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地方自治体で働く若者たちへ 第2回:コスト意識【後藤好邦】

 地方分権一括法の施行(平成12年4月)により、自治体は国からの指示を受けず自らの判断で政策や事務の取り扱いを決定することができるようになった。自らの判断で政策を決定し実行していく権限が与えられたということは、その実行した結果に対する責任を自治体自身が負うことを意味している。そのため、自治体は政策を実行したことにより生み出された効果や成果を対外的に説明することが求められるようになり、その結果、多くの自治体が費用対効果を測るためのツールとして行政評価を導入するようになったのである。
 行政評価の普及により、私たち自治体職員には顧客志向や成果主義といった考え方とともにコスト意識が求められるようになった。このような状況を踏まえて第2回はコスト意識に対する私なりの考えについてお話しすることにしたい。
 自治体職員が重視すべきコスト意識は、大きく分けて2つあると私自身は感じている。その2つとは「事務事業や施策に関するコスト意識」と「自らの人件費に関するコスト意識」である。
 まず「事務事業や施策に関するコスト意識」とは、自ら担当する事務事業や施策の費用対効果を常に意識するということである。予算が前年度と同じであれば、より良いサービスを提供すべきであり、また、前年度と同じサービス水準を目指すならば、より予算を掛けずにサービス提供できる仕組みを考えるべきである。そして、その際、重要なことは、予算(コスト)とは、自分たちが予算要求を行なう直接事業費だけでなく、人件費や光熱水費、あるいは減価償却費などの間接経費が掛かることを意識することである。特に、自治体が行う事務に関しては、全体経費のなかで人件費の占める割合が民間に比べて大きいことから、一概に直接事業費だけでは費用対効果を測ることはできない。このように、事務事業や施策に関するコスト意識で重要なことは直接事業費と間接経費を合せたフルコストの考え方を持つことである。
 これから少子高齢化や人口減少が進展していくなかで、多様化する住民ニーズに対応していくためには、これまで行政が担っていた公共サービスについて、そのサービスを提供する担い手を改めて選択していくことが多くなっていくだろう。その際、担い手となり得るセクターごとのパフォーマンス度を測るうえでは、人件費を含めたフルコストをベースに比較しなければならない。そうでなければ、官民比較を適切に行うことができないのである。こうした観点からも、若手職員のうちからフルコストを意識した仕事のあり方を考えることが重要なのである。
 次に「自らの人件費に関するコスト意識」とは、常に自らの人件費の高さを意識しながら仕事に従事するということである。これまで行財政改革が進展してきたなかで、我々、自治体職員の人件費は確かに削減され続けてきた。しかし、それでもなお、民間に比べれば給与水準はまだまだ高く、その傾向は、地方に行けば行くほど、より顕著になるのではないだろうか。そのため、勤務時間中の仕事の質を上げることは当然ながら、時間外勤務を減らすための努力も併せてすべきである。
 しかしながら、少子高齢化や地方分権の推進などにより、年々、自治体職員の業務量が増しているなかで、時間外勤務を減らすことは不可能だと感じる人もいるだろう。このような考え方に対して、私は3つのポイントで仕事に対する意識を見直すことにより、時間外勤務をゼロとまではいかなくても、今より減らすことができると感じている。
 3つのポイントの1つ目とは仕事に対する集中力を午前中重視にすることだ。私は、その日のうちにしなければならない仕事はなるべく午前中に、遅くとも15時までには目途がたつ状況にするよう心掛けている。こうした意識を持つことで、夕方近くになってから突発的な仕事が入ってきても、焦ることなく時間内で対応することができ、必然的に定時帰宅につながっている。
 2つ目のポイントは最高ではなく最適を目指して仕事を行なうことだ。自治体職員の仕事が増えている状況のなかで、そのすべてを最高に整えようとすれば、それだけ時間を要することになる。そして、それが時間外勤務につながっていく。そのため、私は自分の人件費を意識し、費用対効果を考えながら、最高ではなく最適なレベルで仕事に当たるよう心掛けている。
 3つ目のポイントは完成力より修正力を意識することだ。資料を作成する場合、私は最初から完璧なものは作らない。レクチャーなどで上司の意見も聞きながら、より良いものに修正していくことを意識している。どんなに良い資料も最初に作ったものが最後まで修正なしにいくことはあり得ないことから、最初から時間をかけて完璧な資料を作るよりも、徐々に良いものにしていった方が効率的な時間の使い方といえる。
 これまで、コスト意識について2つの側面からお話ししてきたが、最後に、コスト意識に関して若手職員の皆さんにも実践して欲しいことをお伝えしたい。私は仕事をしていくうえで自分自身に問いかけている言葉がある。それは「自分が社長だとしたら、自分のような仕事をしている社員がいた時に、その社員に給料を支払いたいと思うだろうか」ということである。前述したように、私たち自治体職員の給与水準は決して低い水準とはいえない。むしろ、地域によっては高水準の場合もあるだろう。こうした状況のなかで、自らの給与水準に見合った、または、それ以上のサービス水準を生み出す仕事に取り組むことが重要だ。是非、皆さんも、自分自身の仕事の質を客観的に判断するため、自分自身に「自分のような職員に対して市民はお金を払いたいだろうか」ということを問いかけて欲しい。そうしたことが仕事の質を高めるきっかけになるはずである。

【後藤好邦氏の経歴】
1994年に、山形市役所にて勤務開始。納税課、高齢福祉課、体育振興課冬季国体室、企画調整課、都市政策課、行革推進課、そして現在では再度企画調整課に戻り、係長として交通政策を担当している。自治体職員が横のつながりを持つ機会を生み出すために、2009年に「東北まちづくりオフサイトミーティング」を3名で立ち上げ、会員を900名になるまで拡大させる。現在、雑誌『月刊ガバナンス』で「『後藤式』知域に飛び出す公務員ライフ」を執筆している。

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