面識がない中でアプローチ
加藤:MOBIOの成果が生まれているなかで、課題はなかったのでしょうか?
領家氏:手応えはあるんですけど、何をしているか聞かれた時に答え辛かったんですよね。いろいろやっているので、全体としてわかりにくい。だから、活動について、なにか分かりやすい旗を立てる必要があると思っていました。
2012年の9月に、KNSのイベントで東北大学の福嶋路先生が登壇されて、ニューオリンズで起きたハリケーン・カトリーナのあとに、エコノミックガーデニングという手法で地域を再生したという話が出てきたんです。
「エコノミックガーデニングってなんや!」と思って、横の席の人に聞いたら、ちょうど「地方経済を救うエコノミックガーデニング」という本の表紙のコピーを持っていたんです。それで、後日それを読んでみたら、MOBIOがやっているアクションが本に書かれていたんですよ。ほぼ、一緒(笑)。
これはMOBIOと方向性も同じだし、分かりやすい旗になると思って、エコノミックガーデニングに興味を持ちました。全く面識がなかったんですけど、本の最後に著者である拓殖大学の山本尚史先生のメールアドレスがあったのでメールをしたら、すぐに返事がきて2か月後に、KNSで喋ってもらいました。
15年で就労者が倍増したコロラド州リトルトン市
加藤:エコノミックガーデニングとは、どういうものなのでしょうか。
領家氏:コロラド州にある人口5万人のリトルトン市発祥で、企業誘致に頼らず、地元の成長企業を掘り起こして育成するという施策です。リトルトン市では1990年から2005年で就業者数が1万5千人から、3万5千人に増加。市の売上税収入が3倍になりました。
支援方針が「起業家精神のあふれる地元の中小企業が 長生きして反映するようなビジネス環境を創出する」。その活動キーワードが「産学公民金」で、まさにKNSの「産学公民」と同じだったんです。
しかもターゲットがなんと、10人から99人でMOBIOと全く同じ。図書館のビジネス支援機能との連携など、我々がやっていることを先取りした理論があったと初めて知って、これを旗に掲げていくことにしました。
ネットワークを広げて効果を最大化する
加藤:MOBIOの中身は大きく変えてないけども、外への打ち出し方を変えたのでしょうか。
領家氏:そうです。「変革と挑戦をする企業」を支援することは変えずに『EG(エコノミックガーデニング)おおさか』という名称と、活動指針を4つ打ち出しました。その4つは、「積極的なアプローチ」「持続的な支援」「信頼関係の構築」「協働体制の拡充」というものです。
エコノミックガーデニングでは、大阪府庁だけじゃなくて、「府内の産学公民金の支援機関みんなでやろうよ」と言って、EGおおさか推進ネットワークを作ったんです。大阪府だけでは限界があるから、「発掘と育成」は、束になってかからなあかん、と(笑)。
加藤:EGおおさか推進ネットワークには、どのくらいの機関が参加しているのでしょうか。
領家氏:今は105機関、約300人が参加するまでに至りました。大阪府内の自治体が23機関85名、他府県の自治体も9機関24名、参加しています。他にも、公的産業支援機関や、商工会、商工会議所、図書館、大学、金融機関も参画しています。
域外の地域とも連携すると、お互いが活性化するというのもEGのコンセプト。だから、府内だけでなく、全国のみんなとネットワークを広げています。
フォーマルとインフォーマルという視点
加藤:EGおおさか推進ネットワークの役割として、今後なにを期待していますか。
領家氏:これからは、企業の経営課題目線でのミクロな支援と、その経営課題を解決する方法論を確立する必要があると思うんです。ネットワークが拡大していくことで、それらを実現していくことを期待しています。
それと、ひとつ大きいのは、EGおおさかで実施している「地域コンシェルジュ研修」という人材育成。EGおおさかでは、フォーマルなネットワークでありながら、個人の参加もOKにしている。こういった活動に共感していても、個人でないと参加できない人や、逆に、まず組織として送り込まれてくる人も当然います。様々な動機の人が混在するなかで、研修では、「個人の課題意識と組織のミッションの間でどう動くのか。」それらを個人個人が模索する機会を提供しています。
組織人として、人事異動は避けられません。そんな時、同一機関で、その意思を継承できなくても、このネットワークのどこかで灯がともり続けていれば、聖火リレーのように、イズムを継承できるのではないかと思っています。
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※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。