インタビュー

【流山市 河尻和佳子 #7】私は流山市。任期付職員として2度採用10年目を迎え

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任期付職員として合計10年働く

加藤:ちなみに、入庁10年目ですが、最初は任期付職員として採用されましたよね?

河尻氏:私は今でも任期付きなんですよ。1期の5年が終わって一度役所を辞めて、今は2期目です。もう一回レポートを提出し、面接もしています。

加藤:記事に書けないかもしれませんが、それって河尻さん前提の募集枠だったりしないんですか?

河尻氏:いえ、ガチンコです。他の任期付職員と同様に一般公募をしましたし、私より欲しいと思う人がいれば、その人を選んだと思います。

 実は、あんまり一人の人が長く同じ仕事をやるっていうのも、良い面と悪い面があるので、応募するのはちょっと迷ったんですよ。ただ、5年で市外からの認知はある程度取れたけど、シビックプライドの醸成はまだ始めたばかりだったので、そこに挑戦させてもらいたいと思って試験を受けました。任期は次の3月で満了なんです。

終わりのない仕事

加藤:10年を迎えて、満足感はありますか。

河尻氏:それが、結構難しくて終わりがないな、と。だからと言って、しがみつきたいとは思っていないんですけどね。

 まちで暮らすっておとぎ話みたいに“ちゃんちゃん”って終わるわけじゃない。たとえば起業すると決心した人がいたとして、その人はこの先うまくいかないこともいっぱいあるかもしれない。私はその人の人生を背負うわけではないけれども、一歩踏み出すきっかけのひとつになった可能性はあります。

 だから、関わった方々へ無責任に「起業すべき」と言うべきではないし、それ以前に、みんなが起業した方がいいなんて全く思っていない。どんな形であれ自分らしくまちで生きられるものが見つかればいい。まちは舞台なので、みなさんが主役として自分らしく演じてもらえればいいんです。

 私はその舞台装置の舞台セットの大道具担当として、主役にずっと長く楽しく演じてもらいたいんですけど、そのために大道具として何をやればいいのかっていうのが、ちょっとわからなくなってきて。

加藤:もやもやしている状態に近いんですか?

河尻氏:そうなんです。今、私が知っているスイッチが入って頑張っている方たちはまちの数%なんですよ。しかも、30代40代が中心なので、もっとシニアの方などまだ知らない頑張っている、頑張りたい方のネットワークも繋げていって本当の意味で地域に根付くようにしていかなきゃいけない。

 それは私のやることじゃなくて、スイッチの入った市民の方々が進めていくのかもしれない。流山に住むからにはずっとまちを好きで幸せでいてほしいんですが、これから先の進め方はメソッドがなくて悩んでいます。

 シビックプライドの醸成って、実際にやってみてすごく難しいというのが私の正直な感想なんですね。「流山最高!」と毎日言っている人がいたら逆にちょっと怖いし、そういう人は実際、あまり存在しない。以前、市民の方々にヒアリングしましたが、まちに住んでいて別に困らないこと、言い方によっては「空気みたいな存在であることが良いまちだ」という感覚だったりするんです。

 でもそういう方たちに少し体温を上げてもらって、人に「流山は良いまちだ」と話してもらえるようになるにはどうしたら良いのかと、試行錯誤の日々です。

私は流山市

加藤:最後の質問です。自治体で働く醍醐味を教えて下さい。

河尻氏:もともと私は公務員になりたいとは全然思っていなかったんです。なぜかと言うと、親族に公務員が多くて、「人のために役に立つのが楽しい」みたいなことを言っていて、妙に楽しそうだったんです。

 私は生意気にもそれはきれいごとで、自分のためになること、バリバリ働いて出世するほうが楽しいに決まっている、と思っていたんですよ。

 ただ、いざ自分が公務員をやってみると、人の幸せって素晴らしい。人それぞれそのスイッチの入る瞬間は違うんですけど、その瞬間に立ち会えるというのは、ものすごく喜びが大きいことがわかりました。

 土日休みに活動していると、「そんなに流山市が好きなんだね」みたいな話をされたりするんですけど、もう好きとかのレベルじゃなくて、流山市は私のアイデンティティの一部なんで、私は流山市なんです。細胞レベルで動いてしまうから、自分事なんです。自分のためにやっているので全く苦にならない、それが公務員の醍醐味ですね。

編集後記

多岐に渡り、密度の濃いお話であった。私は行動している人には常々尊敬の念を抱くが、加えて、行動者の言葉には強く惹きつけられるものを感じる。それは単なる話の密度だけではなく、本人がさまざまな壁にぶつかりながら、葛藤した心の機微が、時に静かに、時に激しく言葉の裏に見え隠れするからではないかと思う。

 今後、市民と自治体がよりフラットにつながるであろうことは誰もが予想できるが、それを促進するうえで、河尻氏の「市民協働は市民へのリターンを意識する」という観点はとても示唆に富むものだ。

 人が「リターン」と感じるポイントは、それぞれ大きく違う。昔はリターンと言えば金銭と名誉というところが定番だが、その地位は相対的に失われて行く傾向にある。先人の努力によって日本人は安定した暮らしを得ることとなり、その結果として市民は多様性を持つことになった。それに合わせて行政サービスも多様化を求められるが、多様化する個人の多様化するニーズをしっかりと認識しなければ、市民の満足度を高めることはできないだろう。

 人は自らの居場所に慣れてしまい、その価値を認識できなくなることが往々にしてあるが、自治体職員の方々は自らが所属する組織の価値や提供できるリターン、そして、組織だけではなく、自治体職員個として持ち合わせる多大な価値について気がついていないと感じることもある。

 河尻氏は日々市民と心を通わせ、市民一人ひとりが何を望んでいるのかを突き詰め、さらに自らが提供できるリターンを熟知しているからこそ、さまざまな事業を動かすことができているのだろう。

※本インタビューは全7話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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