インタビュー

【寝屋川市 岡元譲史 #3】徴収ノウハウを全国に広め、滞納整理の価値を伝える

岡元譲史3

厳しい処分をするから債権放棄が可能

加藤:市として滞納繰越額の数値目標は持っていたのでしょうか。

岡元氏:寝屋川市はここ数年、滞納繰越分も含めた全体の徴収率がずっと大阪府内で最下位か、その辺りだったんです。滞納繰越額の割合が現年度課税額の1%以内というのが、健全で理想的な状態とは言われていますが、寝屋川は平成19年度の時点で市税の現年度課税額約300億円に対して約38億の滞納繰越額があったわけです。それが、平成28年度で12.6億、30年度の決算では一桁台まで下がるんじゃないかと言われています。今後も引き続き、健全と言われる1%以内を目指して圧縮していくべきですよね。

加藤:どのような理由で滞納繰越額が膨らんでしまったのでしょうか。

岡元氏:これは私見ですが、回収可否の見極めが徹底できていなかったことに原因があったと思います。民間企業における債権回収業務もそうだと思いますが、100の力をかけても1しか回収できないような状況が起こると、損金処理をしますよね。

 税金もこれと同様、法律上は「滞納処分の執行停止」と言いますが、「これ以上徴収できない」という判断をした後で欠損処理をするんです。徴収不能案件については整理をして、徴収可能な案件に集中して、1円でも多く徴収しましょう、というのが基本的な考え方なんです。

 その判断が寝屋川市にはできていなかったのではないかと。徴収可能性の低い案件をずっと抱えて、その管理に時間をかけてしまって、他の取れるべきところにも手が回らなくなるという悪循環があったのではないかというのが、僕の推測です。

 当時の市長は、「安易に債権回収を諦めるな」という考えでした。それはそうですよね、安易に諦めていたら、それこそ公平性にも問題がある。そこを改善すべく、より専門的に債権回収を行うために滞納債権整理回収室ができたのではないかと思います。

 そういう背景から、差し押さえや捜索、不動産公売、訴訟など、出来ることは徹底して行って、「ここまでやっても取れない」ということを明確にした上で、欠損処理をするように変わっていったんです。

全国に徴収ノウハウを広める活動

加藤:岡元さんはノウハウを全国に広めるべく登壇されたり、徴収業務のマニュアルを作られたりしました。

岡元氏:保育料徴収担当のときにマニュアルを作ったんですけど、滞納債権整理回収室ではマニュアルらしきものがなかったんです。そこで、平成23・24年度の2年間、おおさか市町村職員研修研究センターが立ち上げた、徴収マニュアルを作ることを目的とした研究会に関わらせてもらいました。

 元東京都庁職員の杉之内孝司先生が徴収職員向けの本を書かれているんですね。その本の内容をかみ砕き、ゼロから学ぶ人が一人前の徴収職になれるようなマニュアルを作るという趣旨でした。その際に、実務経験のある人が書くべきだということで、メインで書かせていただきました。

 市税の徴収は職場内で先輩に相談したりできるんですが、保育料の徴収などは徴収担当が一人だけという場合も多くて、先輩から教えてもらうことがなかなかないんですよ。そういう人たちに向けて作った本です。「身近な先輩に教えてもらっているような、分かりやすいマニュアル」というコンセプトで作ったんです。

加藤:精神的にも負荷がかかる徴収職員にとっては、そういったマニュアルの存在自体が心の支えになる部分がありますよね。

岡元氏:そうなんです。恥ずかしながら、僕も1年目、2年目はけっこう泣いていましたよ、本当に(笑)。でも、ストレス解消法が複数あって、その一つとして、当時、僕は本をすごく読んでいました。本の世界の中に逃げて、自己啓発書に救いを求めていたところがありました。

 パナソニック創業者である松下幸之助さんの本もよく読んで、『順境よし、逆境またよし』みたいな箇所をみつけると、「なるほど、逆境よしや、この逆境が自分を鍛えてるんや」という風に、自分に言い聞かせていました。講演録も毎日のように聴いていましたね。

 僕が今、認定講師として活動させてもらっている「ほめ達!(ほめる達人)」との出会いも、読書がきっかけでした。「ほめる=人、モノ、起きる出来事に価値を見いだす」という考え方を学び、「滞納整理という、一般的には嫌われる仕事にも価値を見いだすことはできないか?」と捉えることができたおかげで、今の自分があると思っています。
 僕が研修を行う際の主なテーマが『滞納整理の価値と戦略』というもので、滞納整理のノウハウを伝えると同時に、全国に『ほめ達!公務員』を増やすことにも取り組んでいます。

 それから、全国で同じ仕事をしている仲間の存在も大きいです。LG-netという自主勉強グループがあって、普段はインターネット上で情報共有をしながら、一年に一回大規模な研修会を開催して、そこで交流させてもらうということを、もう10年近く続けさせてもらっています。このグループでの繋がりがなければ、間違いなく今回のような賞を頂くようなことはなかったと思います。

 このように、心を支えてくれる存在が複数あることが大切ですよね。

 

※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

 

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