多職種連携を推進し 市民の理解を得ることが大事
加藤:他の自治体が横須賀のように在宅医療・介護体制の構築をする際に、肝となるのはどういう部分だと思われますか。
川名氏:『多職種連携』です。様々な職種が顔の見える関係を構築し、情報共有ができるような状態を作ることです。たとえば、「この患者さんの病態が今後どうなっていくか」という情報を医師は持っていますよね。それをケアマネジャーさんや、薬剤師さんや、訪問看護師さん、みんなで共有できて、患者さんを支えていこうとチームを作る。そうすることで、事前に病態の変化への対応策を共有できるから、かつては、病院や施設でしか診られなかった人が、最期までお家にいることができるようになるかもしれないということです。
もう1つは、患者本人が選択して、家族もそれをちゃんと理解して心構えができていることです。「ずっと最後までお家にいられるようにしようね」とチームで話をしていても、家族の心構えがあやふやだと、最後の最後に救急車を呼んでしまうことはよくあることなんです。『市民が理解し、選択し、心構えもできている』ということも大事です。そのために、私たちがちゃんと情報をお知らせしないといけないと思っています。
横須賀なりに進めたい
加藤:在宅医療・介護連携を進める上で、横須賀独自の取り組みというのはあったのでしょうか。
川名氏:国は、在宅医療・介護連携支援センターというような相談窓口を作って、コーディネーターを配置し、専門職からの相談を受ける体制づくりを各自治体に求めています。
横須賀でも、一応相談窓口は設置していますが、横須賀は別の形を目指しています。つまり、各専門職は設置された相談窓口を頼るのではなくて、自らがコーディネートできるようにネットワークを広げていこうということです。市民からの相談に対して全て自分が答えを持っていなくても、答えを持っているところへつなげることができるように、関係者一人ひとりが力をつけるようにしていくことを目指していきたいと思います。
仮に、窓口のコーディネーターさんがうまく連携を進めてくれても、その方が辞めた時のことを考えると、そういう人材は少ないので、後任を見つけることも難しい。持続可能性を考えると、窓口を頼るだけではない、一人ひとりがコーディネート力をつけるという横須賀なりの方向性も進めたいと思っています。
川名氏:横須賀市は先進的と言われますが、他都市の方によく申し上げるんです。「たいしたことはやっていませんよ。だって、できる事しかやってないですから」と。予算がなくてもできることから躊躇せずやってきただけのこと。どの市区町村だってきっとできます。それともう一つは、全国に先駆けて4年早く始めている。ただそれだけのことなんです。
コーディネーターを確保するのが難しくなってきている
加藤:市区町村が窓口を用意するのは、多くの自治体では難易度が高いのでしょうか。
川名氏:市区町村によると思いますが、大きな政令市さんでは区に医師会があって、訪問看護ステーションを持っていたりするところもあるので、そういうところに委託している例はあります。
でも、そうではない市区町村は、医師会と連携したり、自ら仕組みを作り上げたりする必要がありますよね。
コーディネーターの適任者として、ケアマネジャーの資格を持った訪問看護師というような人物像が浮かびます。しかし、そもそもそういう資格職は人材不足なんです。これからも、ますます採用が難しくなる中で、ちゃんと人材を確保できるのか、とても不安なところですね。
それぞれの地域にそれぞれのやり方がある
加藤:特に小さい自治体になればなるほど、コーディネーターを何人か入れても、辞めてしまった時に、知識やノウハウが寸断されてしまう可能性もありますよね。そういうことを考えると、医療・介護など、それぞれの方々が協力して連携し合っていく方が、将来にわたって維持しやすい自治体も多いかもしれません。
川名氏:その辺りは地域によって事情は違うと思います。例えば小さい町で、町全体が顔の見える関係だからうまくいっているところもあるんです。他にも、1つの医師会が複数の市町村にまたがっているような地域もあれば、逆に、市の中に医師会が2つあるような地域もあります。だから、市区町村でも置かれている状況によって、課題も違えばやり方も違うと思います。
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※本インタビューは全5話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。
第1話 『自宅で最期を迎えたい人』の願いを叶える仕事がある
第2話 当たって砕ければいいのに
第3話 義父の死と介護生活が 自分を突き動かしている
第4話 それぞれの地域にそれぞれのやり方がある
第5話 仕事は人と人の関係で動くもの