政策研究所はまちづくりのエンジン
加藤:『未来創造みよし塾』というのはどのような取り組みでしょうか?
林町長:全国の町村では初めての政策研究所です。まちづくりを進めていく上で、政策は非常に大事だと思っていますが、改革のエンジンとして政策研究所が必要でした。
ここで、職員や住民のみなさん、そして有識者に入っていただいて、調査研究をしました。
良いまちづくりには3つの要素があると思っています。一つは良い政策を作ること。2つ目は住民のみなさんと対話をし、多様な意見の中から合意形成をしていくこと。3つ目は住民のみなさんの参画です。
この、“政策”“対話”“参画”の3つが大事です。
実際に町長になってみると、町のさまざまな主要な課題に対し、お金や時間がなくてできないことが多い。そこで政策研究所のある戸田市を視察し、すぐに立ち上げました。
政策研究所が生んだ事例
加藤:『未来創造みよし塾』から、どのような事例が生まれましたか?
林町長:日本で8つしか登録されていない日本農業遺産に首都圏近郊で唯一選定されました。
三芳町と他市にまたがる『三富新田』という歴史もあり景観も良い地域があります。そこでは300年以上前から『落ち葉堆肥農法』という農法が行われていました。非常に意義のある農法ですが、三芳の人も埼玉の人もほとんどの人が知りませんでした。そこで、多くの人に知ってもらおうと研究し、世界農業遺産や日本農業遺産に申請し、2017年に日本農業遺産「武蔵野の落ち葉堆肥農法」として認定されました。さらに、その三富新田を「いも掘りをしながら体感してみませんか?」ということで、『世界一のいも掘りまつり』というイベントを開催しましたが、こちらも『未来創造みよし塾』の提案から進めました。
一方で、「公共交通」をテーマにした研究の結果、デマンド交通が試行的に運用されるなど、大きな成果が生まれました。
実行を前提とした会議体
加藤:有識者会議は実務に反映されないケースも多いと聞きます。着実にプロジェクトが動く工夫はされたのでしょうか。
林町長:政策研究のための政策研究ではなくて、町を変えるための政策を“具体的に”作る前提で進めていたので、最初から職員の意識が違っていました。政策提言をした内容の全てではないにしろ、できるだけ活かしたいという気持ちで進めていたのではないでしょうか。また、町の直面している課題に真摯に向き合い政策研究をしたので、決定したことがすぐに反映されました。
加藤:実行につなげることが前提にあったということですね。
林町長:そうですね。たとえば観光のまちづくりだとしたら、職員と住民、それから有識者と一緒に、これからの町の観光行政の調査研究をしてもらいます。そして報告書を作り、みんなの前でプレゼンをしていただく。
まずは、できることもできないことも含めていろんな政策を提案して、その中でできるものをピックアップして、次の年の実務に反映していくという流れです。一年間で中間報告の発表もありながら、日々修正しつつ最終発表をしています。
職員の政策立案能力も高まる
加藤:職員と市民が一緒に動いていることに価値があります。
林町長: だから、協働のまちづくりとなるわけですよ。
加藤:当事者が揃っているのでハレーションが生じず、実務にそのまま反映させることができたということですね。
林町長: 調査研究をすると、職員の政策立案能力も高まります。使える政策を作れるまちづくりのエンジンになるとともに、政策研修にもなりました。
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※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。
第1話 町の財政状況を住民と共有
第2話 補助金を全廃 団体からの批判
第3話 良いまちづくりには3つの要素が必要
第4話 「おもしろい 変わっている やる気がある」職員が大事
第5話 住民の「住んで良かった」が大きな喜び