コラム

自治体の人事における課題~一部上場企業の人事部長への質問受け付けます~

コラム

<記=加藤年紀>

 私が以前に務めていた株式会社LIFULL(ライフル)の執行役員でもあり、人事本部長である羽田幸広氏の著書『日本一働きたい会社のつくりかた』をサイン付きでいただいたので、読んでみた。この本は、羽田氏があるべき人事部のかたちを追求しながら、同社が社員のモチベーション調査の結果において「ベストモチベーションカンパニーアワード」1位を獲得に至るまでの施策や考えが書かれているものだ。

<日本一働きたい会社のつくりかた>

 社内に居た人間からすると、同社の制度は実運用の中で概ね理解しているので、「社内のこういう動きをしたのは羽田さんだったんだな」とか、「事業部側にいた人間としてはこう思ったな」とか、ちょっと違う楽しみ方をした。堅苦しくなく、読みやすく噛み砕かれているので、職員のモチベーションについて興味がある人には参考になるのではないかと思う。

人事領域は民間企業のノウハウを取り入れやすい

 私は民間至上主義では全くないし、民間企業よりも自治体組織のほうが好きなのだが、自治体の人事は民間のノウハウをもっと取り入れることができるのではないかと思う。

 労働集約型から移行しつつある現代では、組織の力を最大化するには、個人の力を最大化する仕組みが必要であると言われる。しかし、自治体における『採用』『評価』『給与』『異動』、これらの分野の話を聞いていると、まだまだ個人が力を発揮する環境が整っていないと感じている。

 羽田氏は著書の中で、会社の目指す経営理念を実現するため、「心理的安全の確保」と「内発的動機付け」ができる施策や仕組み化が重要だと述べているが、このポイントはそのまま自治体組織の課題になっているのではないかと感じている。

 端的に言うと、前者の「心理的安全の確保」については「個人が能力を発揮する要因を徹底的に排除する」ということ、後者の「内発的動機付け」については、「本人が熱意を持って取り組める土壌を生み出す」ということがキーであるという。

 私が自治体職員の方のお話をお聞きする中では、自分の考えや反対意見を述べると役所内で嫌われるということや、今でも女性が昇進することで妬まれたりするケースもあると聞く。また、休みである土日に、何か住民たちと活動していることを、冷ややかな目で見られる場合もあるという。これは「心理的安全」を明らかに脅かしている状態であると感じるし、そういった文化はメスを入れられるべきところであると思う。

自治体の『採用』は今後必ず厳しくなる

 人事業務の各論でいうと、人事のもっとも重要な仕事の一つが『採用』だ。『採用』に関しては先日インタビューをさせていただいた生駒市の好例などがある一方で、多くの自治体では「どのような人材に来てほしいか」という発信自体が十分になされていない。

 テクニック論的に綺麗な志望理由を言える学生は増えているとは思うが、まだまだ、公務員志望者の多数は大企業に求めるような『安定』『優良企業』というイメージを抱いているのが実情だと思う。

 一方、自治体の実態としては、財政的な厳しさから、『予算・人員』を削減しながらどうにか業務を回しており、今後もその厳しさは増していくと予想される。次第に公務員の『安定神話』が崩れ去って来ている時代の中で、果たして今後、自治体が「有能な人を採用することができるのか」というのは不安が残るところだ。

 私は自治体の仕事はとても価値のあるものだと思っているからこそ、それを担う人は優秀であってほしい。少しでも優秀な採用をしてほしいと心から願っている。

自治体の仕事やビジョンは訴求するだけの価値がある

 自治体が行なっている業務を鑑みると、その仕事自体の魅力をもっとアピールすることができるのではないかと思う。自治体の仕事は人の根源的な深い部分での欲求を満たすケースが圧倒的に多く、そこでしかできないというものも多い。

 自治体はどの部署であっても、公益性のある世界を目指すという組織のビジョンに繋がっている。私はこのビジョンを公明正大に掲げられることこそが、自治体が最も求職者に訴求できるポイントであると思うし、その発信に対して深く共感した人材こそ、組織に必要な人材なのではないかと思う。

 世の中には扱う領域が広く、部署の数が自治体を上回るような企業も存在する。そういった企業は専門的な魅力ある領域を細かくアピールすることはもちろんだが、当然のように企業としてのビジョンも発信している。むしろ、一定規模の会社がビジョンを説明しないということはほとんどあり得ない。

 離職率が低い自治体職員(※)だからこそ、採用後のミスマッチが生じることは、お互いにとって最悪の結果だ。説明会やリクルーター面談など、民間企業がこぞって積極的な情報開示を進めている流れにあってもミスマッチはゼロにはならない。それを行っていない自治体では、入庁後にさらなるギャップや溝が存在すると推測することは、決しておかしなことではないだろう。

※平成26年度の自治体職員の離職率は4.26% 全労働者の離職率は11.0%
[引用:総務省 平成26年地方公共団体定員管理調査 / 総務省 平成26年度地方公務員の退職状況等/平成27年度地方公務員の退職状況等調査 / 労働力調査 平成28年(2016年)平均(速報)/ 厚生労働省 平成27年雇用動向調査]

自治体の『評価』と『給与』制度は時代に合っているのか

 『評価』については明確で納得のいくKPIが定められていないという現状も聞く。そして、評価と給与が連動しない、年功序列と言われるような頑張っても報われない制度になっているようにも見える。

 この給与テーブルについては、後日、自治体で変革を進めた市長にお会いできることになったので、そこで色々と深堀して聞いてみたいが、自治体の一般的な年功序列システムは、「個人が能力を発揮する要因を徹底的に排除する」ということを念頭に置くと、やはり効果的ではないように思える。

 あまりにも有名な『2:8の法則』では、組織の8割の成果は2割の人が出すと言われる。その2割の人に対して、評価や給与として正当な対価(必ずしも金銭的なものである必要はない)を示すことのできない仕組みは、間違いなく組織全体としての成果を抑える要因になるだろう。

一部上場企業の人事本部長に聞きたいことはありますか?

 前述したように、人事の仕事については民間のノウハウを持ち込みやすいと考えている。後日、LIFULL社の羽田氏にインタビューを行ってみたいと考えているので、読者の皆様から『採用』『評価』『給与』『異動』などについて質問したいことがあれば、ページ下部のコメント欄や、フェイスブックページのメッセージなどに質問を残していただければ幸いである。※著書を読んでいただく必要はありません

コメント欄については試験的にHOLG全ページで開放しますが、個人への誹謗中傷や、論理的整合性のない批判などが多発し、運用上マイナスに働くと考えた場合は即時閉鎖する予定です。

羽田幸広(はだゆきひろ)氏 の経歴について
株式会社LIFULL[東証一部上場:2120] 執行役員人事本部長。
1976年生まれ。上智大学卒業。人材関連企業を経て2005年6月ネクスト(現LIFULL)入社。人事責任者として人事部を立ち上げ、企業文化、採用、人材育成、人事制度の基礎づくりに尽力。
 2008年からは社員有志を集めた「日本一働きたい会社プロジェクト」を推進し、2017年「ベストモチベーションカンパニーアワード」1位を獲得。7年連続「働きがいのある会社」ベストカンパニー選出。

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