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総務省消防庁コラム1

事例を知る 防災

LINEアニメーションスタンプを活用した新たな広報手法[大阪府 堺市消防局]

(記事提供=総務省消防庁 広報誌『消防の動き』

はじめに

 堺市は、大阪府の中央部南寄り、大和川を隔てて大阪市の南に位置し、地形は大別して西部海浜の平坦地と東南丘陵地帯からなっており、西部臨海地域には堺・泉北臨海工業地帯が、東南部丘陵には泉北ニュータウンをはじめとする大規模住宅団地が広がっています。さらに、世界最大級の陵墓である仁徳陵古墳や、東洋のベニスと称された中世の面影を今にとどめる堺旧港、堺旧港灯台など、歴史遺産・文化遺産が多く、町を彩るアクセントとなっています。特に、仁徳陵古墳を含む「百舌鳥・古市古墳群」は、平成29年(2017年)7月に国内推薦資産に選定され、平成31年(2019年)の世界文化遺産登録を目指しています。
 なお、堺市消防局(以下「当局」という。)は、堺市と消防事務の委託を受けている高石市を管轄としており、管内人口約90万人の「安全・安心」に取り組んでいます。

管内区域図

管内区域図

仁徳陵古墳

仁徳陵古墳

新たな広報手法のターゲット

 当局では、各種イベントや訓練などの機会を捉え、消防防災に関する広報活動や教育を実施しており、特に小学生を対象とした消防音楽隊による防災教育である「音楽鑑賞と防災のおはなし」や高齢者を対象とした防火訪問に力を入れています。
 その反面、中高生及び大学生を対象とした広報活動や教育などはあまり実施できておらず、当該年齢層への広報手法が課題でした。そこで、昼間の市外への流出人口(15歳以上の通勤・通学者数)が流入人口を大きく上回っているという当局管内の特徴を踏まえ、昼間の地域防災力の空白をカバーしてもらうことを目的として「市内の大学に通う大学生」をターゲットとした広報手法について、大学生と共同して研究を行うこととしました。大学生が、災害防除に係る知識と技術を身に付けて地域防災力の要となれば、自主防災組織や消防協力事業所とともに大きな力となることは間違いありません。

取組内容と成果

 大学生のニーズを把握するため、従前より取り組んでいる救命講習、消防音楽隊による広報活動及び機関誌やSNS等の広報媒体等の消防広報について、当局管内にある大阪府立大学の協力を得て、大学生の視点から、大学生が消防防災への関心を高めるための具体的な方策として次の3点について検討を行い、それぞれ意見・提案がありました。

⑴SNSを活用した身近で親しみやすい雰囲気作り
 「堺市消防局facebookタッシー」に、実際に働いている消防士を取り上げ、24時間勤務の様子や仕事にまつわる様々なエピソードを取り上げることで、消防がより身近に感じられるようになる。
⑵消防インターンシップの導入
 普段見ることのない施設や装備、日常業務や各種訓練の見学及び体験を通じて、消防に対するイメージ向上や就職先候補としての宣伝効果が期待できる。また、自衛消防訓練指導を見学したり、避難者等として実際に参加したりすることで、商業施設等の防火管理体制と従業員の任務を把握することができる。その他アルバイト先の店舗において、消火設備や避難経路の確認等、具体的な行動が期待され、地域全体の防火意識の高揚にまで展開することが期待できる。
⑶学園祭や新入生を対象としたイベントでの消防要素の取り入れ
 大学生が消防防災への興味を持つきっかけを作ることを重視し、イベントのメニューなどを工夫し、また各種イベントの実行委員メンバーに事前にそのメニューを体験してもらうことで、主催者として安全なイベント運営はもちろんのこと、イベンターとしての「発信力」にも大いに期待できる。

facebook(タッシ―)

facebook(タッシ―)

検討の様子

検討の様子

新たな消防広報

 当局では、消防をより親しみやすく身近に感じてもらうため、消防広報を担うイメージキャラクターの「タッシー」を活用し、消防の仕事や火災予防などについて情報発信を行っていますが、本取組を通じて、このたび新たな消防広報の一つとして「タッシー」のLINEアニメーションスタンプを作成し、平成30年3月1日から販売を開始しました。
 幅広い世代に利用されているLINEを活用することで、当局が発信する各種情報を知ってもらうきっかけを作るとともに、アニメーションとすることでタッシーの動きの中に啓発要素を取り入れ、スタンプを多くの人に日常的に使用してもらうことで、副次的に消防広報につながることを目的としています。また、販売収益は市の歳入となり、消防サービスの向上に資する経費として活用します。

ストーブを消してから「おやすみ」

ストーブを消してから「おやすみ」

イラスト一覧

イラスト一覧

おわりに

 本取組は、今まで実施できていなかった年齢層への消防広報のきっかけとなりました。市民の安全・安心のため、今後も引き続き大学と連携し、地域防災力の向上を図るとともに、消防広報の創意工夫に取り組んでいきます。

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