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民法改正top3

コラム

【民法改正】注意すべき「法定利率」「債権譲渡」「契約解除」「連帯債務」に関する見直し

(文=豊泉法律事務所 大塚 洋文)

【大塚 洋文(おおつか ひろふみ)氏 経歴】
大学卒業後、和光市役所に入庁し、約14年間勤務。社会福祉課(生活保護担当)、財政課(財政担当)、政策課(政策法務担当)に従事。市役所勤務時代に司法試験に合格、第70期司法修習生を経て、泉法律事務所に入所。地方公務員時代の経験を生かし、弁護士として活動中。

 前回は、自治体実務に最も影響を与える改正の一つである消滅時効に関する改正の内容を紹介しました。しかし、消滅時効に関する改正のほかにも、自治体実務に影響を与える改正は多数あります。
 そこで、今回は、自治体が消滅時効に関する改正以外に把握しておくべき改正として、①法定利率に関する見直し、②保証に関する見直し、③債権譲渡に関する見直し、④契約解除の要件に関する見直し、⑤連帯債務に関する見直しの内容をご紹介したいと思います。

法定利率に関する見直し

 法定利率に関する見直しでは、法定利率が、現行の年5%から年3%引き下げられ、かつ、3年毎の変動金利制が導入されました。
 この改正により、自治体が民法の定めに基づく利息を請求する場合又は利息を支払う場合の利息額が変わることになります。また、自治体の条例、規則、要綱又は契約書等において、民法の定めに準ずる趣旨で利率を年5%と規定している場合は、規定内容の変更を検討する必要があります。

保証に関する見直し

 保証に関する見直しでは、個人の包括根保証の禁止が拡大されました。具体的には、賃貸借契約における賃借人の債務を個人(保証人)が保証する契約を締結する際、保証人が責任を負うべき極度額(上限額)を定めないと、当該保証契約は無効となります。
 この改正により、今後、自治体が、公営住宅の入居者の保証人と保証契約を締結する際などは、保証人が責任を負うべき極度額(上限額)を契約書に定める必要があります。

債権譲渡に関する見直し

 債権譲渡に関する見直しでは、これまで無効と解されてきた債権譲渡禁止特約付の債権の譲渡が有効(預貯金債権を除く)となりました。
 この改正により、自治体と契約関係にある企業等は、契約書に債権譲渡を禁止する定めがあったとしても、自治体に対して有する債権(工事請負代金や各種委託料など)を譲渡することができることになります。
 そのため、自治体としては、契約締結時に債権譲渡禁止特約に違反した場合の違約金を定めておくなど、特約に違反した債権譲渡を防止する措置を講じる必要があります。

契約解除の要件に関する見直し

 契約解除の要件に関する見直しでは、債務不履行に基づく契約解除の際、これまで必要とされてきた債務者の帰責事由が不要とされました。
 この改正により、自治体は、契約の相手方(債務者)に債務不履行(納品日に商品が届かなかった場合など)があった場合は、相手方の帰責事由の有無に関わらず(例えば大災害により納品が間に合わなかった場合であっても)、契約解除ができます。
 なお、契約書において、「債務者の故意又は過失(帰責事由)に基づく債務の不履行があった場合にのみ契約を解除することができる」などの限定した解除条項がある場合は、契約書の定めが優先します(債務者の帰責事由がないと解除できない)。そのため、改正民法施行後の契約で解除条項を定める際は、注意が必要です。

連帯債務に関する見直し

 連帯債務に関する見直しでは、連帯債務者の一人に対する履行の請求の絶対効(他の連帯債務者についても履行遅滞、時効の中断などの効果が生じる効力)を定めた規定が削除されました。この連帯債務に関する規定は、連帯保証人にも準用されているため、連帯保証人に対する履行の請求の絶対効も削除されています。もっとも、絶対効に関する別段の意思表示があった場合は、それに従う旨の規定が追加されています。
 この改正により、今後、例えば、自治体が公営住宅の賃借人の未払賃料について連帯保証人に履行の請求をしたとしても、賃借人に対する時効の中断(改正後は時効の更新)の効果は生じず、賃借人に対して履行の請求をしておかないと未払賃料は時効により消滅してしまいます。しかも、主たる債務である未払賃料が消滅した場合は、保証債務の付従性(保証債務は主たる債務が存在する限度で存在すること)により、連帯保証人の保証債務も消滅してしまいます。
 そこで、自治体としては、公営住宅の賃貸借契約書において、連帯保証人に対する履行の請求の効力は賃借人にも及ぶ旨の特約(絶対効に関する別段の意思表示)を定めおくなどの対応をしておく必要がなります。

おわりに

 本記事では、3回にわたって民法改正に伴う自治体実務の見直しの必要性を述べてきました。
 自治体が実務の見直しを行うにあたっては、改正民法の内容の確認、他の法令の改正の有無の確認(特に「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」により改正されているか否か)、当該自治体の条例等の改正の必要性の検討、契約書の条項の見直し、(短期消滅時効の廃止等に伴う)債権管理事務の見直しや文書の保存期間の見直し、担当職員に対する周知などの作業が必要となることが見込まれますが、実務見直しの際、本記事の内容が参考となれば幸いです。

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