インタビュー

【流山市 河尻和佳子 #4】港区の人を流山に移住させることはできない

河尻和佳子TOP4

成果の可視化が難しい

加藤:課のKPIなどは存在しているんですか?

河尻氏:流山市は指標とそのプロセスを重視する傾向にあります。ホームページに部長の顔写真付きで、「何をやるか」そして、「どんな目標やKPIがあるのか」、さらには、「達成できたかどうか」を上期と下期に公開していきます。

 マーケティング課のミッションは流山市の定住人口増加、シビックプライドの醸成なので、人口統計のほかに転入者アンケートで転入前住所や流山以外に転居先候補があったかどうかの選択市民比率などの推移を見ます。また、まちづくり達成度アンケートでは流山市に住み続けたい市民の割合から市民の満足度を評価したり、他にも、ブランド浸透度調査で、流山市が首都圏の中でどういうイメージでどれくらいの位置にいるのかを調べています。

 もちろん、どのようなメディアにどのくらい掲載されたのということも見ています。テレビやラジオ、雑誌に何件掲載されたのか一年毎の推移で比較し、取り上げてもらう内容や質もチェックしています。ただ、マーケティング活動の成果はこれ!という指標が難しいですね。

加藤:マーケティング課のKPI設定が難しいと感じる要因はどこにありますか?

河尻氏:たとえば最終的に定住を目指すのであれば、人口増がKPIのひとつになると思うんですけど、その途中にはいくつか段階があり幅も広いじゃないですか。まず、流山を知ってもらわないといけないし、来てもらわないといけない。また、首都圏からの転入を狙う上では、首都圏の認知度だとか、交流人口、シビックプライドみたいなものも影響するはずです。定住に至るまでのそれぞれのマーケティング活動を評価できる指標の設定が意外と難しいですよね。

 とはいえ、四苦八苦しながらも見える化していかないといけない。マーケティング活動は効果測定が困難と言い張って、それが許されるわけではないので、何とか色んな指標を見比べては改善しています。

税金で行う調査の結果は公開するべき

加藤:前職の時と違う難しさはありますか?

河尻氏:電力会社でマーケティングをやっていましたが、必要なデータが探せばありました。過去の電力量実績から、翌年どのくらい電力が使われるかを予測したりしていましたが、過去のデータの蓄積に自治体との差がありますよね。

 自治体だとマーケティング活動に必要なデータはあまり蓄積されていないので、企画するうえでの仮説が立てづらいのだと思います。そもそも、民間に比べて自治体は調査にお金をかけるのがもったいないと判断される傾向が強いです。だから、マーケティング課という名前なのに、前職のスキルや知識が役に立たなくて、転職した時にびっくりしました。オープンデータをホームページでも公開していますが、各課に眠っているデータや共有できていないデータもまだまだあると思います。

 少し話はずれますけど、税金でアンケートを取っている場合、基本的にオープンにするべきだと思うんですよ。個人情報や個人が特定されるものなどはマスキングすれば使えるものもありますし、役所のデータ活用については課題があると思いますね。

 一見、うちの部署とは関係ないようにみえるんですが、たまたま福祉担当の意識の高い職員が、「こんなアンケート結果があります」と庁内でデータを共有していたことがありました。今後福祉の担い手が減っていくので、市民の地域への参画意欲度合いを調査したものでした。それが、シビックプライドの指標に近いものだったので、そういう情報はとても役に立ちました。

港区の人は流山市に転入しない

加藤:つくばエクスプレス沿線は全体として人口が増えていますよね。その中で、流山市として差別化しているものはありますか。

河尻氏:沿線では区画整理事業をしているので、人口の取り合いなんですよ。良い悪いは別として、早く高い値段で売らないと市の負担が生まれる可能性があります。そこで、同じ沿線で食い合わないように、流山は首都圏に住む30代と40代の前半の共働きの世代に対象を絞っています。

 あと、ある意味差別化といえるポイントを市民から教えてもらいました。それは、流山にはいろんなものが揃ってない、だから、「自分たちでなんとかしてやろうと思わせるのがこのまちの魅力だ」と。だから、「うちは住んだらなんでもそろっていてパラダイスです」とか言わずに、「ベンチャー企業みたいに、一緒に楽しく成長していきたい人だったら最高に楽しいよ」と差別化したいです。

加藤:自治体は来てもらいたい人に、もっと明確なターゲットがあってもいいですよね。

河尻氏:はい。日本全国の子育て世代全員に住んでもらいたいと思っているわけじゃないし、全部が来たら人口過多になりますから(笑)。それに、(東京都)港区が大好きな人を流山市に転入させるのは難しい。そこは狙う必要がないんです。

 これも市民の方に教えてもらったんですけど、まちは会社に似ているという話で、人が住むのは採用にすごく似ている。流山に合わない人に無理やり住んでもらいたくはないし、まちに共感してうまくマッチングした人が住めばいい。そうなれば、満足して長く住んでまちを支えてくれる。

 人口争奪戦っていうのはあるんですけど、私たちはなるべく争いの中には入らないようにして、流山市を好きな人だけ来てくれればいいと考えています。

※本インタビューは全7話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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