コラム

解なき複雑な時代に、自治体職員こそが地域のリーダーに

反町TOP

(文=反町恭一郎)

リーダーとは何をする人だろうか

リーダーという言葉を聞いて、どんなことをする人を想像しますか。
「あっちだ!あっちにすすめ!」「みんな、私に任せて!」
指示命令、管理統制、明確な計画、進むべき方向や解決策の提示…。いわゆるヒーローやカリスマ、ボスと言われるような人が何かをする様子を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。そして、このように思われるかもしれません。「リーダーシップとは、特定の素質や権限を持った一部の人のものであり、一般的な自治体職員には関係のないことだ」。あるいは、こう思った方もいるかもしれません。「住民自治の時代に、自治体職員が地域のリーダーとは何事だ」。

解なき複雑な時代

そういった伝統的ともいえる「ヒーローとしてのリーダーシップ」とは、限られた状況において有効であると考えます。それは、直面する問題に対して解がある時です。未来が予測でき、ベストプラクティスがあるなら、皆がそれを真似るように働きかけることが効率的だからです。
しかし、既に様々なところで叫ばれているように、現代の社会・経済が直面している諸問題には、解がないものがたくさんあります。人口減少、少子高齢化、情報技術の発達、地球環境の汚染。もう少し身近に言えば、私がかつて自治体職員として直面した多くの問題は、解がなく複雑なものでした。たとえば、まちづくりはその典型です。あるエリアを商業施設にするのか、公園にするのかは、そもそも唯一の正しい答えがありません。因果関係が絡み合っており、ルービックキューブのように「あっちを揃えれば、こっちが揃わない」ことがあり、目の前の解決策に飛びつくことは状況を悪化すらさせます。さらには、一旦は有効と思われる解を出したとしても、予測できなかった急速な状況の変化によって、その解がすぐに陳腐化することもあります。 こういった性質を持つ問題に対応できるかどうかが、私たちの日々の暮らしや働きの豊かさ、そして、地域や国の持続可能性を左右すると私は考えています。

これからの時代に求められるリーダーシップとは

それでは、これから私たちに必要なリーダーシップとは、どのようなものでしょうか。問題に解が無い時、私たちは、そもそも何が問題であるかを感知したり、ありたい未来を描いたりして、仮説を立て検証をせざるを得ません。多様な知見からの協力を得ながら、それらを繰り返せば、ベストはなくとも、ベターと思われる道を手探りで開拓していけます。
そういった働きかけを行うのが「ホストとしてのリーダーシップ」です。ヒーローをトップにしたヒエラルキーのシステムでは、構成員が持つ多様性や自発性、与えられた役割を超えたつながりは、規格外品を生み出すためにエラーとして扱われることがあります。しかし、ホストは、それらを複雑かつ解のない問題を解決するための可能性として最大化させようとします。

ホストとしてのリーダーシップ

ホストとは、皆が当事者として参加と貢献をしたくなってしまうような実践のコミュニティが育つ「対話と協働の場」をつくるリーダーであり、たとえば、以下のような働きかけをする者であると私は理解しています。

・ホームパーティのように、みながありのままの自然体で安心して参加でき、自由につながることができる空間の中へ迎え入れる。
・ひとりひとりが異なる動機を持っていることを明らかにし、尊重することで、自発的に行動する意欲が発揮されやすい環境をつくる。
・共有された目的に向かって、多様な視点と知恵を持ち寄り、ともに試行錯誤をするよう呼びかける。
・答えを示すのではなく、皆に問いかけることで、集合知を紡ぎ出して問題を解決していく。(そのためにワールドカフェやOST等のホールシステムアプローチやファシリテーション技法を使用することがあります)

「こうします」と指示するような統制ではなく、対話によって混沌の中から秩序が生まれるよう参加者の可能性に働きかけるのです。伝統的なリーダーシップが、工場制機械工業的であるとすれば、ホストとしてのリーダーは、生き物が自然に持つ力を活かした農業やガーデニングのようなイメージを私は持っています。
さらに詳しく知りたい方は、ホストとしてのリーダーシップが組織の実務で活かされた事例についての翻訳記事を本稿末尾に掲載しますので参考にしてください。

自治体職員こそホストとしてのリーダーに

ホストとしてのリーダーシップは、自治体職員から地域社会へと普及しうるのではないか、と私は考えています。(その前提として「ホストとしてのリーダーシップは、一部の人の役割ではなく、全ての人が持ちうる力である」という私の考えがあることを述べておきます。)。
なぜなら、地域におけるホストとしてのリーダーシップは、自治体職員という立場と親和性が高いと考えるからです。ホストとしての仕事をする際、たとえばミーティングに多様な人を招待する際に、自治体職員が持つある種の特権(社会的信用、非営利的な立場、社会の様々な領域へ立ち入ることができる権限など)は、地域の中でホストとして活躍するための大きな強みになります。

さらに言えば、私は「自治体職員がホストになり、市民がヒーローになる」という未来のシナリオを想像して、わくわくしています。それが、住民自治の実現に向けたひとつの道筋だと思えるからです。その時、解なき複雑な時代は、ピンチではなくチャンスになるのではないでしょうか。「目指すべきモデルを失って残念」ではなく、「過去のモデルに縛られることなく、ありたい未来を自由に描き、共に手づくりできることが嬉しい」という声が聞こえるかもしれません。

この数年のうちに、自治体業務のあり方が見直され、ホストとしてのリーダーシップが実務に反映されればきわめて先進的ですが、誰かがそのポストをつくるのを待つ必要はありません。もしあなたが自治体職員であれば、その特権を有効に活用して、パラレルキャリアの一つとして、ホストとしての仕事をつくりだすことができます(私がそうでした)。きっとそれはあなたの人生に、新たな楽しみや豊かなつながりをもたらすはずです。それが結果的に、解なき複雑な時代における地域の持続可能性や、住民自治による公共の質を高めていくのではないでしょうか。

・ホストの実践を学べる機会があります
2019年5月31日から6月3日までホストとしてのリーダーシップを学べる合宿型トレーニング。「対話型組開発(英治出版)」13章の執筆者クリス・コリガン氏を招きます。
http://artofhostingnagara2019.strikingly.com/

【参考】
・ヒーローからホストへ(抜粋版)オハイオ州コロンバス 市民たちのストーリー
アメリカのオハイオ州コロンバスにおいて「ホストとしてのリーダーシップ」が活用された実例集
https://www.dropbox.com/s/okzednr8bdjq0th/FHTH_抜粋20190501-2.pdf?dl=0&fbclid=IwAR0LaJoXlqsBwzdsXzXL0DmsH2xoxBnWhtYLP9apP75dVwRP4VpuRJ21C4Y

【反町 恭一郎(そりまち きょういちろう)氏 経歴】
2019年に群馬県庁を退職。現在は詩人、ミュージシャン、雑草愛好家、ハーブ園の管理人。また、ホスト/ファシリテーターとして、「おもいやりが循環するつながり」を増やすビジネスやまちづくりのために、企業や自治体、NPO等と協働し、対話を通じたリーダーシップ/組織開発にあたっている。

kyoichirou_sorimachi

▼「地方公務員オンラインサロン」のお申し込みはコチラから
https://camp-fire.jp/projects/view/111482
・地方公務員の活躍を支援する、地方公務員限定のコミュニティです
・時間、場所、費用にとらわれず、月に2回活躍する地方公務員や首長、著名人のお話を聞くことができます
・地方公務員が大手メディアに寄稿することが可能となります

▼「HOLGファンクラブ」のお申し込みはコチラから
https://camp-fire.jp/projects/view/111465
・月額500円から、地方公務員や地方自治体を支援することが可能です
・HOLGの運用の拡大、取材記事を増やすことなどを目的として利用します

※facebookとTwitterでHOLG.jpの更新情報を受け取れます。

 

ネイティブアド



頁トップへ