一本釣りで優秀な人を採用する
加藤:日南市では、木藤さん以外にも、民間出身者が力を発揮している印象があるんですが、そもそも民間人を利用するに至る経緯はどういうものだったのでしょうか。
﨑田市長:私の考えとしては、普通の公募では良い人間は集まらない場合があると思っているんですよ。やっぱり、報酬が中途半端だとインパクトがなく、優秀な人材に受けてもらえないですし、単なるひとつの市の公募なんて、そもそもそれを知る機会もないじゃないですか。
となると、一本釣りしかないんですよね。県庁時代に、厚生労働省に出向して東京にいたんですが、その時に『宮崎県出身の会』という会をやっていました。その中では、公務員は私一人で、たくさんの民間の人たちと会っていました。
その中に、当時リクルートで働いていた田鹿倫基さんがいたんですね。彼は能力が高いなと思っていましたし、「民間はこうだ」と上から目線で言うわけではなく、コミュニケーション能力も高い。適性も含めて素晴らしい方だと思っていました。
私が日南市長選挙に出た時に、「民間人を入れることによって、日南の良いものを外に伝えていく」ということを公約にしていました。実は、田鹿さんには県庁に辞表を出す前のタイミングで、「俺が市長に当選したら、今の会社を辞めてマーケティング専門官として日南市に来てくれ」とお願いしました。
基本的には、そういう一本釣りでないと良い人は採れないと思っています。
尖らせることで、メディアの力を巻き込み採用をする
加藤:なるほど。商店街再生のミッションを持った、木藤さんのケースはどうだったんでしょうか。
﨑田市長:木藤さんに来てもらった時は、僕が市長になる前からもともと、公募でそういうことを民間人に任せるといいのではないかという構想があったんですよ。民間人登用というところで、私も考えが一致したし、それはその構想の通りにやりましょうと。
ただ、中途半端な公募はいけないと思っていました。先ほどお話した通り、月額90万だと銘打ったところ、当時、みのもんたさんの朝ズバなどの全国放送のニュースで取り上げられて、けっこう話題になったんですよ。
全国から333人もの多くの素晴らしいキャリアの方が受けに来られ、たくさんの分母の中から選ぶことができたのは、非常に良かったです。
実は、最終選考に残った9人が当時『アブラツナイン』と呼ばれていて、その中に「選考には落ちたけど木藤さんを応援していこう」と助けてくれる志の高い方もいて、その後、他の地域でマネージャーとして雇われた方もいらっしゃいました。つまり、それだけレベルの高い人が集まったんです。
だから、中途半端な公募をしなかったというのが、上手くいった要因です。
加藤:﨑田さんは、メディアを非常に有効に使っていると思います。
﨑田市長:やはり国内初、九州初、県内初の取り組みにすることで、メディアが取り扱ってくれるんですが、目立つ尖ったポイントをどこに作っていくかを考えます。
加藤:前例がないことをやるからこそ、ニュース価値も出てきます。
﨑田市長:そう、メディアが興味を持ってもらえることを考えます。日南のような町が普通に公募したって、簡単に人は集まらないんです。そこは、想像していたよりも上手くメディアの人に拾ってもらえました。
宴会の立ち振る舞いも審査する
加藤:先ほどの話で、優秀な方が9人集まって来た時に、木藤さんをお選びになられたというのは、どういうポイントでお選びになったのでしょうか。
﨑田市長:1泊2日でやりましたよ、うちは。
加藤:採用をですか?(笑)
﨑田市長:審査員と夜に宴会をするんですよ。審査員は地元の有力者や市役所の職員もいるんですが、その時の立ち振る舞いも審査しているわけです(笑)。
加藤:面白いですね(笑)。
﨑田市長:だから、ただ素晴らしいプレゼンテーションができる人を採るということではなく、コミュニケーション能力も重視していて、それがないと良いものは作れないという発想があるんです。
加藤:かなり斬新だと思います。その審査員である地方の有力者というのはどういう方なのでしょうか?
﨑田市長:商工会議所の方とか、自治会の代表さんです。そういう人たちと候補者の様子を見ているわけなんですよ。
加藤:採用課程に有力者の方も入ることで、その後の協力してもらえる体制にもつながりそうですね。
民間登用で大事なことは、採用後に放置しないこと
加藤:採用後に気をつけている点はありますか。
﨑田市長:民間人登用で上手くいってないことのひとつは、採用した後に放置してしまうところだと思います。そうすると、個人の能力が高くて良いアイデアがあっても、市役所内で上手く調整ができなかったり、地域と連携できなかったり、最悪の場合、孤立します。
そういう時に大事なことは、首長がその責任を負うというコミットをすることだと思っています。そうしておかないと、新しいアイデアが出てくるたびに、周りの職員が「えっ、それやっても大丈夫なの?」みたいになると思うんです。
最初は2週間に1回、田鹿さんと木藤さんと3人でランチミーティングを行い、そこで、彼らが悩んでいることや、加えて、どこの課との調整がなかなか進まないのかを聞くんです。
それを聞いて、その課に対して正面から「○○の件、やってないらしいですね」とかは絶対言わないですよ(笑)。そんなことやったら、腹かいちゃう(≒怒る)から。だから、スムーズに仕事を進めてくれるように、表現に気をつけながら、丁寧に調整することを心がけています。
また、現場では、テナントミックスサポートマネージャーの企画を発案した職員が、木藤さんが来た時から3年間、ずっと2人で動いているんですよね。彼らが結果を出しているのは、民間の強さと公務員の強さが合わさっているからです。民間側しかメディアに出てないですけど、実は両方の力があるから強いんですよ。
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※本インタビューは全7話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。
第1話 人口5万人規模の町で圧倒的な成果を上げる市長が語る
第2話 人材採用で中途半端な公募はいけない
第3話 自分自身の能力の低さを自覚している
第4話 国会議員になる気はない
第5話 ちょっとやそっとのヒットやホームランを打っても変わらない
第6話 絶対に市長になるべきだと思った
第7話 全国の自治体職員は、ラッキーな時期に仕事をしている