インタビュー

【寝屋川市 岡元譲史 #2】自治体職員は債権回収に向いていない?

岡元譲史2

ボロカスに文句を言われた入庁1年目

加藤:新卒で入庁後どのようなお仕事をされたのでしょうか。

岡元氏:当時、保健福祉部こども室という、保育所の入退所の管理や子育て支援をする担当課に配属されました。そこで、僕の担当が保育所保育料の庶務担当で「あなたの保育料は○○円ですよ」という通知をして、払っていない人には催促をしていました。

 当時は全国的に保育所保育料の差し押さえなんて全然やっていない時代で、「お願いしますよ。みなさん払ってくださっているんですから」という、まさに『お願い徴収』という感じでした。

 夜間電話催告と言って、日中みなさんはお仕事されているので、家に戻られた午後7時以降に電話します。そして、ボロカスに言われるわけです。大卒すぐの若造なので、有り体に言うと舐められて、「苦しいから払わへんのや!」「そんな言うんやったら、お前が取りにこい!」「お前ら公務員みたいな楽な仕事じゃないんや!」とか、色々と言われました。本当に一つ一つの言葉が心にグサグサ刺さりました。

 そんな感じで、新人の時は特に怒鳴られていました。平成23年度に部署異動した初めも知識が足りなかったので、自信なさげな対応をしていて、怒鳴られることが多かったです。逆にある程度経験を積んで10年目くらいになると、余裕が出てきてオタオタしませんから、怒鳴られることも減りました。こっちが余裕のない対応をすると、それを見て相手もエスカレートすることはありますよね。

脅迫電話を受けることも

加藤:身の危険を感じることはありましたか。

岡元氏:本当に困って真摯に相談に来られる方も多いですが、時には脅迫めいたことを言われることもありました。「お前、夜道に気をつけろよ」とか「お前にも大事な家族がおるやろ」、「顔と名前おぼえているからな」、「俺は全部失ったから、怖いものはないからな」とか、そういうことを言われると、怖いですよね。

 僕は幸い、実際に危害を加えられたことはなかったのですが、他の自治体では大きな事件に発展したものもあります。例えば、平成25年度には宝塚市役所が火事になったんです。
不動産を差し押さえられた滞納者が、庁舎に火炎ビンを投げつけて庁舎が全焼してしまった。

 そのように、事件に発展することもありますから、「犯行予告」に該当するようなケースは、やむを得ず録音した上で刑事告発することもあります。実際に被害が出てからでは遅いですから。

 税金を払っていただけていない場合、徴収職員はその人の大事にしているお金であっても奪うことができます。子どものための学資保険であっても、差し押さえて取り立てたりするので、やはり恨まれて当然だと思いますよ。「あなたは、私たちの子どもの未来を潰しました」ということも言われました。でも、法律的には許されないことなので、差し押さえて強制的に取り立てないといけない。

全国で徴収担当者が怖い思いをしている

加藤:保育所保育料の担当の時は、お母さんが相手になることが多いので、脅しみたいなのは少なかったんでしょうか。

岡元氏:いえ、ありました。大事な時に出てくるのはお父さんなんですね。今まではお母さんが対応していたけれども、いざ差し押さえとなるとお父さんが出て来ます。「なんでこうなる前に、俺に言うてけえへんのや」と怒られたこともあります。家に届く督促状や催告書を、全部隠して内緒にしていて、勤務先への給与照会で初めて滞納が発覚したというケースもありました。

 肝心なときに強面のお父さんが出てきて、至近距離でにらみつけられるとか。そういう怖い経験はやっぱりありますよね。

加藤:それって、全国で起きているんでしょうね。

岡元氏:本当にそうです。だから、今もこの瞬間に窓口で怖い思いをしている担当者は沢山いると思います。

自治体職員は債権回収に向いていない?

加藤:だから、徴収担当になりたい人が少ないのでしょうね。

岡元氏:誰も好き好んで怒鳴られたくないですよね。

加藤:最初は、「うわ、なっちゃったな…」みたいな気持ちはありましたか?

岡元氏:正直、ありました。自分で言うのもなんですが、公務員になる人は、基本的に「人の役に立ちたい」という方が多い気がします。よく言えば「優しい」、悪く言えば「気が弱い」。攻撃的な人が公務員になるのは珍しいのではないかというのが実感です。もちろん、例外はありますが。

 だから、最初から債権回収専門の会社に就職する人であれば覚悟はできていると思いますけど、公務員がいざ「市民からお金を回収してください」と言われたときに、そこですごく苦しむと思うんです。人の役に立ちたいとか、人に感謝されたいと思って公務員になるのに、お金を取りたてて泣かれたり、怒鳴られたりする。「こんなはずじゃなかった」と、心が折れていく人も多いと思います。

 

※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

他のインタビュー記事を読む

ネイティブアド



頁トップへ