日本企業は優秀な人材を獲得できるのか?
日本企業に「雇い負け」のリスク
(記事提供=METI Journal )
もはやダイバーシティは企業の社会的責任にとどまらない。グローバル競争に生き残るため、いや参加するためにさえ最低限クリアしなければならない必須条件になった。わが国の生産年齢人口が右肩下がりを続ける中、女性や高齢者、外国人だけでなく、さまざまなバックグラウンドを持った多様な人材をどれだけ多く引きつけられるのか。多様な才能が反応し合うことでイノベーションを引き起こすことが、日本企業が競争力を取り戻すためには欠かせない。ただ現状はまだまだ厳しい。
本気度が問われるのはこれから
大企業が女性の活用に乗り出してから久しい。男女雇用機会均等法が制定されたのが1985年。すでに30年以上がたっている。1999年には男女共同参画社会基本法が施行され、ビジネスの第一線で活躍する女性の姿も今では珍しくなくなった。
しかし企業の本気度が問われるのは、むしろこれからだろう。「女性の活用」という社会的要請に対して、受け身的に、もっと露骨に言えば「形式的」に応えてきただけという企業が案外多いのではないだろうか。いわば「ダイバーシティ1.0」。この段階にとどまっていることの限界が、いよいよあらわになってきている。
ダイバーシティ1.0で、ありがちなケースはこうだ。まず社会や政府から女性活用を求められていることに対して、とりあえず現場で形だけ整える。成果は実感できないが、そのまま「特別扱い」として継続はする。それだけにダイバーシティの取り組みとしてはあくまで一部の施策にとどまり、全社的な動きにまでは至らない。
経営トップがダイバーシティの重要性は認識しながらも、経営の重要な問題とは理解されることなく終わってしまう。そんな悪循環にはまり込んでしまった企業で女性の真の活躍は期待できないだろう。旧態依然とした企業文化のままでは、才能ある女性だけでなく、あらゆる異質な人材をも引きつけることができない。
日系企業の人気に見劣り
実際のところ、一歩日本から出ると、就職先として日系企業への人気は決して芳しいものではない。海外(12カ国)の大卒で20代から30代の若者が自国以外の企業への就職をどう考えているかという、リクルートワークス研究所の調査(2012年)によると、日系企業に「進んで働きたい」と回答したのはわずか31%にすぎない。米国系企業の58%、欧州系企業の59%を大きく下回るものだ。
バブル期を超えた有効求人倍率を背景に人材難に苦しむ企業が、たとえ留学生など外国人の採用拡大に乗りだしたとしても、思ったようには人材を獲得できないかも知れないということだ。少子高齢で人口減少が進む日本と違って、海外には優秀な人材がまだまだ豊富。それは間違いないかもしれないが、若者にとってより魅力的な欧米の企業との競り合いに勝てないようだと、結局は「雇い負け」してしまう恐れがある。
女性比率は管理職、役員で出遅れ
日本の就業者に占める女性の割合は約43%。欧米先進国と比べ低めであることは否めないが、それほど見劣りするわけでもない。しかし管理職での女性比率になった途端に12.5%に落ち込み、これは3、4割を占める他の先進国を大きく下回る水準だ。さらに上場企業の役員では3.4%。この4年で倍増し、大企業の中でもようやく女性役員の活躍が見られ始めたとはいえ、まだまだ出遅れ感は否めない。
ただ、単なる数合わせに陥ってしまっても効果は半減する。2006年から女性の取締役比率40%以上を義務づけたノルウェーでは、法律に対応するため取締役比率は急上昇したものの、実際に企業経営に携わる執行役員はそれほど伸びなかった。そのため女性取締役比率が高い企業が必ずしも企業価値を上げてはいない。
日本では外国人の人口も限られるため、当然のことながら外国人就業者もわずか。そのためダイバーシティを掲げながらも、少なからぬ日本企業では昔と変わらぬ、日本人男性の正社員を中心とした均質な文化がまだまだ根強く残っているのが現実だろう。その殻を自ら大胆に破らない限り、多様な人材は集まらないし、多様な価値観が社内に広がることもない。
PwCによる世界主要企業の最高経営責任者(CEO)調査によると、ダイバーシティ経営によって得られた恩恵に、91%が人材の獲得、85%が業績の向上を挙げている。経営トップだけでなく、管理職や従業員に至るまで、最優先の経営課題としてダイバーシティに継続的に取り組むべき時代がすでに到来している。
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