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会場となった九谷セラミック・ラボラトリー

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物語化から産業創造へ(石川県小松市)「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(175)」

会場となった九谷セラミック・ラボラトリー

[記事提供=旬刊旅行新聞]

 小松市郊外に5月24日オープンした「九谷セラミック・ラボラトリー(CERABO KUTANI)」を訪ねた。施設は九谷陶石の加工場(製土工場)であったが、リニューアル後は九谷焼の後継者育成、若手作家の創作工房などを加え、新たな産業創造・産業観光の拠点施設として蘇った。設計は建築家・隈研吾氏である。
 その真新しい施設で8月初旬、「産業観光ワークショップ」を開催した。小松市と隣の能美市が連携し、地域の多様な工場・工房などの産業資源の活用をはかる狙いである。地域の多様な事業者が集まり、年度内4回の開催と現場視察などを予定する。
 この地域は九谷焼の一大産地。明治期に欧米で「ジャパンクタニ」と称賛された九谷焼は、江戸後期から小松市花坂地区で発見された陶石を用いる。陶石粉砕から九谷焼陶土ができるまでの昔ながらの工程が今も残り、この輝かしい歴史の裏には、地域の多様なルーツが眠っている。
 その1つが、2016(平成28)年に日本遺産に認定された「石の文化」(「珠玉と歩む物語」小松)である。弥生時代、自然・生命と権力の象徴として、朝鮮半島から伝わった「緑の玉」への憧れから、その原石産地探しが始まった。小松の碧玉は、きめ細かさと埋蔵量で他に抜きん出ていた。那谷・菩提・滝ヶ原で産出される碧玉を原料に、八日市地方で「玉つくり」を開始する。硬質な碧玉による管玉製作は当時の最先端加工技術であった。奇しくもその遺跡(八日町地方遺跡)の真上が、今日の世界的メーカー、コマツの発祥の地である。弥生から現在・未来につながる先端技術が受け継がれているのである。

日本遺産「石の文化」の石切場(小松市滝ケ原)

日本遺産「石の文化」の石切場(小松市滝ケ原)

 また、小松発展の祖・加賀藩前田利常公以来、近世のまちづくりが本格化すると石材需要が高まり、各地で本格的な石切り場の開発が始まった。日本遺産構成資産「滝ケ原」など、現在確認される石切場の多くはこの時期に開発されたものだ。
 小松でもう1つ忘れてはならないのが小松織物である。加賀絹の発祥地といわれ、ルーツは4世紀の雄略天皇時代に遡る。江戸時代、コマツは機業地としての基盤を確立した。とくに明治初期には足踏み手織からバッタン機を導入、その後ジャカード機による紋織物が始まり、一大産地に発展した。太平洋戦争時の混乱、戦後の全国的な繊維不況のなかで当時の面影はなくなったが、ニッチトップ分野でかつての技術が生かされている。
 今回の小松・能美のワークショップは、全国産業観光推進協議会(副会長は和田愼司小松市長)が手掛ける海外からの産業訪問「インダストリアルツーリズム」のモデルコースづくりも兼ねている。九谷焼をはじめ、石材や鉱山からスタートしたコマツの先端技術、繊維産業などなど、地域の多様な資源の物語化(編集)を通じた、新たな産業創造とこれらを生かす仕組みづくりの試みでもある。
(東洋大学大学院国際観光学部 客員教授 丁野 朗)

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