コラム

【民法改正】消滅時効に関する改正により自治体の債権管理が変わる!

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(文=豊泉法律事務所 大塚 洋文)

【大塚 洋文(おおつか ひろふみ)氏 経歴】
大学卒業後、和光市役所に入庁し、約14年間勤務。社会福祉課(生活保護担当)、財政課(財政担当)、政策課(政策法務担当)に従事。市役所勤務時代に司法試験に合格、第70期司法修習生を経て、泉法律事務所に入所。地方公務員時代の経験を生かし、弁護士として活動中。

 前回は、改正民法が施行される2020年(令和2年)4月1日までに自治体実務の見直しを行うことが必須であることを指摘しました。
 そこで、今回は、自治体実務に最も影響を与える改正の一つである消滅時効に関する改正の内容をご紹介したいと思います。

消滅時効に関する改正のポイント

 消滅時効とは、債権を行使しないまま一定期間が経過した場合に、その債権を消滅させる制度です。
 自治体の金銭債権の消滅時効期間は、「他の法律」に定めがあるものを除き、5年とされており(地方自治法236条1項)、「他の法律」には民法も含まれるとされています(昭和38年12月19日通知)。そのため、消滅時効に関する改正は、自治体実務、特に債権管理の実務に影響を与える改正となっています。
 消滅時効に関する改正のポイントは、①短期消滅時効の廃止、②不法行為債権における期間制限の解釈の見直し、③時効の中断・停止の見直しです。

短期消滅時効の廃止

 現行民法では、債権の消滅時効期間を原則として10年と定めるとともに(現行民法167条1項)、医師の診療報酬債権は3年(同170条1号)、小売商人の代金債権は2年(同173条1号)、飲食店の代金債権は1年(同174条4号)など債権の種類毎に短期消滅時効を定めています(同170条~174条)。
 今回の改正では、短期消滅時効は廃止され、消滅時効期間は原則として「債権者が権利を行使することを知った時から5年」又は「権利を行使することができる時から10年」に統一化されました。
 そして、公立病院の診療報酬債権(3年)や水道料金債権(2年)など、自治体の有する債権の中にも現行民法の短期消滅時効が適用される債権は多数あるため、短期消滅時効の廃止により、これらの債権の消滅時効期間は5年となります。他方、自治体の実施する貸付制度における貸付金の貸付債権など、現行民法167条1項により消滅時効期間が10年とされている債権もありますが、これらの債権の消滅時効期間も5年となります。
 なお、「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」により地方自治法236条1項の消滅時効期間の起算点は「行使することができる時から5年」とされており、地方自治法上の起算点と民法上の起算点(「知った時から5年」)が異なる点に注意が必要です。また、国民健康保険法等の個別法の適用により、今回の短期消滅時効の廃止の影響を受けない債権が存在(国民健康保険料の消滅時効期間は2年のままであるなど)することにも注意が必要です。

不法行為債権における長期期間制限の解釈の見直し

 現行民法では、不法行為に基づく損害賠償請求権については、「加害者及び損害を知った時から3年」で「時効」によって消滅し、「不法行為の時から20年」を経過したときも「同様」とされています(現行民法724条)。もっとも、最高裁判所は、20年の期間制限の性質について、原則として中断や停止が認められず、期間の経過により当然に権利が消滅し、権利濫用等が成立する余地のない除斥期間であるとし、時効期間とは異なるものと判断しました(最高裁平成元年12月21日判決)。
 今回の改正では、不法行為債権における20年間の期間制限についても時効期間であることが明記され、判例の解釈を変更しています。
 そして、自治体の職員が、その職務を行うについて、故意又は過失により違法に他人に損害を加えたときは、自治体は、国家賠償法に基づき損害賠償義務を負い、国家賠償法4条の規定により、当該損害賠償義務の消滅時効期間等は民法の定めるところによることになります。そのため、これまでは、最高裁判所の解釈に従い、不法行為があったときから20年を経過している場合は、除斥期間を経過していることを理由に自治体の損害賠償義務は消滅していると判断されてきました。
 しかし、今回の改正で、20年の期間制限の性質が時効期間に変更されたため、時効の中断事由が存在した場合や自治体が消滅時効を援用することが信義則違反ないし権利濫用となる場合などは、自治体の損害賠償債務は消滅しないことになります。
 したがって、今後は、自治体が20年以上前の課税誤りなどについても損害賠償義務を負う可能性があることに留意しなければなりません。

時効の中断・停止の見直し

 「時効の中断」とは、法定の中断事由(裁判上の請求、差押え、仮差押え又は仮処分、承認)があった場合に、それまで経過した時効期間がリセットされ、当該事由が終了した時から新たに時効期間が進行するものです。「時効の停止」とは、法定の停止事由(未成年者に法定代理人がないとき、天災等があったときなど)があった場合に、当該事由が終了した時から一定期間が経過するまでは時効が完成しないとするものです。
 今回の改正では、「時効の中断」及び「時効の停止」を「時効の更新」及び「時効完成の猶予」に改め、規定内容が整理されました。実質的には、「時効の更新」が従前の「時効の中断」に相当するものであり、「時効完成の猶予」が従前の「時効の停止」に相当するものとなっています。また、今回の改正で、時効完成の猶予事由として、協議による時効完成の猶予が追加されています。これは、当事者間で権利(債権)に関する協議を行う旨(支払義務や債務の存在を認める必要はない)の書面の合意があったときは時効の完成が猶予されるとするもので、合意を繰り返すことにより、最長で5年(1回の合意での猶予期間は最長1年)時効完成を猶予することができます。
 自治体の金銭債権については、現行民法が定める中断事由のほかに、自治体が発する納入通知及び督促に時効中断の効力が認められています(地方自治法236条4項)。もっとも、時効中断の効力が認められる督促は、最初のものに限られると解されているため(昭和44年2月6日行政実例)、最初の督促後に再び時効を中断するためには、裁判上の請求等による必要がありました。
 しかし、今回の改正で、新たに定められた協議による時効完成の猶予を利用することで、自治体は、裁判上の請求等によらなくとも、最長で5年間時効完成を猶予することができます

 以上のとおり、消滅時効に関する改正により自治体の債権管理が変わります
 なお、改正民法附則10条4項において、施行日前に生じた債権(その原因となる法律行為が施行日前にされたものを含む)の消滅時効期間については従前の例によるとされているため、改正民法が施行された後、しばらくの間は、同じ種類の債権であるにもかかわらず、消滅時効期間が異なる債権が存在することになるため、その管理には特に注意が必要です。

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