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写真1事業企画を進める実行委員会(市内EATLAB)

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物語を紡ぐ「GENBA」プロジェクト(石川県小松市)「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(197)」

事業企画を進める実行委員会(市内EATLAB)

[記事提供=旬刊旅行新聞]

 ものづくりの歴史は人類とともにある。今から2300年前、縄文人たちは大陸から来た渡来人から、稲作農耕や金属加工、機織りの技術などを学び、独自のものづくり技術を発展させていった。
 こうしたものづくりは、日本各地で個性豊かに花開く。石川県小松市では、弥生時代の「碧玉」の玉つくりをはじめ、金や銅の鉱石、メノウ、オパール、水晶、碧玉の宝石群、良質の凝灰岩石材、九谷焼原石の陶石などの石の資源を見出し、高度に加工しながら豊かな地域を創造してきた。これが日本遺産「『珠玉と歩む物語』~時の流れの中で磨き上げた石の文化~」の物語である。
 玉つくりが始まった八日市地方遺跡は、現在のJR小松駅周辺である。のちに小松製作所(コマツ)本社が置かれ、2013年には、跡地に「ひととものづくり」をテーマとしたサイエンスヒルズこまつが開業した。その会議室の一角で6月上旬、「こまつものづくり未来塾」の第1回全体会議が開かれ参加した。当日は市内約40の事業所の方々が駆け付けてくれた。
 小松と言えば、九谷焼とその関連産業、石材などで有名だが、かつてはジャガード機による日本有数の紋織物産地であった。前田家ゆかりの茶の湯や菓子、酒など豊かな産業・文化も根付いている。
 九谷焼関連では19年5月、かつての九谷焼の陶石(花坂陶石)の製土工場跡に、「九谷焼セラミック・ラボラトリーズ(CERABO KUTANI)が開業した。隈健吾氏設計の建物に、製土工場、ギャラリー・体験工房・レンタル工房などがそろい、九谷焼を核とした新たな産業創業拠点となっている。

写真②オープンファクトリーのイメージ(宮創製陶所)

オープンファクトリーのイメージ(宮創製陶所)

 今回の「ものづくり未来塾」は、この輪をさらに広げ、小松のあらゆるものづくりの力を結集しようというものである。具体的には参加事業所のオープンファクトリー化を進め、産地全体のブランド化を目指している。
 小松には、日本遺産に象徴される地域の物語があるが、個々の事業所にも、創業から今日に至るまでの「工場物語」がある。実行委員長の小倉織物さんは、1895(明治28)年創業、1902(同35)年にはジャガード機による紋織を開始し、小松の絹織物をリードしてきた。世界的ブランドからも多くの注文を受けている。
 同じく実行委員の宮創製陶所さんは、14(大正3)年創業の九谷焼置物の素地を手掛けてきた。素地をつくるための「型」は誠に特徴的で、工場2階には500点を超える型が保管されている。どの工場にも、こうした固有の物語があり、話を伺うたびにワクワクとする。
 小松では11月12日から14日の3日間、全国の日本遺産認定地域が集まる「日本遺産サミット」が開催される。オープンファクトリー「GENGA」プロジェクトは、ここに照準を合わせている。小松の新たなものづくり観光のスタートである。
(日本観光振興協会総合研究所顧問 丁野 朗)

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