インタビュー

【中野区 酒井直人氏:第4話】経営サイクルと改善を繋げる

酒井直人4 本番

3年くらいで風土の変化を感じた

加藤:おもてなし運動(顧客満足度の向上運動)の効果が出て来たと実感したのはいつ頃ですか?

酒井氏:後ろから石を投げられるような雰囲気がなくなったのは多分3年後ぐらいですね(笑)。少しずつ理解者が増えていきました。私は9年間おもてなし委員をやったんですけど、自ら手を上げなかった人は部の推薦で入ってきて、その人達は1年で辞めていくんです。でも、その1年間の間に入ってきた人達を洗脳して仲間にするんですよ(笑)。

 そのために、毎年4月におもてなし推進委員になった人達とダイアログ(対話)をして、役所の目指すべき姿と現状についてを一から語り合いました。今の区役所に足りないものを自分達の考えとして結論を出して、そこから改善のために具体的に何をしていくか決めるようにしていました。

卒業生が組織に増えていった

酒井氏:そうやって、おもてなし推進委員として活動した仲間が、毎年一定程度卒業していきました。何年か経つと、卒業生が、各部署での改善の中心的な役割を担うようになっていきました。何か、部署をまたがる改善をやろうとしたときにも、卒業生に声をかければ話が早い!なんてことも経験しました。

経営サイクルと改善を繋げる

加藤:それは素晴らしいですね。課題はありましたか?

酒井氏:課題として出てきたのが、課長職の人は「自分の部署の経営と改善は関係ない」という意識があったので、課長職を改善運動の責任者としました。具体的には1年間の自部署の経営戦略を年度の初めに立てるのですが、そこに自部署の改善運動を進めるために、具体的に管理職が何に取り組むのか、書いてもらうようにしました。3年前くらいからですね。

 普通、役所には改革・改善の部署があって、そこで改革方針を作ってそれに基づいてやっていくじゃないですか。中野区は区の長期計画とは関係ないところで、おもてなし運動をやっていたので、それを計画と連動させるかたちに出来ないかと考えました。

 何を改善するかは現場の責任者である係長級や直接の担当者が考えるんですが、その改善の方向性と、改善のマネジメントをどう行うかを課長に書かせる。それによって、ようやく経営サイクルと改善が繋がりました。

区役所の中で勉強会を立ち上げる

加藤: NAS(なす:Nakano After Sixの略)という活動もあります。これはどのようなものでしょうか?

酒井氏:もうすぐ8年くらい経つ勉強会です。おもてなし運動の延長線上で、さらに風土改革まで取り組んでいこうと、私を含めたおもてなし推進委員3人が幹事となり立ち上げました。始めた頃は、参加者は中野区の職員しかおらず、講師も内部でした。というのも、職員が立ち上げた勉強会は上から睨まれることもあるので、初めの段階で特別職とか部長とかそういう人に「講師になってください」と言って、スポンサーになってもらうことが大事なんです。

 ただ、段々、内部講師のネタが尽きてくるじゃないですか、だから、外から講師を呼ぶようになったんですね。東京都で、「差し押さえした物品をYahoo!オークションにかけて高く売る」という仕組みを作った方を講師としてお呼びした時に、他の自治体の職員が来たいということで問い合わせをいただき、そこから一気に外の自治体職員が増えたんですよね。

 そうしたら悲しいことに、中野区の職員がだんだん減っていったんです(笑)。理由を聞いてみると、外の職員が参加していると敷居が高いとか、知らない人がいると緊張して嫌だとかで、中野区職員もツワモノしか残らなくなってしまいました。

アンタこの先 役所の職員としてどうやって働くの?

酒井氏:これ言うといつも怒られるんですけど、勉強会って、たかだか2時間くらい知らない人と話すだけですよね。それが苦手だと言っていたら、どうやって区民と付き合うのかと思うんです。

 「アンタこの先、役所の職員としてどうやって働くの?」と言いたいんです。それを若手に言ってもしょうがないのかもしれないですけどね。給料をいただいて働かせていただいているのに、「緊張して敷居高い」とか言っている場合じゃないと思っています(笑)。その一方、NASには他の自治体職員や中野区民の参加が増えている状態です。

大雪の日 勉強会に100人の区民が集まった

加藤:区民が参加するのは素晴らしいですね。

酒井氏:区民が来て、同じ課題を一緒に勉強して、中野のまちで何が出来るかとかを語り合えるんですよ。昨日もオレゴン州ポートランドのまちづくりの話をしてもらって、中野のまちと似ているという話になって、じゃあ中野もポートランドみたいに有名になる可能性があるねとか、そんな話が出来るんですよね。

加藤:いいですよね。役所の人が思っているより、役所に対して好意的な住民はいっぱいいると思うんですよね。

酒井氏:圧倒的にそういう人たちが多いです。一回、「オープンデータを使ってまちの課題を解決しよう」という会をNASでやったんですよ。中野区役所で開催だったのですが、大雪が降って10メートル歩くのも難しいという日に100人集まりましたから(笑)。そのとき、中野区民はすごいと思いましたね。しかも、熱い人がいっぱい。クレーマーなんていうのはほんの一部だし、そもそもクレーマーはそういう勉強会に来ないですから。

※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

他のインタビュー記事を読む

ネイティブアド



頁トップへ