インタビュー

【中野区 酒井直人氏:第1話】役所はとんでもなく無駄なことをやっている

酒井直人1

【酒井直人氏の経歴】
1996年中野区役所に入区。最初の職場の議会事務局で議員報酬システム、議事録検索システムなどの導入を担当し、改善の面白さに目覚める。その後、文書管理、財務会計システムなどの担当を経て、当時“電子決裁率日本一”といわれた中野区役所の電子化に貢献。中野区政策室副参事(広報担当)を経て、現在、地域包括ケア推進担当副参事。
 2004年からおもてなし推進委員として改善運動に9年間関わり続ける。平成18年第4回全国都市改善改革実践事例発表会「改船なかの20丸」を開催。平成22年に自治体の枠を超えた改善運動の全国ネットワーク「K-NET」を全国の有志と一緒に立ち上げる。その後、自治体改善マネジメント研究会の立上げに参画。全国の自治体の改善運動の支援を行っている。

―民間企業から自治体に転職した方の話を聞くと、多くのケースで使っている業務システムについて不満を感じている。また、業務改善を進める部署の方が各部署の協力を得られることも少なく、業務改善が進んでいかないケースも多いと聞く。今回は、中野区役所において改善を推し進めてきた酒井直人氏に、実現された数々の改善についてお聞きした。

一般職員が利用する8割のシステム導入に関わる

加藤(インタビューアー):酒井さんは中野区役所の中でどのような改善を進めて来られたのでしょうか。

酒井氏:議員の給与システム、例規検索システム、文書管理システム、財務会計システム、そして、広報のホームページの作成システム、地図情報システムなど、今、区役所で一般職員が使うものの8割ぐらいに携わりました。システム屋さんのような感じですね(笑)。

加藤:最初に関わった改善事例は具体的にどのようなものだったのでしょうか。

酒井氏:新卒で中野区役所に入ってから3年目ぐらいの時に、区議会事務局という部署にいました。そこで先輩に任せてもらいながら、議員の報酬を払うシステムを変えました。そのシステムには確か年間200万円くらいかかっていたんですが、実際に調べて見たところ、職員も議員も給料の仕組みはあまり変わらなかったんです。それに年間200万もかけるのがおかしいと思い、民間の中小企業で使っている1本10万円くらいの給料の計算ソフトを購入しました。

役所はとんでもなく無駄なことをやっている

加藤:コストメリットは当然ありますが、業務自体に影響は出なかったのでしょうか?

酒井氏:それがむしろ、超ラクになりました。以前のシステムは例外の対応を手動でやることが多く、制度改正後にコードが合っていないからこうやって入れろとか、すごく面倒くさかったんです。

 そして、計算にもすごく時間がかかった。当時、古いパソコンだったので、計算だけで1時間かかるんですよ。それが新しい給与計算ソフトを使ったら計算自体は3秒くらいで終わっちゃう。今までなんだったのか、と思いました(笑)。

 この時くらいから、役所ってとんでもなく無駄なことをやっているように感じるようになりました。いろんなところに改善出来る余地、宝の山があると思ったんですよね。

 実は役所に入って司法試験をずっと受けていて、司法試験の勉強をしていたんです。役所入って3年目ぐらいまでやっていたんですよね。でも、「役所の仕事って面白い!」と思い出して、そこで司法試験の勉強をぱっと止めて役所の仕事に没頭しました。

加藤:今でも改善出来る箇所は沢山あると感じますか?

酒井氏:思います。どこの部署行ってもいっぱいあります。なんでこんな非効率なことやっているのだろうかと。

本当に必要な人だけが決裁すべき

加藤:影響が大きかった改善はどのようなものだったのでしょうか。

酒井氏:一番大きかったのが文書管理システムと財務会計システムです。

加藤:文書管理システムについてはどのような改善をされたのでしょうか?

酒井氏:文書管理システムについては2003年頃に行政文書を電子化し、電子決裁を導入しました。役所は決裁を回すときに、10個とか12個とかハンコがいるんですよね。部長の決裁の場合に自分の係長、隣の部の課長、隣の部の部長、さらに隣の部の部長とかって延々とハンコを押していく。簡単な決裁でも1週間とか2週間かかるんですよ。そういうのを見て「何をやっているんだろう」と思いました。

 多くの人がハンコを押すと一人ひとりの責任は薄くなります。実際、途中で押している人たちも中身をそんなにしっかり見ていない。結局、「見たでしょ?」というアリバイ目的にしかなっていない。だから、そういう事案決定規程自体をちゃんと見直していこうというのが、そのとき一番やりたかったことでした。

 電子決裁を入れるにあたっては、「本当に必要な人だけが決裁しましょう」と大きくメスを入れました。なんでもかんでも部長とか区長にあげていたものを下に権限移譲しました。担当者が起案して係長が1個ハンコ押せばおしまい。もともと、鉛筆一本買うのに課長が決裁していたんです。

 課長はすべての予算執行の管理者というのではなくて、自分の持っている施策の方向性を固めて経営していく、マネジメントしていくのが仕事ですから、いちいちすべての決裁を見る必要ないだろうと思いました。中野区役所は係長で決裁出来る範囲が広く、それは自治体の中でも珍しいと思います。

びっくりするほど やる理由の分からないことがあった

酒井氏:文書管理の事務についても必要ないものは無くすようにしました。例えば、分かりやすいのは印刷物を発行したときに、区役所の中で印刷物ごとに印刷登録番号っていうのを記録していたんです。

 ただ、そもそもその印刷をするときには事業決定起案が必要で、起案の際には番号を既に取得している。「起案の番号が分かれば、印刷登録番号なんていらないよね」と話をして止めました。

 本当にびっくりするくらい、やる理由の分からない事務が多かったんですよ。それを一つひとつ見つけて、なんのためにやっているのか、どんなメリットがあるのかと全部天秤にかけて、必要ないものを無くしていったのが文書管理システムの導入のときでした。

※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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