インタビュー

【流山市 河尻和佳子 #6】役所に染まっているようで染まっていないスタンス

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流山市に住む気も働く気もなかった

加藤:流山市に勤める経緯はどのようなものでしたか?

河尻氏:もともと、家を探していたんですよね。私の実家は柏なので、柏を中心にその近辺を探しましたが、自分が望むような物件が全然なかったんです。

 そこである日、夫が「最近、流山が発展してきているらしいんだけど、ちょっと行ってみない?」と言ってきたんですね。柏の隣の流山のことは当然知っていたんですけど、印象が本当に悪かったんです。「時計が止まったようなまちだな」って思っていたんですよ(笑)。

 だけど、夫に連れられて行ってみたら本当に変わっていて、そのギャップにすっかり一目ぼれしちゃいました。やっぱりベンチャー感ですよね。この先何が起こるかわからないワクワクする空気感があった。

 引っ越しても転職するつもりは全くなかったんですが、たまたま新聞で流山市がまちをPRする報道官を民間から募集していたんです。私自身、流山が良いまちなのに全然PRできていなくてもったいないと思っていた時に、「これ、私がやった方がいいんじゃないかな」って、おこがましくも思っちゃったんですよ。

 それで、どうせ選ばれないだろうと試験を受けたら、受かってしまった。私が流山市のターゲットであるいわゆる共働き子育て世代30代だったんですよね。そのターゲットである人間を採用しようとしたことに市の本気度を感じて、これは今の仕事を辞めるしかないなと思って、流山市役所に転職しました。

悩み続けた転職1年目

加藤:転職してみて仕事はうまく行きましたか?

河尻氏:市役所に入った時に、日々やることは特別決まっていないと言われたんですよ。しかも、とにかく流山の知名度とイメージをアップしてくれることをやればいいと一言言われて、本当に具体的な仕事がなかった。流山市は早い時期からシティプロモーション人材を外部から登用した自治体だったので、まだ全国でも前例や方法論がなかったんです。

 だから、最初はすごく迷走しました。前職はマーケティングをやっていたんですけど、広報はほとんどやったことがなかったので、住民向けの広報をおこなう広報担当課に教えを乞いに何回も行ったんですよね。

 すごく丁寧に教えてくれるんですけど、向こうからすれば民間から肝煎りで来た人材と聞いているのに、こんな基礎もわかっていないのかって思いますよね。しかも、1年間本当に成果が出せなくて「なんだあいつは」ってなるじゃないですか。それは、直接言われていませんけど、なんとなくは分かるわけですよ。

 そこで悩み続けた後、方法論がないんだったら自分が試していけるんだと、ちょっとずつ考えたことを実行するようにしてから一気に楽しくなりました。それで、2年目から少しずつ成果を出せるようになりました。

前職との違いは予想より大きくなかった

加藤:転職して感じた前職との違いはどこにありましたか。

河尻氏:実は、役所の人からも「民間と違うでしょう?」「役所って駄目だよね?」と相当言われたんですよ。ただ、前職もライフラインを担い、公共的な風土がありました。だから、それほどギャップを感じませんでした。

 あと、すごく失礼ながら、意外と真面目に働いている。情熱があって真剣にまちを良くしようと思っている。見るからに熱意のある人もいるけど、そうじゃなくて、表には出さないけど粛々と目立たず頑張っている職員もたくさんいるな、と。

 悪い面で言えば、やはり「時間がかかる」とは思いました。企画した後にいろんな人の合意を得るし、何か一つ決めるにしても、決める過程や公平性というのをオープンにして、聞かれた時はちゃんと説明できるようにしていないといけない。それはおそらく仕方のない部分もあるのかもしれないけれども、物事を進める時のネックです。

先入観を持たずに転職を

加藤:民間から自治体に転職を希望する人に対して、何かアドバイスはありますか。

河尻氏:自治体は物事が通らないとか、やる気がないとか、挑戦しないというイメージがあるのかもしれないですけど、そういう先入観を持たずに飛び込んだほうが良いと思っています。

 先日も民間から自治体へ転職をした方が「自治体って新しいことをやりませんよね、もう諦めようと思っています」とおっしゃっていて、理解できる部分もあるんだけど、新しいことを実現するために民間から来たんじゃないの? と思うところもあるんです。

 自治体という組織に長年勤めている人たちが、その文化に染まっていくことはしょうがないと理解しつつ、しっかりと話をしていけば意外と動かせることもあります。

一見染まっているようで、実は染まっていないスタンス

河尻氏:あとは、染まらないことです。私も10年役所で働いて、市長から「染まるな」と言われていても、染まりつつあると思っています。少し前に市民の方に「なんでこれ通せないんですか?」って言われて、「無茶苦茶言うなぁ、こんなん通せないよ。こっちも組織の中でリスクとりながら動いているのに、その苦労も知らないで!」と内心思ってしまったんです。

 でも、冷静に思い直すと、自分が世間一般で言われるお堅い役所の人みたいな印象を与えているのではと感じたんです。「なんか、河尻さん変わったよね」とか言われちゃったら、もうおしまいだと思っています。市民の方々と接点をもっていると、振り返る機会に恵まれます。

 ただ、逆に「俺は染まっていないぜ!」みたいな雰囲気も組織でハレーションが起きる。 いくら仕事ができても、そんな感じだったら誰だって嫌じゃないですか。だから、『一見、染まっているようで実は染まっていない』、そういうスタンスが良いと思います。

※本インタビューは全7話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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