コラム

自治体職員ネットワーク活動の未来-坂本勝敏#3

坂本さんコラム

 これまで、ネットワーク活動の変遷、次に効果と成果について述べてきたが、最後に自治体職員によるネットワーク活動の未来について考えたい。

1.ネットワーク活動の構造的性質

 未来を考えるにあたって、まずはこれまで多くのネットワーク活動、中でも学びを軸において活動している自主研とかかわりをもってきたことで見えてきた活動の構造的性質を紹介する。
 ネットワーク活動の多くは何かしらの課題解決をめざし、個人ないしは少数の強いリーダーシップのもと立ち上がる。活動当初は、そのリーダー達が中心となって魅力的な学びの場やつながりの場が設けられ、概ね目論見通りの運営がなされる。その順調な運営のもと、参加者同士の絆も深まっていく。このような立ち上げ当初の時期を「ハネムーン期」とする。
 安定した運営体制のもと、順風満帆に質の高い学びが続く。それにより、学びは広がり、質も深まる。ハネムーン期から参加している常連メンバーにとってはますます有意義な活動となるが、逆に言うと初歩的な学びの機会が失われているともいえる。ここで生じる"常連メンバーが学びたいこと"と"新しい参加者が学びたいこと"との溝は時間経過とともに広がっていきやすく、結果として新参者の参加ハードルが高まっていきやすい。それにより、参加メンバーが固定化し、活動がマンネリ化しやすくなる。
 また、活動を牽引してきたリーダー達が、結婚、出産といった家庭的事情の変化や、多忙な部署への人事異動などにより、ネットワーク活動に時間を割く余裕が失われ、活動が停滞することもある。
 こうした要因により活動は停滞しやすい。この停滞時期を「倦怠期」とする。この倦怠期を上手く乗り越えることができるとそれ以降活動が安定して継続する「安定飛行期」に移行することができるが、乗り越えることができないと、活動が徐々に停滞し、そのまま「終焉」を迎えてしまうことにつながる。

 ここまでの話で着目すべきは、倦怠期は活動の質の高低にかかわらずに迎えるということだ。そのため、ネットワーク活動、中でも特に単一組織内での自主研は、時間経過に弱いことから、立ち上げよりも継続が困難といえよう。
 なんか暗い話のように聞こえるかも知れないが、活動するにあたってこうした性質を予め抑えておくことで、より適した運営手法を考えることができるので参考にしていただきたい。なお、活動の目的達成のために継続を意識するのも大切だが、むしろ新しい活動が立ち上がることにもっと着目すべきと筆者は考える。同年代だからこそ共感しあえる課題意識はあるはずで、それを自分たちで解決に向けて立ち上がる、そんな組織風土があることが最も望ましい姿ではないか。それというのも、活動により個人が得られる効果は、学習会等にただ参加するよりも、企画運営の立場で得られる経験値の方が格段に大きいから。

2.安定飛行期に向けて

 時間経過に弱いといっても、活動が継続して実践されている事例もある。そこで、それらの事例を活動目的別に紹介することで活動のヒントを見出してみる。
 めざす成果を「政策提言できる人材の育成」や「グループとしての政策提言」としている、政策法務等の“自主研究活動系”のグループは、時間経過とともにより学びが深めていく。参加者同士が切磋琢磨しながら研究することで、政策構築スキルは向上し、組織によっては実際の政策提言につなげることもできる。一方で、参加ハードルは時間経過とともに高くなりやすく、新しい参加者が入りづらくなる傾向は否めないため、その点の工夫が求められる。
 学びを通して自己研鑽を重ねていく“自主研修活動系”のグループは、前述の"常連メンバーが学びたいこと"と"新しい参加者が学びたいこと"が時間経過に比例して乖離していきやすいため、グループの活動目的を明確にし、ある意味割り切った運営手法が求められる。
 自主研修の一例として、高い質の学びの場を提供しつづけるケースがある。魅力的な講師を呼び続ける主催者側の努力と、組織内におさまらずに広く参加者を募るような運営手法により活動を継続している。
 もう一つ自主研修の例として、会の活動目的が組織内人材の底上げをめざしているケースでは、グループ参加への声かけは広く行うも、一定のハードルを設けるなどの線引きをし、それを乗り越えることができた人を仲間に引き入れるという試みをしているグループもある。そうすることで、学習会の質を引き下げることなく、常連と新参者が互いに刺激しあい活動を活性化させている。
 続いて、学びというよりも、対話する場、つながりの場としての活動を紹介する。こうした活動の場合、場を盛り上げるために定期的に企画モノをカンフル剤的に挟みこむことはあっても、基本的には参加者の多寡で一喜一憂せず、そこに場があるということに価値を見出して活動を継続している。
 最後に、都道府県単位や地方単位でのネットワーク活動については、発展させ続けることが大きなポイントとなっている。具体的には、新しい参加者にターゲットをあてる、新しいエリアに活動を広げる、など攻めの姿勢で動き続けることで会が、継続的に発展していく。ただ、攻め続けるには、強い想いとそれを実行する体力が必要だ。

3.ネットワーク活動の新たな可能性

 積極的に街を衰退させようとする自治体が存在するかと問われれば、誰もがノーと応えるだろう。それにもかかわらず、地域活性を銘打ったプロジェクトが各地で失敗を繰り返している。それが意味するところは、自治体だけでどうこうできる時代ではなくなってきているということではないか。それだけに、街の活性化をめざし、地域においてイノベーションを生みだすために、人と人のつながりがこれまで以上に求められるが、ネットワーク活動がその一役を買うことができる。
 茨城県結城市、古河市、栃木県小山市、下野市、栃木市、野木町の職員が白鷗大学に集結して開催している「地域活性化研究会STONY」というグループがある。このSTONYでは定期的に各市町が持ち回りで話題を提供し、質疑応答していく勉強会を開催している。市民協働に関する部署の職員が多いという要因もあり、紹介された事例を参考にし、仕事で実践されていることもあるという。
 そのような実践的な活動がされている中、結城市では地方創生IT化推進事業に取り組むことになった。その事業実施にあたってはSTONYで培われた人脈が活かされ、結城商工会議所に加えて、白鷗大学、ヤフー株式会社とも連携することができた。オフサイトの活動で得た人脈がオンの仕事でも活かされた好事例であろう。
 今後、自治体が自らの限界を認識すればするほど、外部とのつながりが必要となり、それにあわせて異業種交流的なネットワーク活動の場は、今後ますます求められていくことが考えられる。
 ただ、いきなりそうした場に越境し参加するにはハードルが高いと感じる人も多くいることだろう。これに関して、さいたま市職員の島田正樹氏はブログの中で次のとおり主張している。「庁内勉強会のような自主研活動は、公務員としての自己研鑽やネットワークづくりの場としては最終目的地ではなくて、あくまで旅立ちの街だと思っていて、そこをキッカケに、もっと広い世界に出て、社会に直接影響を与えるような活動に踏み出すことが、より高いレベルでの自己研鑽とより広くて多様なネットワークづくりに繋がると考えています。但し、旅立ちの街は誰にも必要な場所。」このように、ネットワーク活動の場は越境レベルに応じて、重層的になっていることが望ましい。

4.今だからできること

 政策提言につながる研究的な場からゆるやかにつながりが生まれる場まで、ここ数年の間に全国各地で多種多様なネットワーク活動が立ち上がった。SNS等を通じて情報が拡散されやすくなったという環境要因もあるが、このままではマズいと危機感をもった自治体職員が、主体的に動き始めた結果といえるだろう。
 このような流れを一過性のものとせず、逆に推進していくためには、「ネットワーク活動によって生まれる組織・社会への成果を“見える化”し、それを発信することで活動の価値を高める」これが有効な手段の一つと筆者は考えている。
 そうした活動の成果を“見える化”するためのトリガー機能をめざし、来たる 12 月1 日に東北まちづくりオフサイトミーティングの運営委員である後藤 好邦氏らとともに「(仮称)全国ネットワークサミット」を開催する。
 全国各地で活動している同志が一堂に会し、組織や地域により良い成果を残すために活動を通して我々は何ができるのかを話し合う。そして、それぞれのネットワーク活動が生み出す成果をコミットメントしあうことで、自治体職員によるネットワーク活動全体が発展的に次なるステージに入ることをねらっていきたい。

 最後に、ここまで 3 回にわたって自治体職員によるネットワーク活動について書かせていただいたが、こうした活動が少しでも多くの自治体職員に広まり、また地域をより良くしたいと思っている方々に関心をもっていただくための一助になることを願う。

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