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地方自治体で働く若者たちへ 第4回:つながりを活かした情報収集能力を若いうちから磨いていこう【後藤好邦】

 「地方自治体で働く若者たちへ」と題し、自治体の若手職員に対するメッセージを6回シリーズでお届けする当コラムも前回で半分が終了した。前半戦は「目的意識」、「コスト意識」、「問題意識」をテーマに、仕事に対する考え方についてお話ししてきたが、これに対し、後半戦は仕事上で必要なスキル(実務能力)について述べさせていただこうと考えている。
 仕事をしていくうえでは、いろいろなスキルを身に付ける必要がある。その中には、年齢や職位が上がっていくことで必要になってくるものもあるが、逆に、若手職員の頃から身に付けておくべきものもある。当然のことながら、こちらのコラムで取り上げるものは後者のスキルである。
 1回目となる今回は「情報収集能力」についてお話しさせていただきたい。少子高齢化に伴う社会保障費の増大、人口流出に伴う人口減少や過疎化の進展、郊外型大型店舗の進出による中心商店街の疲弊など、現在、自治体を取り巻く環境は厳しさを増し、解決しなければならない課題も多種多様化している。このような状況のなか、自治体には地方創生の名のもとに地域が抱える課題を解決するための新たな政策を考え、実行することが求められている。
 しかし、今までにない新たな政策を打ち出していくためには、既成概念に捉われない柔軟な発想と、その発想の妥当性を立証するための様々な情報が必要となってくる。こうした背景から、地域の実態や住民ニーズ、国の方針や制度の概要、あるいは他自治体の動きや市場の動向など、様々な情報をいち早くキャッチできる「情報収集能力」を身に付けた人材が、今後自治体においてますます求められていくことだろう。
 情報収集といえば、私が若手職員だった頃はインターネットが未発達だったこともあり、他自治体の状況について上司から調べるよう指示を受けると、対象となる自治体への電話調査や依頼文書を発送しての照会調査などを行なっていたものだ。いずれも、大変手間の掛かる作業であり、情報収集だけで相当な時間を要していたように感じる。
 これに対し、現在は、インターネットの普及によりパソコンやスマートフォンがあれば、様々な情報を容易に収集できるようになった。そのため、上司から急に資料作成の指示があったとしても、インターネットを活用することで他市の状況などを簡単に調べることができ、これらの情報をすぐに資料のなかに入れ込むことができる。その点では、インターネットが普及することで、自治体職員一人ひとりの情報収集能力は何の努力もせず自然に高まったといえる。しかし、このような情報化が進んだ社会だからこそ、インターネットでは手に入らない情報を収集することができるか、できないかで、情報収集能力に大きな差がつくと感じている。
 インターネットで調べられる情報は誰でも入手可能である。そのため、それらの情報を用いた資料は、誰でも作成することができる。だからこそ、誰もが入手できない情報をいち早くつかむことが大切なのである。そうした情報は所属する組織にとっても大変価値のあるものであり、このような情報を収集する能力がある職員が多ければ多いほど、他部署や他自治体よりも有効性が高い政策を効率的に展開できる可能性が高くなる。それでは、そういった情報を、どのように収集すれば良いのだろうか。その答えは、つながりの活用である。
 インターネットでは手に入らない情報とは人伝に聞く情報である。具体的にイメージしていただくため、具体例を一つご紹介する。以前、私は中核市移行に関する担当をしていた。その際、中核市以上の自治体が中心市となることが認められる連携中枢都市について調べるよう上司から指示を受けたことがある。その際、いろいろと調べていくうちに、連携中枢都市のモデル都市に選定されている自治体の担当者が自分の仲間であることに気付いた。そこで、その仲間に連絡をとり、中心市となった時に受けられる財源措置の具体的な内容など、ネット上では示されていない生の情報をいろいろと聞くことができた。当然のことながら、そういった情報は政策判断を行なううえで非常に有益なものであり、これらの情報をまとめた資料を上司に提出した際、非常に満足してもらえたことを今でも覚えている。
 このように、つながりを活用することで、様々な情報が人伝に手に入る。こうした機会を増やし、「情報収集能力」を高めていくためには、自らの組織の枠を超え、他自治体や他業種、市民など、さまざまな人とのつながりを創り、ネットワークを広げていく必要がある。ただし、つながりを創るだけでは情報を収集することはできない。なぜならば、人は大切な情報を簡単には発信してはくれないからだ。そのため、つながりを絆に変える必要がある。つながりと絆の大きな違いは、そこに信頼関係があるか否かである。だからこそ、こまめに連絡を取り合い、自らも情報発信しながら「ギブ・アンド・ギブ」の精神で交流することが大切なのである。
 このような活動を繰り返し、幅広いネットワークを持つことで、情報収集能力は格段に高まる。しかし、数多くの情報が集まるような広範囲にわたるネットワークを構築するためには、かなりの時間を有する。有難いことに、私は47都道府県すべてに仲間がおり、その内訳も、国や自治体関係者だけでなく、民間企業やNPO関係者、学生や主婦など、実に多彩である。しかし、こうしたネットワークは一朝一夕にできたものではなく、10年あまり掛けてできた私の財産である。このように時間の掛かることだからこそ、若い頃から始めるべきなのである。少しずつで良い、役所を飛び越え、人とつながるための活動を始めてはみてはどうだろうか。そのような活動を実践することで、10年後、必ずや情報収集能力は飛躍的に高まったと感じていただけることだろう。

【後藤好邦氏の経歴】
1994年に、山形市役所にて勤務開始。納税課、高齢福祉課、体育振興課冬季国体室、企画調整課、都市政策課、行革推進課、そして現在では再度企画調整課に戻り、係長として交通政策を担当している。自治体職員が横のつながりを持つ機会を生み出すために、2009年に「東北まちづくりオフサイトミーティング」を3名で立ち上げ、会員を900名になるまで拡大させる。現在、雑誌『月刊ガバナンス』で「『後藤式』知域に飛び出す公務員ライフ」を執筆している。

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