インタビュー

【生駒市 田中明美 #3】国が示す類型はあくまで典型例

田中明美3

国が示す類型はあくまで典型例

加藤:生駒市の介護予防・日常生活支援総合事業の特徴はどこにありますか?

田中氏:国が示すガイドラインの中に類型は示されてはいるのですが、それはあくまでも典型例です。個別の事業は市町村が地域の課題に即した事業を独自に作る必要がある。けれども、市町村の職員には国のガイドラインとか施策の読み取り方が分からない人たちが、あまりにも多い気がします。それは、きっと人員配置にも課題があり、2~3年でこのような複雑な仕組みを理解し、独自の解釈を加えながら施策に反映させるには限界がある気がします。

 そうすると、書かれている類型の範囲の中で収めようとする。予防給付から事業に置き換えただけという市町村もまだまだ多いのではないでしょうか。生駒はそこが大きく違っています。高齢者の総合相談窓口である最も地域の高齢者のことを知っているのは地域包括支援センターです。彼らとともに本市の高齢者支援のあり方について、複数年に渡り議論を重ねながら事業の整理・創出を行ってきました。

プログラム参加は延べ約30,500人

田中氏:介護予防・日常生活支援総合事業は、具体的には、ふたつの軸となる事業に分かれています。要支援認定者、要支援認定相当者が利用出来る「介護予防・生活支援サービス事業」と、65歳以上の方なら誰でも利用出来る「一般介護予防事業」です。

 前者である「介護予防・生活支援サービス事業」の対象者は、第1号被保険者で「要支援1・2」の認定者及び基本チェックリストにおいて「要支援1・2」相当の状態像とされた虚弱高齢者が対象です。

 生駒市では、この2つの軸となる事業をデザイン化し、短期間・集中的にリハビリなどを行う「集中介入期」の事業。
 運動プログラム、口腔機能や栄養状態の改善を複合的に行うプログラムや転倒予防に着目したプログラム、従前から提供されている介護予防通所介護や訪問介護や緩和型サービスA等の「移行期」の事業。
 レクリエーションや会食を通して、外出の機会を増やす通所型サービスBや、住民主体の介護予防事業を展開する「生活期」の事業と、大きく高齢者の心身の状態像を3つに分けてプラグラムを実施しています。

 「介護予防・生活支援サービス事業」と「一般介護予防事業」の行うプログラムの参加人数は延べ約30500人(従前相当サービスを除く。)になります。

なんでも行政がやれば良いわけではない

加藤:具体的に、どのようなプログラムを実施されていますか。

田中氏:「介護予防・生活支援サービス事業」では、筋トレやバランス・持久力の向上と環境整備を行うパワーアップPLUS教室(通所型・訪問型サービスⅭ)など、自立支援を中心とした事業です。

パワーアップPLUS教室「通所型サービスⅭ」

 「一般介護予防事業」は市が実施する体操教室、認知症予防や重度化防止に向け脳を活性化する事業などがあります。前者のように筋トレの教室もありますが、無料で実施している教室のほか、実費負担を取りながら実施している事業もあります。なんでも市町村が人やお金を出して無料でやるわけではありません。民間のサービスであっても、それが良いものなら、市民の方が健康寿命を延ばすために、そのサービスをセルフケアとして有料で利用することも大切です。
 社会福祉法人、社会福祉協議会、それと、一般企業だと公文の学習療法を導入しながら一緒に事業を進めているのもそういう考えからです。

 これからの時代は、民間のサービスを買える人にはそのメリットを理解し購入いただく。公共は公共、互助は互助、自助は自助という整理をしていくことが大事だと思います。

メンバーから新しいプログラムの提案が上がってくる

加藤:数多くのプログラムの企画はどのように生まれるのでしょうか?

田中氏:生駒市は一般介護予防事業の種類が多いことも特徴ですが、その多くの事業を考案したのは、予防推進係長です。例えば、脳の若返り教室(公文学習療法)の拡充やコグニサイズ教室、認知症予防教室などは、彼の考案です。
また、いきいき100歳体操が広く地域に展開できていなかった課題についても、係長を中心に地域福祉を担う社会福祉協議会の第1層生活支援コーディネーターとともに係員と協力し合いながら、平成29年度は仕組みを変え、老人クラブ連合会と連携強化し、16グループの取り組みだったものが、見事、56グループにまで拡充してくれました。

 普通の市町村にありがちなことだと、「今年はこの事業をしました。忙しかったです」と言って、翌年もコピーして同じことをやろうとするじゃないですか。うちの課はそうではなくて、「今年はこうやった。課題はこれだ」と状況やニーズをもとに、「次の政策としてはこれが必要だから、やっても良いですか?」と予算獲得を求めて来るんですよ。

 「もう十分忙しいのに、新たなことをしても大丈夫なの?」と私が聞くと、「1度やっているので、次はここを効率化出来るから大丈夫です」ということを返してくるわけです。話を持ってくるには、それなりの考えを持ってきてくれているので、「では、やってみようか?」って(笑)。

 だから、私は提案されたものを「やってはいけない」と言ったことは基本的にはありません。やるべき理由、やりたいと考えた背景を確認したうえで、「良いんじゃない?」という結論に至ることが大半です。その結果、プログラムが増え、市民にとっては選択肢が増える。また、プログラムの多くは住民の力を借り、住民主体で進めてきているところも大きな特徴です。

加藤:モチベーションの高い良い組織ですね。

田中氏:介護予防・日常生活支援総合事業が市町村事業として位置付けられてからは、事務作業が増え、本当に忙しくなり過ぎていますが、市民から喜んでもらえる機会も多いです。新しい事業なのでルーチンの仕事も少なく、大変さと喜びとが混在しているのでしょうけど。

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