インタビュー

【寝屋川市 岡元譲史 #5】徴収職員だから救える人がいる。徴収の仕事に誇りを

岡元譲史5

理解のある上司の存在が大きかった

加藤:若手の頃から自分のやりたいことを進め、成果を出されています。どういった要因がありますか?

岡元氏:やはり、上司に恵まれたことが大きいです。保育料徴収の時の課長もすごく積極的な人で、「どんどんやれ」と。「岡元くん、徴収率を上げてほしいから、勉強して法律に基づいた厳しい処分をやってくれ」と言われて、その専任の仕事につくことになりました。他の自治体では「窓口に怒鳴り込んできたり、訴訟や余計なトラブルが起きたりすると困るから、差し押さえとかはちょっと様子を見よう」みたいなことを言われたという事例も聞いていましたから、好きなようにやらせてもらえたかったのはすごく有り難かったですし、モチベーションも上がりましたね。

加藤:役所の中で仕事を頑張っている人は、上司や同僚の一部から叩かれるじゃないですか(笑)。岡元さんはあまりそうなっていない気がしますが、何に気をつけていましたか。

岡元氏:普段からコミュニケーションをとることを大事にしていました。子育てで悩んでいることとか、プライベートな話とかもして、ちょうど僕の母親ぐらいの年齢の女性の方がけっこういらっしゃったこともあって、可愛がってもらえたのだと思います。本当に息子みたいな感じで関わってくださいました。

 実は、滞納金の催告書を一斉配布したりすると、電話がかかってきて他の人にも対応していただく必要が出てしまうんですよね。そこで課長が「部署としてはこういう方針で動くから、みなさん岡元くんに協力してあげてください」「岡元くんは厳しい処分を一手に担ってくれるから、周りもサポートしてあげてください」と仰って、協力を促していただきました。だから、これは僕自身というよりは、本当に周囲の理解のおかげです。僕はもう、ただただ感謝しながら、やるべきことをやっていた感覚です。

 その後、滞納債権整理回収室に異動しましたが、その部署は僕が異動する2年前、平成21年度にできたばかりだったんです。そこも、「どんどん積極的に徴収していく」という使命を課せられた部署だったので、思い切りやらせていただきました。時には前のめりになりすぎて失敗して、ご迷惑をおかけすることもありましたが、その時もフォローしてもらったので、本当にありがたかったです。

「悪魔」と呼ばれていた時期もあった

加藤:「地方公務員が本当にすごい!と思う公務員アワード」でも、ジチタイワークス賞、VOTE FOR 政治山賞と唯一のトリプル受賞でしたね。

岡元氏:今回賞をもらっているのは自分だけの力ではないと心から思っています。僕はこの賞を全国の徴収職員に捧げたいと思っているんです。

 徴収や債権回収の仕事は、人から感謝されることがほとんどないと言っても過言ではありません。滞納者からすれば「奪う人間」であるため、恨まれるのは当然ですし、覚悟はしているので納得もできますが、理解のない同僚から「鬼」などと呼ばれることもあり、それは悲しかったですね。

 実際に僕も一部の方から「悪魔」と呼ばれていた時期がありました。僕としては、法律に基づいて適切に役割を果たそうと一生懸命にやっていたつもりなのですが・・・。
権力をかさに着て高圧的な態度を取るような職員は論外ですが、徴収や債権回収の仕事に真摯に向き合い、役割を果たそうと頑張る人達はしっかりと評価されるべきだと思います。この徴収の仕事に対する理解が広まってほしいですね。

徴収職員だからこそ、救える人がいる。徴収の仕事に誇りを

加藤:実体験から感じた徴収職員の価値はどこにありますか?

岡元氏:滞納されている方は苦労されている方が多いのですが、そういう本当に困っている方を救うこともできるんです。これは行政の重要な役割ですよね。

 一例ですが、多重債務で悩んでいた滞納者に債務整理の手法をお伝えし、200万円を超える過払い金が返ってきて感謝されたこともありました。

 また、失踪した滞納者の連帯保証人になっていた元妻が、残された住宅ローンの返済に悩んでいて、毎月高額のローン返済に追われて自己破産まで考えていた事例がありました。
実は、失踪から7年以上経過している場合、関係者が家庭裁判所に対して「失踪宣告」の申立てをすることができます。失踪宣告がなされれば、失踪者は法的に死亡するという制度です。その知識をお伝えして、実際に元妻が申し立てたことで、団体信用生命保険の適用を受け、以降のローンが返済不要になり、生活再建に繋がったこともありました。

 他にも印象的だったのは、窓の鍵を強制開錠して捜索に入った時に、建物の中から滞納者の遺体が見つかった事例です。亡くなられたことは残念なことですが、せめてその状況を発見することができて、ご家族になるべく早くお伝えできて良かったと思います。

 徴収業務は、普段感謝されることもほとんどなく、窓口や電話で怒鳴られるなど、怖い思いをすることもあります。それでも僕はこの仕事に携わることができて良かったと心から思っていますし、徴収の仕事に誇りを持っています。徴収職員にしかできないことがありますし、徴収職員だからこそ、救える人がいるとも思っています。
 最後になりましたが、改めて今回の賞を、全国で頑張る徴収職員に捧げます。ありがとうございました。

編集後記

一昨日、一般財団法人「地域活性化センター」で20代から30代を中心とした皆さんに対して拙いお話をさせていただく機会があった。

 弊社の活動とともに、活躍する公務員の共通点をお話したが、質疑応答を通して、多くの若手職員は上司の理解を得るのが難しい、という悩みを抱えているのではと感じた。

 私も新卒で民間企業に務め、自らのやりたいことを簡単に実現できたわけではないが、改めて今、自分は決裁者である上司にどういうアプローチで臨んだかを思い返してみる。

 結論から言うと、決裁者からイエスをもらうには「①提案の内容についての評価」と「②決裁者から提案者(人)への評価」が重要に思う。それを前提とした上で大切な点は、その決裁者がどのような基準で①および②の評価に至るのかを把握することだ。

 普段からの決裁者の発言や、彼らが評価をしている部下を通じて、上司の判断基準は透けて見えて来る。評価基準が分からないのであれば、今は人事評価面談をする自治体が大部分であることから、その機会に直接聞いてもいいのかもしれない。

 私の経験上、上司が①の提案内容について懸念するポイントは「課の成果につながるのか」「決裁者が組織からどう評価を受けるのか」の2つである場合が多い。また、②の提案者のおおよその評価軸は「仕事ができるか」「信用できるか」「好きか嫌いか」「コントロールしやすいか」などによるところが大きい。

 20代から活躍している岡元さんは上記の具体的なポイントの多くをクリアしているように思う。驚くべきことに、岡元さんの上司は岡元さんを見て「こんなにすごい人がいるなんて!」と、衝撃を受けたそうだ。これを率直に口にする上司もすごいし、言わせる岡元さんもすごい。本稿で垣間見える岡元さんの根本的な思想や考え方が、今まで庁内で関わった、多くの同僚や上司を味方にしてしまうのではないかと思う。

 最後にもうひとつ付け加えたい。今まで上司を説得するテクニック論を中心に述べたが、上司の立場を理解することも大切ではないかと思う。上司も人の子だから不安がある。プロジェクトを始めて失敗すると、上職者や首長に叱責を受けるかもしれないし、議会で矢面に立たされるかもしれない。そもそも、自治体の管理職世代は失敗のないことを求められて来た傾向が強く、そういった経験から得た感覚は簡単に変えられるものではない。

 だとすると、提案者は自らの提案の価値を伝えようとするだけではなく、上司の不安に寄り添い、その不安を最大限低減させることも重要ではないかと思う。心理戦と言い換えるとこれもテクニックのひとつかも知れないが、人が感情の生き物であるという事実は、前提に置いても良いと思うがどうであろう。

※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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