コラム

改正民法施行まで10か月!自治体職員が押さえるべきポイントは?

民法改正top1

(文=豊泉法律事務所 大塚 洋文)

【大塚 洋文(おおつか ひろふみ)氏 経歴】
大学卒業後、和光市役所に入庁し、約14年間勤務。社会福祉課(生活保護担当)、財政課(財政担当)、政策課(政策法務担当)に従事。市役所勤務時代に司法試験に合格、第70期司法修習生を経て、泉法律事務所に入所。地方公務員時代の経験を生かし、弁護士として活動中。

はじめに

 民法(債権関係)の大改正により自治体実務の見直しは必須です!
皆さんは、2017年(平成29年)5月26日に「民法の一部を改正する法律」が成立し、同年6月2日に公布されたことを覚えているでしょうか?
 この改正は、民法が制定された1896年(明治29年)以降、約120年もの間、実質的な改正がされてこなかった契約等に関する規定を全面的に見直すもので、改正される項目は、消滅時効、法定利率、保証、債権譲渡、定型約款、代理、連帯債務、相殺、危険負担、消費貸借、賃貸借、請負、寄託など非常に多岐にわたります。
 そして、大改正された新たな民法(債権関係)が、一部の規定を除き、約10か月後の2020年(令和2年)4月1日から施行されます。

改正の経緯等

 実質的に改正がなかった約120年間で、社会経済は、取引の複雑高度化、高齢化、情報化社会の進展など大きく変化しました。また、現行民法においては、最高裁判所の判例などに基づいて運用されている明文にはない基本的ルールが多数存在していました。
 そこで、社会経済の変化に対応し、判例等により確立された基本的ルールを明文化するための「民法の一部を改正する法律」が成立するに至ったものです。

自治体実務への影響

 民法は、私人間の関係を規律するいわゆる私法の一般法です。そのため、今回の大改正が民間企業の契約実務に大きな影響を与えることは容易に想像できると思います。
 それでは、都道府県や市町村などの自治体(地方公共団体)の実務に影響はあるのでしょうか?
 結論から言うと、今回の大改正は自治体実務にも少なくない影響を与えます
 自治体の行う租税の賦課徴収や許認可権限の行使などいわゆる行政処分については、民法が適用される場面はなかなかありません。しかし、自治体が当事者となるシステム等のリース契約や道路補修等の工事請負契約、備品等の売買契約、業務委託契約などの契約については、原則として民法の適用を受けることになります。
 最高裁判所も、公営住宅の使用関係について、公営住宅法及び条例に特別の定めがない限り、原則として一般法である民法及び借家法の適用があるものとし(最高裁昭和59年12月13日判決)、公立病院の診療に関する債権の消滅時効期間について、地方自治法に定める5年ではなく、民法に定める3年であるとする(最高裁平成17年11月21日判決)など、自治体が当事者となる契約に民法が適用されることを多くの場面で認めてきました。
 したがって、今回の大改正が自治体実務に影響を与えることは確実です。

見直しを怠った場合のリスク

 自治体実務のうち契約の締結及び履行や財産の取得、管理及び処分などのいわゆる財務会計上の行為については、住民監査請求(地方自治法242条)や住民訴訟(同法242条の2)の対象となります。
 したがって、自治体が、実務の見直しを怠り、従前どおりの実務を継続した結果、自治体に損害(経済的不利益)が生じた場合は、首長個人が損害賠償義務を負うことも含め、住民監査請求や住民訴訟の提起によりその責任を追及されるリスクがあります。
 例えば、自治体の実施する貸付制度における貸付金の貸付債権の消滅時効期間は、現行民法167条1項により10年と解されていますが、今回の改正により5年に短縮されています。仮に、自治体が、消滅時効期間が短縮されたことを把握せず、5年の間に何らの措置も講じずに貸付債権が時効消滅した場合は、違法に債権を消滅させたものとして、住民監査請求や住民訴訟の提起によりその責任を追及されることになると思われます
 今回の大改正前の事案ですが、市の納税課職員が市民税の徴収権を時効消滅させて市民税の徴収を違法に怠った事案において、同職員の財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務を怠っていたとして、地方自治法242条の2第1項4号に基づき市長個人に対してされた損害賠償請求が認容されています(浦和地裁平成12年4月24日判決・平成10年行(ウ)第16号損害賠償代位請求事件)。

 以上のとおり、民法(債権関係)の大改正が自治体実務に影響を与えることは確実であるため、各自治体においては、改正民法が施行される2020年(令和2年)4月1日までに実務の見直しを行わなければなりません

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