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新たな産業観光概念としての「生業」(神奈川県小田原市)「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(210)」

ワークショップ風景(旧松本剛吉邸・第6分科会)

[記事提供=旬刊旅行新聞]

 2001(平成13)年に名古屋で始まった「全国産業観光フォーラム」も、21回目を迎えた。今年の開催地は、私にとっても馴染み深い、神奈川県小田原市であった。

 産業観光と言えば、産業遺構はもとより現役の工場・工房などのものづくりやその製品などを対象とする観光の一形態であり、編集視点だが、今やすっかり定着した感がある。

 しかし、今回の小田原はこれまでとは一味違っていた。テーマは「生業」。日々の商いやサービスなどを含む広い営みが対象となった。

 小田原は、戦国時代の後北条氏の「城下町」として発展し、また江戸時代には東海道屈指の「宿場町」として栄えた。明治期になると、政財界人や文化人たちの「別荘・居住地」としても愛されてきた。

 そのなかで、これら「城下町」「宿場町」「別荘・居住地」を支える、実に豊かな生業が生まれ、数百年を経た現在も色濃く残っている。

 海からの魚を加工した蒲鉾や干物などの「海なりわい」、山の木を加工した木製品や寄木細工、漆器などの「山なりわい」、温暖な気候と富士山の火山灰による水捌けの良い土壌に恵まれた柑橘類や梅干しなどの「里なりわい」など、豊かな生業がある。後北条時代から続く鎧甲冑の鋳物(砂張)や、500年を超える「ういろう」などの薬業や和菓子と茶の文化なども魅力的である。

かつての魚市場のにぎわい(現在の蒲鉾通り)

 「生業」概念は誠に多様である。2001年に小田原市政策総合研究所がまとめた紀要には、「なり」を「実り」、「わい」を「這う」という意味に解釈し、自然の恵みを加工して、流通に乗せ広げていく一連の流れのすべてを表す言葉として捉えている。つまり、自然の資源を加工・生産し、これらを販売・消費するすべての営みが「生業」とされている。

 これは、従来の「産業観光」の概念を大きく拡大することを意味する。産業は、日々の暮らしを支える根幹だが、そう考えれば商業・サービス活動も立派な産業観光の対象となる。

 旅館・ホテルをはじめ、日本の商業・サービス業は「生産性」が低いと指摘されるが、顧客視点からみたきめ細かい「おもてなし」は、海外からみると、ある意味素晴らしい観光資源でもある。

 2016(平成28)年に策定した小田原市観光戦略ビジョンでは、小田原の観光戦略の要を、こうした生業を元気にすることと明記した。まちなかの暮らしに支えられた生き生きとした生業こそが、小田原の「光」という捉え方である。観光ビジョンでは観光客の数や観光消費額は重要な指標となるが、その究極の目的は、地域の生き生きとした暮らしの実現であり、生業の元気なのであろう。

 観光戦略ビジョンは、今年度から新たな見直し作業に入る。次の小田原の観光まちづくりの戦略が楽しみである。

(日本観光振興協会総合研究所顧問 丁野 朗)

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