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酒井直人6

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【中野区 酒井直人氏:第6話】自治体職員には自分の自治体に住んでほしい

やれることを確実にやる

加藤:これから改善を進めたい役所があったら、どういうことを一番伝えたいですか?

酒井氏:周りの役所が既にやっていて、確実に出来そうなことは取り組んだ方が良いと思います。
 例えば、電子決裁や文書管理、財務会計システムをまだ導入していない役所もいっぱいあるんですよね。私達が13年前に入れて、既に大幅な効率化が出来ているのですから、早くやったほうがいいとお勧めしたいです。改善出来るのが明確なのにやらないなんてもったいないじゃないですか。

改善は“終わりなき航海”

加藤:改善は一過性に捉えられて、組織の中で浸透しないと聞くこともあります。

酒井氏:常にやり続けることが大事ですよね。改善は“終わりなき航海”のようなものだと思っています。改善をしてもまたその次の課題が現れる。とにかく目の前のものをちゃんと見て、少しでも改善出来るところは改善する。その結果を見てまた問題が生じたら、今度はそこを改善していく。トヨタの改善方式って風土になっていますよね。中野区でも風土として根付かせていきたいです。

 だから、どんな仕事でも必ず改善の余地があると思います。一般職員の場合は、その自分の担当している業務の改善、管理職であれば事業自体の改善はもちろん、職場改善や人材育成の観点からどう変えていくか、全体を俯瞰して見ることが大事だと思います。

地域の人と一緒にまちを盛り上げる楽しさ

加藤:地方自治体で働くことの醍醐味を教えていただいてもいいですか?

酒井氏:中野というまちで、地域の人と一緒にまちづくりに取り組み、盛り上げることが出来るのは本当に楽しいです。「こんなに楽しいことをさせてもらって給料をもらっていいのか」といつも思いますね(笑)。地方自治体の職員はとても幸せだと思います。

地方公務員の持つ信頼

加藤:自治体職員が課外活動をやるというのはアドバンテージがありますよね。

酒井氏:「こいつは騙してこないだろう」くらいの信頼感はありますよね(笑)。例えば、私がボランティアスタッフとして関わる中野区観光協会の業務の中で、夜の居酒屋とかの取材をするんですが、その時にいきなり「観光協会の者です」って名乗っても「あなたは誰?」みたいなこと言われるんですよ。「雑誌に載せてもいいけど、お金は払わないよ」って頭ごなしに言われたり(笑)。

 でも役所の職員の名刺を出すと、まずは、話を聞いてくれるんですよね。

加藤:公務員の持つ信用は本当に大きいので、もっと利用しても良い気もします。

自治体職員には自分の自治体に住んでほしい

酒井氏:もったいないですよね。ところで、中野区の職員で中野区に住んでいるのは2割ぐらいしかいないんです。私は自治体職員には自分の自治体に住んでほしいと思いますよ、無理してでも。だって、自分がこれから良くしようとするまちじゃないですか。

 公務員は自分の自治体に住みたくないって人が多いんですよ。

加藤:それはなぜですか?

酒井氏:役所の職員であることを住民に知られると、色々と批判されたり頼まれたりする。だから、自分が公務員だと隠している人も多いんです。でも、それはもったいないと思うんですよ。胸張ってやってほしいですよね。

お前は税金で食っているんだろ?

加藤:酒井さんが普段、嫌なことを言われることはありますか?

酒井氏:まあまああります(笑)。一番嫌なのは「お前は税金で食っているんだろ?」と言われるときですね。
逆に嫌なことと捉えるべきではないものもあります。役所の人間は自分が関係ない部署の苦情を言われることもありますが、そこは役所の代表として話を聞かなきゃいけないと思っています。区民から見たら同じ組織の職員ですから。

 自治体職員は地域で生きていくうえで、それなりの覚悟を持って苦情を受けなきゃいけない。そういう時には相手に共感をしたうえで該当部署に繋いだりしています。

苦情は言ってほしい

加藤:そういった対応を皆がしていたら、どんどん満足してくれますし、次からは直接その部署に連絡してもらうことも出来ますよね。

酒井氏:そうすることで、だんだん苦情を言わなくなる人もいます。ただ、苦情は言ってほしいんですよ。そこから区民の視点を知ることができますから。そもそも、声を聞いていること自体が強みですからね。現場のことをよく分かってない職員も多いじゃないですか。自分が事業をやっていても、直接、サービスの対象となる住民がどういうことを考えているのかリサーチしてないとか。

 やっぱり地元に住むってことは大きいですね。ごみの問題だって、いつも自分がごみを捨てていたら何に課題があるのか分かるじゃないですか。違法駐輪やたばこのポイ捨ての問題とかもそう。実際、「自分が住んでないから分かんない」って平気で言う職員もいるんですよ。

 住んだほうがいいに決まっています。税金だって収められるんですよ。覚悟を持って住まないとだめだと私は思っています。

編集後記

 圧倒的な行動力と推進力を感じさせられるインタビューだった。改善は“終わりなき航海”という酒井氏の言葉はとても素敵である。“終わりなき”というように、自治体は業務システムや決裁フロー、そして、文化のようなものも含めて改善をし続ける必要があると思うが、BPRのプロなどを重用しても良いかもしれない。その実例として、公認会計士である和光市役所の山本享兵氏は、合理的な説明のもとに、決裁フローの改善を役所の中で進めていた。

 私が感じるところでは、多くの自治体は改善を行うことによる真の価値を理解していない。これは本来トップが職員にその重要性を伝えていくべきことだと思うが、政治家は必ずしも実務に強いとは言えない。自分が実務レベルで細かくイメージ出来ないことを、組織内に落とし込んでいくというのは、相当難易度の高い仕事である。しかも、改善と掲げることが選挙で勝つための武器にはなり得ない。となると、多々ある業務の中、首長が本気で改善を行う意義は相対的に小さく、組織の徹底度もそれに比例する。

 酒井氏の話にあったように、職員が改善を進めようとしても周囲から煙たがられ、首長にも徹底的に改善を行う気がないのであれば、自治体で改善が進まないということは自明である。その中で、中野区は長期計画に沿って課長クラスが改善の責務を負うという。これは、物事を確実に進めるうえで、とても素晴らしい仕組みだろう。

 企業が経営改革を行う際に必ず最初に行うことは、不要なものを徹底して削減する改善だ。なぜなら、売上を増やすことよりも、コストを削減することのほうが実現可能性が高いからである。「改善出来るのが明確なのに、やらないなんてもったいないじゃないですか」、酒井氏がさらりと発したこの言葉は、本来、重く受け取られる言葉であるべきなのだと思う。

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※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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