主張・意見

【ラグビー日本代表ヘッドコーチ・ジェイミー・ジョセフ氏】異文化コミュニケーションは難しくない!

ラグビー日本代表ヘッドコーチのジェイミー・ジョセフ氏

ラグビー日本代表ヘッドコーチのジェイミー・ジョセフ氏

(記事提供=METI Journal )

「選手はチームでプレーするプライドを感じている」

 体が大きく力が強いフォワードや、小柄なスクラムハーフ、足が速いバックスなど、多様な選手が活躍するラグビー。加えて、代表チームにさまざまな国籍の選手が選ばれるのも、他の競技にはない魅力の一つだろう。2019年のワールドカップ日本大会に向けてチーム作りに取り組む、日本代表ヘッドコーチ(HC)のジェイミー・ジョセフ氏に、ラグビーとダイバーシティの関係などについて聞いた。

いろいろなタイプの選手が必要

 -ラグビーは小柄な選手から大柄な選手、器用な選手からパワーのある選手まで、多様な個性をもった選手が集まっています。チームを一つにまとめるために、指導者として留意していることは。

 「ラグビーは(1チーム)15人で戦う競技だが、全員足が速いわけではない。パスのスキルが求められる一方、フィジカルな選手、非常に強い選手も必要になります。いろいろなタイプの選手が一つの組織の中に必要だというのがラグビーの面白さ。私にとってはそれが普通のことに思ってきました」

 「そういう中で指導者として考えていること。それは、チームに対するゲームプランを作り、なおかつそのゲームプランを選手たちが遂行することによって、『勝てるんだ』と信じられる。そういう風にもっていくことが、一つの仕事だと思っています。ゲームプランを落とし込むこともそうだし、ゲームプランの中で一人ひとりの細かい責任や仕事というものをきちんと果たしてもらい、効果的に遂行されるようにしていくことが必要です」

「『勝てるんだ』と信じられる。そういう風に持って行く」(ジョセフ氏)

「『勝てるんだ』と信じられる。そういう風に持って行く」(ジョセフ氏) 

 -ラグビーのナショナルチームは外国人選手も一定の要件を満たせば、母国以外の代表になることができ、ダイバーシティの例としても話題にされます。代表として戦うための心構えやプライドについてどう考えますか。

 「国を代表するプライドというのは、イコールそのチームでプレーするプライド。ひいては個人がそこでプレーできるというプライドというようにつながっていくと思います。ラグビーにおいては、3年以上住んでいれば外国人でもその国の代表になれます。3年あればその国の文化を知ることができるし、代表として大切なことだと私は思っています。私自身が日本の代表になったときも、日本の文化を知ること、ないしは日本の選手を知ることによって、その中で自分がプレーをすることに対する誇りを感じられるようになったからです。自分の母国の代表を務めるのと、日本代表になるということはイコールではありません。それでもチームでプレーするプライドというものを感じてやっていました。恐らくラグビーの選手に関してはそこの部分が大きい」

言葉はそこまで重要ではない

 -企業においてもグローバル化が進み、今では職場に外国人がいることも珍しくありません。異文化同士のコミュニケーションで大切なこととは。

 「私自身は、違う国の選手たちが集まっている中でコミュニケーションの難しさを実はあまり感じたことがなくて、どのチームでも皆がスムーズに溶け込んでいたと記憶しています。(外国人選手が)代表になる時点で、その国の文化や言葉などに関してベースとなる理解を彼らが持ってくれているので、そんなに注意しなければならないことはありません。言葉の問題があっても、日本人の選手が間に入って助けるなどすれば、解決策は何かしらあるでしょう」

 -言葉の壁はあまり心配する必要はないと。

 「言葉というのは明らかにコミュニケーションしていく上での大事なツールの一つ。しかし、特に1対1のコミュニケーションを考えたときには、そこまで重要ではないと考えています。もちろん、さらにもう一歩踏み込んで、その人をより理解するためには、言葉が助けてくれる部分は大きい。そういう意味では私自身ももっと日本語を勉強しないといけないのかなとは思います」

「かなり戦略的、戦術的な話のもっていき方だと思いますよ」(ジョセフ氏)

「かなり戦略的、戦術的な話のもっていき方だと思いますよ」(ジョセフ氏)

 -スポーツのメンバー選考と同様に、企業においても自分の処遇などに不満を持つ社員がでてきます。部下に処遇を納得してもらい戦略を遂行してもらうために、指導者がなすべきこととは。

 「自分たちがまず戦略を立てて、それをリーダーグループと共有し、そしてプレーヤーに落とし込んでいく。その過程で、選手を選考する必要が出てきます。一回のミーティングですべてを理解させようとは思わないで、何回かかけて選手たちに『このゲームプランでいい』と信じられるようにしてあげることを大切にしています。キャンプ(合宿)などは重要な機会で、私たち(指導層)がどういうコーチングをしようとしているのかを、選手たちがより深く理解してくれます。これはビジネスの世界も同じだと思います。戦略を理解してもらった上で、それぞれのゲームの局面において、各選手が自分はどんな役割を持っていて、どう動くことが求められているのかをきちんと話をしていきます。かなり戦略的、戦術的な話のもっていき方だと思いますよ」

プライドと勝利へのこだわり

 -ラグビーでは選手一人ひとりについて、ボールを持って何メートル前進したかや、タックルを何回成功したかといったように、細かくデータをとっています。一方で必ずしも数字に表れない評価ポイントもあると思いますが、そのバランスについては。

 「それはとてもいい指摘だと思います。(6月に日本国内で行われた)アイルランド代表との初戦は、エリア獲得率は半分近くだったのに、50点も取られました。ボールの保持率も49%、ラインアウトに関しては100%の成功率、キックの成功率も良かった。それなのになぜ、あれだけ点数を取られたか疑問ですよね。2戦目は、数字の上では良くなった部分もありますが、やはり勝つことができなかった。では何が足りなかったのか。恐らくプライドであったり、勝ちに対するこだわりだったりというところだと思います。そういうものを見極めるために、統計ばかりには頼れません。試合中の姿勢であったり、プレッシャーを受けたときにどんな反応をするのか、大事な意思決定をしなければならないとき、それができているのか、といったところをよく見ています」

「イライラしてしまうこともありますが、待つしかないということを学んだ」(ジョセフ氏)

「イライラしてしまうこともありますが、待つしかないということを学んだ」(ジョセフ氏)

 -日本人が主体の組織を外国出身のトップが指導するうえで、心がけるべきことは何ですか

 「日本では何か決める時に、すごく時間を長くかけます。待たされている間、イライラしてしまうこともありますが、これは待つしかないということを学んだんですね。そこはいつも忘れないようにしています。ただ自分のプラン立てや時間の使い方を工夫することで、思ったよりすんなり決定されることもあります。もともと忍耐強い方ではありませんが、コーチとして日本に戻り、うまく対応できるようになりました」

【略歴】
ジェイミー・ジョセフ(Jamie Joseph)。1969年ニュージーランド生まれ。 オタゴ大学卒。ラグビーニュージーランド代表(オールブラックス)などを経て、1995年に日本のサニックス(現宗像サニックスブルース) に加入。1999年には日本代表に選ばれた。2011年スーパーラグビー・ハイランダーズのHCに就任し、2015年シーズン優勝。2016年9月より現職。

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