすかった時代から、行政だけではこの人口減少で過疎化が進む街への対応や、AI、IoTなど急速に進むIT化へ対応することはもはや不可能な時代へと移り変わってきた証左といえよう。

(文=大和市 坂本勝敏)

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