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【寝屋川市 岡元譲史 #1】滞納者が得をするのは不公平。納税者が報われる社会を

岡元譲史氏 経歴
1983年大阪市浪速区生まれ。大阪市立大学生活科学部食品栄養科学科を卒業後、寝屋川市役所に入庁。12年間にわたり税金や保育料などの滞納金を徴収する滞納整理業務に従事。寝屋川市の滞納額減少に貢献するとともに、培ったノウハウをマニュアルや自主研究会の立ち上げ、講演を通じて他自治体にも共有。また、一般社団法人日本ほめる達人協会の認定講師としても活動している。2018年4月から経営企画部都市プロモーション課係長。

 寝屋川市役所の岡元譲史氏は滞納整理の取り組みで、『地方公務員が本当にすごい!地方公務員アワード2018』を受賞、また、同時にジチタイワークス賞、VOTE FOR 政治山賞も獲得し、唯一のトリプル受賞を果たす。現在は都市プロモーション課に異動となった ‎が、アワードの受賞内容を深掘りし、岡元氏が行った滞納整理、所有者不明の不動産対策など多くの取り組みについて伺った。

滞納繰越額の大幅な削減に貢献

加藤:『地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード』で勝手ながら表彰させていただきました。特に滞納整理の精力的な取り組みにスポットがあたり、平成18年度から28年度の間に差押件数が約3.4倍増加。そして、35.8億あった滞納繰越額が12.6億になりました。何をおこなったことが、結果に結びついたとお考えですか。

岡元氏:そうですね。まず、僕自身が税金の滞納整理にかかわったのが平成23年度からであることと、一緒に汗をかいたメンバーがいたからこそ達成した結果で、当然、全てが僕だけの成果ではありません。みんなを代表して受賞したと思っています。
また、滞納額全てを徴収できたわけではなく、「不納欠損」といって、滞納法人の倒産等を理由に「これ以上の回収は見込めない」と判断し、やむなく法律に基づいて欠損処理したものもあります。

 それをお断りした上で、平成23年度に僕が滞納債権整理回収室という部署へ異動となり、最初におこなったのは、差し押さえの判断を早めるようにしたことです。今までは催告書を3回、4回と送ってから、ようやく差し押さえをしていましたが、もっと早い段階での差し押さえを進めたことが一つ。

 もう一つは、捜索とか不動産公売という一般的に難易度が高く、より専門的な法知識が必要になる業務を積極的に進めたことが大きかったと思っています。厳しい処分をすることで、市民の皆さんに「やっぱり、ちゃんと払わなきゃダメだよね」と感じてもらえたのではないかと思います。公売するとなると、物件の写真がインターネット上に載りますから、そのような取組みを始めてから「住めなくなるのは嫌だから」と言って、100万円を超える滞納金がまとめて支払われるといったことが起きるようになりました。

 玄関や窓のカギを強制的に開けて家の中を捜索したり、今まで分割納付で5千円ずつ払っていたような人でも、相当の給与があるならば給与を差し押さえたりして、毎月10万円を超える金額を強制徴収する。そういう厳しい処分も行っていきました。そして、「寝屋川市は滞納に厳しくなった」という噂が広がるにつれ、自ら納付する方も増えていったのではないかと思います。

「滞納があれば、厳しい処分は当たり前」という状態をつくることが重要

加藤:自発的に払ってもらえるようになると、市としては人件費も削減できるようになりますね。

岡元氏:テレビで捜索の様子を伝える『税金Gメン』みたいな番組の放送があると、「寝屋川市も滞納者の家を捜索しているの?」と連絡が入ったりするのですが、その時に、「はい。していますよ」と言えるのは大事ですよね。やっていないことは言えませんから、そうしたことを胸張って言えると、職員の意識も変わります。

 僕は平成18年度から平成22年度まで保育料の徴収をしていたのですが、当時は保育料滞納での差し押さえはレアケースだったので、「なんで自分だけ?」と感じた滞納者と窓口でもめることも多かったんです。でも、厳しい処分が当たり前になると、不思議なもので、窓口でもめることが少なくなってくるんですよ。人間は、「当たり前」のことには、あまり怒らないのではないかと思います。例えば、消費税導入時には大きな反発があったと思いますが、今、「なぜ、8%も消費税を取るんだ!」って怒る人はほとんどいませんよね?それと同じことではないでしょうか。

 「寝屋川市は何百件も差し押さえしている」ということが伝われば、「そのうち自分のところにも来るだろうな」と捉え方を変えてくれる。職員側も「滞納があれば、差押えや捜索、不動産公売をするのは当たり前。厳しい処分をすれば、怒鳴られるのも想定内」という意識で臨めば、お互いに多少のことでは驚かない。そうなれば、「では、これからこの滞納をどう解決していきましょうか」という話が早くできる。そういう状態を作ることが重要ですよね。

滞納者が得をするのは不公平

加藤:厳しくすると明らかに滞納者の反発が想定できます。普通はやりたくないことのように思いますが、なぜ着手したのでしょうか?

岡元氏:先ほどもお話ししたように、僕は寝屋川市に採用後5年間、保育料の徴収をしていたのですが、子どもを預けているのに保育料を払わない人がいたんです。僕も当時子どもを保育園に預けていましたし、僕も含めて大半の人はちゃんと払っている。払わない1~2%の人が得するなんて、「こんな不公平なことないやん!」と、すごく強く思ったのがスタートです。

 もちろん、払っていないことには色んな事情はあると思いますよ。でも、真面目に払っている方の中にも、苦労しながらどうにか納めている人もいるわけです。そういう時に、自分たちが接している滞納者の声ばかりを聞いてしまうと、その裏にいる大多数の納税者が損をしてしまう。そんなのおかしいですよね。真面目に頑張っている人が馬鹿を見るような世の中にはしたくないじゃないですか。
そういう考えで5年間、保育料徴収を担当しました。年間の保育料はおおよそ8億円でしたが、僕が担当する前の平成17年度に95.3%だった徴収率が、今では99%近くになっています。

 その後、平成23年度に滞納債権整理回収室に異動をして、高額の滞納案件の徴収の世界に入ることになりました。ここでも同じように、大多数の払ってくださる方に報いる仕事をしないといけないと思って取り組みました。

「お前ら、税金で飯食ってるくせに」

加藤:滞納者に対して厳しい対応を取ることで、反発はなかったのでしょうか。

岡元氏:当時から、「お前ら、税金で飯食ってるくせに」とか、窓口でさんざん言われていましたよ(苦笑)。でも、「税金で飯食ってるからこそ、一生懸命、市民全体のために仕事せなあかん」と思っています。

 自分が給料をもらっている以上は、役割を果たさないといけない。窓口で怒鳴られたりすることもありましたけど、毅然と対応すべきだと考えていました。あとは、差し押さえなどの厳しい処分は、本人の意思とは関係なく無理やり徴収するということですよね。いくら、「大多数の納期内納付している市民のために」という大義名分や綺麗ごとを言っても、どうしたって滞納者を苦しめながらやってきているわけです。その後に、自分が他の滞納者に対して緩慢な対応をしてしまったら、今まで辛い思いをさせてきたその人たちにも申し訳が立たない。

 やっぱり、厳しく接することで苦しい思いをさせることはわかっているんです。でも、苦しい中でも優先順位を変えてもらって、「岡元さんのためやったら」と言って払ってくれる人もいました。それが、「窓口で怒鳴る人には対応が甘くなる」となったら、今まで厳しく接してきた人たちに顔向けできないですよね。

 

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※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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