『地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2022』、5人目の受賞者の紹介です。
出蔵 健至(福井県福井市 おもてなし観光推進課 副主幹)
推薦者1:深谷 章史(横浜市 健康福祉局感染症対策・健康安全室健康安全部健康安全課ワクチン接種調整等担当)
取り組み概要、「すごい!」と思うポイント
自称「はみだし公務員」として本業と副業のシナジーで福井市や市役所への魅力や好感度を大幅に向上させた。
推薦文
組織からのミッション(本業)と副業をうまく連動させ、実績を上げる人が令和のシン公務員で出蔵さんはその代表だ。
大人気ライトノベル「千歳くんはラムネ瓶のなか」(チラムネ)聖地巡礼仕掛け人であり、一ファンとして作品の新たなファンを増やす布教活動を進め、市民を巻き込んだ観光誘客を実現。しかもただ来訪してもらうだけでなく、福井市の文化や食にフォーカスしたまち歩き(キーワードラリー、飲食店などのコラボ)やノベルティプレゼントを通じ、参加者と参加店舗の交流を通じて福井市の人の面白さも知ってもらうイベントも開催。ショップコラボには述べ2千人が参加し、オリジナルグッズの販売とあわせて約400万円の経済効果を達成。地元ショッピングセンターのコラボキャンペーン、全国紙・地元紙等メディアへの掲載や、紀伊国屋新宿本店等全国61店舗でのコラボポスターの掲示などを福井市の魅力発信にも大きく貢献。
なぜ、彼が交流を重視するのか。それは副業にある。福井駅前の「リノベーションスクール@福井」で改装されたビルの店舗に「スナックアフターファイブ」が毎週火曜日夜、オープンする。ママは出蔵さんはじめ全員が福井市職員。メンバーそれぞれがこの場を使って自分のやりたいことをして、「飲食店という形態を通じて、市民と語らう場を作る」がコンセプトだ。何より発想がすごい。市役所職員と話すハードルを下げるためスナックという力を抜ける場を用意したこと、テーマを設定したイベントを開催したことで今まで接する機会が限られていた市民と交流が生まれ、市に対するイメージが変わったという声やスナックアフターファイブでの飲食店運営を通じ、飲食店のニーズをがっつり掴んだことが「チラムネ」の飲食店コラボに大いに活きている。いわば副業の本業への逆輸入と言えよう。
現在は「チアダン」コラボなどのプロジェクトも進行中。彼の新たな取組にも目が離せない。
推薦者2:西澤 公太(福井市役所 福井市 提案型勉強会)
取り組み概要、「すごい!」と思うポイント
「公務員の生きづらさ」を解消するため、公務員同士の相互理解や心理的安全性を高める活動を行っていること
推薦文
公務員の場合、特に事務職はおおむね3~5年で業務内容が変わっていきます。その中で、若い職員達は自分のキャリアプランについて考え、若くして転職される方も珍しくなくなってきました。転職される方の多くは「公務員としての人生」と「自分の人生」がうまくマッチングしなかったためと思われ、職員の「自己実現」を支援することは喫緊の課題です。
このような状況の中、出蔵さんは、公務員であることを最大限に生かしながら、街に飛び出しています。現在の主な業務である観光に関する業務をはじめ、県内の若者支援や、福井県にお越しになった方のアテンドなど、街をとても堪能されています。ご自身が3人のお子さんの父ということもあって、出蔵ファミリーと街中で出くわすこともめずらしくありません。言い換えれば、子どもに自然と、まちの魅力を語っているということです。
一方、職場内でも出蔵さんの取り組みはとても貴重です。「日本ほめる達人協会(以下:ほめ達!)」と公務員が連携した取組を進めておられ、職員をほめることで心理的安全性の高い職場づくりに取り組まれています。また、県内の職員労働組合同士の意見交換の場を設けたり、福井市職員の勉強会でメンターとして、市職員に自主的な取り組みにアドバイスをされたりと、公務員業界の人材育成のため、積極的に取り組まれています。公務員らしくない公務員が、公務員のために一生懸命汗を流す姿は、今後、公務員のキャリアプランを考える上で、ロールモデルとしてぜひ多くの方にご紹介したいです。
役所からはみ出されて行動しているからこそ、出蔵さんは、いつの間にか公務員はおろか、まちにとっても、欠かせない存在になっています。なかなかやりたい仕事に配属されない公務員にあって、組織からはみ出しながら、やりたいことを着
実に実現し、自己実現を図ろうとする事例として、出蔵さんから今後も目が離せません。
推薦者3:大黒 恵理(大野市消防本部 総務課※大野市役所からの出向)
取り組み概要、「すごい!」と思うポイント
市役所の外で市民の声を聞くため、スナックアフターファイブを立ち上げたこと
推薦文
出蔵さんは2019年10月、市役所の有志数名と共にスナックアフターファイブを立ち上げました。週1回火曜日だけのオープンとはいえ、「昼は市役所で公務員、夜はスナック」という彼らの活動は、福井県内の公務員の中でもたちまち話題となりました。これから彼のすごい!と思うところを2点ご紹介したいと思います。
1.市役所から飛び出したのが「すごい!」
スナックアフターファイブは”F市役所はみだす課”の職員という設定で、「市役所の外で市役所の相談を受けてみよう」というコンセプトのもとに活動を始めました。そもそも定時の17時15分に退庁したとしても、19時の開店に間に合わせるのにどれくらいの苦労があっただろうかと思います。また「公務員がスナックだなんてけしからん」との市民からの苦情があるのではないかと心配しつつ、顔出し・源氏名で活動を始め、最終的には本名で活動していた彼らは本当に「すごい!」。
2.地域のプレイヤーが集まる交流の場を作ったところが「すごい!」
彼らが「はみだす」ことを忘れずに活動を続けた結果、スナックアフターファイブには様々な“濃い人”が集まるようになりました。公務員、会社員、学生、自営業、記者、大手企業の上役、YouTuber、ラッパー…。福井は狭いので、ここにくれば楽しい人に知り合え、繋いで欲しい人にもすぐ繋がれました。そんな貴重な交流の場を作り上げた彼らはやっぱり「すごい!」。
スナックアフターファイブは新型コロナの影響もあり、残念ながら2022年1月から無期限休業しています。アフターファイブがなくなっても、そこに集った人々は今も地域で活躍を続け、そこで培われた人脈は広がり続けています。最後に、ある取材で出蔵さんが語った一節をご紹介して締めくくります。
「公務員でも、公務員のままで、まちの中にじぶんごとを求めて飛び出してみるのも悪くないかもしれませんよ。」
推薦者4:寺井 優介(福井県 チャレンジ応援チーム)
取り組み概要、「すごい!」と思うポイント
ライトノベル「千歳くんはラムネ瓶のなか」と福井市のコラボ
推薦文
福井は今、あるライトノベル作品で熱いうねりが生まれている。その作品こそ「千歳くんはラムネ瓶のなか(通称:チラムネ)」である。
このうねりを生み出しているのが福井市おもてなし観光推進課の出蔵健至さんだ。
チラムネは「このライトノベルがすごい!」に2年連続総合1位に輝いた作品で、福井を舞台にした高校生たちの青春ストーリーである。作者が福井市出身の裕夢氏ということもあり、作品の随所に福井のスポット、グルメなどが登場する。
出蔵さんはこの作品に惚れ込み、福井市役所として作品とのコラボを事業化する前に、自分自身で、作品に出てくるスポットに自分自身の足で訪れ、いわゆる「聖地マップ」をオンライン上で制作した。(詳しくはツイッター上のアカウント「コラボの中の人」をご覧頂きたい)
そして、出蔵さんの発案・企画により、福井市として予算を確保し、チラムネ福井コラボに向けて動き出す。このコラボ実現のために、出蔵さんは自ら作者の裕夢氏、小学館の担当者、コラボの相手先の企業と全て交渉をしている。このきめ細やかさには舌を巻くものがあった。
今年の2月に「チラムネ福井コラボ」がスタート。オンラインツアー、聖地巡礼、飲食店コラボ、オリジナルグッズ販売。
そして、コラボ初日。私はそこですごい光景を見た。
県外から数多くの若者たちがチラムネの聖地を目指してやってきたのだ。私が知っているだけでも、北は東北、南は九州まで。
何よりすごいのは、熱烈なファンは何回でも福井にやってくることだ。私はここに観光の新たな可能性を見出したような気がしている。
この夏、チラムネコラボ第2弾がスタートする。出蔵さんのきめ細やかなこだわりが炸裂しているであろうコラボ企画が今から楽しみでならない。
推薦者5:野村 恒太(福井市 都市戦略部 都市計画課)
取り組み概要、「すごい!」と思うポイント
課外活動を本業に遠回りでも強引に持って来てしまうセンス。
推薦文
オフサイトでのスナック活動(!?)を、本業に引き込んでくるパワーある同僚です。
いちおう2コ先輩なんですが、僕はそこに特に気をつかってはいないので、忖度などはないことを誓います(笑)
彼とは「市役所メンバーがスタッフとなる週一スナック」=「スナックアフターファイブ(以下、「SA5」という)」をプライベートの活動として一緒に経営(?)しています。彼は、SA5の現場のフロントマンです。面倒くさがりの僕にはできない、SNSでの告知を丁寧にコツコツやってくれます。ですが、僕もやっているスナックだし、すごいポイントはそこにはないので、このくらいにしておきます。
僕がすごいと思うところは、オフサイトでのボランタリーなSA5での関係性を、本業である観光事業に強引に(!?)持ち込んだところです。
福井が舞台のライトノベルの聖地巡礼者をもてなす観光事業に、スナックのお客さんを巻き込んでいきました。呑み屋なんで、お客さんとインフォーマルな関係をつくれます。そこで出会った心ある県庁職員やショッピングセンター役員を口説き、彼らの内発的な動機にアプローチし、みんなの自主事業とのコラボ事業として、聖地巡礼者おもてなし事業を拡大させていきました。
なによりすごいなと思ったのは、コラボ先の方々が、ライトノベルを事業きっかけに読みだしたところです。読まれて作品を理解したうえで、事業を行われています。小さなたこ焼き屋店主や、福井最大の焼き鳥チェーンの店長にいたるまで。それは彼がインフォーマルな関係からのアプローチを行ったことで、人としてのつながりから生まれた事業であることに、端を発していると思います。
やはり仕事は「人」がおこなっているものなんだと、改めて気づかされました。
きっと彼のアプローチは、観光部局以外に異動したとしても、ウェットになされていくのでしょう。水商売であるスナックのように。
審査員のコメント
まちに飛び出す公務員は数多くいますが、「スナックアフターファイブ」という、誰も発想できない斬新な拠点を設けて、創造と交流を育んでいる点を高く評価します。(須藤 文彦)
仲間を作る達人。実現したい未来が明確で,そのためのプロセスや発想がとにかくエンターテイナーでした。(平塚 雅人)
アイデア力に優れている。(河尻 和佳子)
公務員の副業というこれからのテーマを、先人を切って成功させ、本業にも良い影響を与えているところがとても興味深い。(吉川 牧人)
公務員がなかなか踏み込めない「副業」を楽しみながら、そして地域のために実践しているところが素晴らしいと思いました!!(森田 修平)
出蔵 健至さん、受賞おめでとうございます!
【地方公務員アワード2022 受賞者の推薦文はこちら】
⑴荒井 菜彩季さん ⑵田中 雄大さん ⑶寺井 優介さん
⑷橋本 隆さん ⑸出蔵 健至さん ⑹東 克宏さん
⑺山中 正則さん ⑻小野寺 崇さん ⑼廣濱 学さん
『地方公務員アワード2022』全体発表はコチラ
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1979年より毎年、自治体職員を1年間、研修生として受け入れる研修制度「自治体等パブリックセクター年間研修受入制度」を実施。座学、OJT、フィールドワーク等で弊社の社員と共に働き、学び、帰任時には首長に自主提案を行う。観光や広報に限らず、幅広い分野部署で活躍できるプロデューサー人財の育成を目指す。
NECグループの社会ソリューション事業をICTで担う中核ソフトウェア会社として、社会やお客様とともに、先進技術とイノベーションで新たな価値を創造し、持続可能な社会を実現します。お客様の課題を解決する従来の業務システム開発/業務PKG提供に加え、共創を通じて社会課題を解決する社会価値創造ソリューションに取組んでいます。
「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」をミッションに掲げ、企業とメディア、生活者をつなぐインターネットサービス「PR TIMES」を運営し、地方自治体300市区町村を含む6万5000社超が利用。地域情報を流通させる為の枠組みづくりとして、42都道府県で銀行、メディア、自治体と提携をし、各地域事業者の情報発信を支援しています。(R4年5月時点)
不動産・住宅情報サイト『LIFULL HOME'S』のノウハウを生かした全国版空き家バンク『LIFULL HOME’S 空き家バンク』の運営をはじめ、地方移住マッチングサービス「LOCAL MATCH」の運営や空き家等の地域課題を解決できる人材の育成を目的とした『LIFULL地方創生 スクール』を開講するなど、空き家問題の解決や地域活性のための取り組み等を行っている。
日本最大級のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を運営し、インターネットを通じて今ある課題を解決するだけではなく、未来志向で新たな希望を作り出すことにも挑戦していきます。また「Yahoo! JAPAN」の行動ビッグデータを活用し、住民理解や観光課題等の自治体課題解決のご支援するデータソリューション事業を展開しています。
ビジョンは「自立した持続可能な地域をつくる」。2012年4月に創業、同年9月に国内初のふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を開設。18年東証プライム市場の株式会社チェンジとグループ化。現在、行政DX化支援をするパブリテック事業や地域経済循環を促す地域通貨事業、電力の地産地消を目指すエネルギー事業を展開。
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地域に飛び出す公務員を応援するために、50人を超える首長が参加。過去4回にわたって「地域に飛び出す公務員アウォード」を主宰。過去の受賞者プレゼンやサミットの内容はこちら。
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