インタビュー

【岡崎市 晝田浩一郎氏 #6】地方自治体の仕事を世界に広げる

晝田浩一郎 TOP6

周りの大人達を説得してくれる上司

加藤:尊敬する公務員の方はどういう方ですか?

晝田氏:プレーヤーとして優秀な人はすごくいっぱいいると思っています。ただ、マネジャーとして優秀な人になかなか会う機会がなかったので、特にそういう人を尊敬しますね。

 当時は課長で、いまは経済振興部長を務められている神尾典彦さんという部長がいるんですけど、『ここやる』を始めるときに、プレスリリースを配信すると報告したんです。

 そうしたら、すぐ「わかった」と言ってくれて、翌日くらいに市長や副市長に会う機会をつくってもらい「何をやるか、お前らがしゃべれ」と言ってくれたんです。

 僕たちもやっぱり市長とか副市長と一緒に動いてもらえたらありがたいんです。そのルートを作ってくれた。そして、市長、副市長も「おう、頑張れよ!」という感じで言ってくれたんです。

 神尾さんは自分で絶対に言わないですけど、裏で根回しというか、一言口添えて下さっていたと思いますし、人事や秘書課の役職者に対しても「若手でこんなことをやっているやつらがいるからよろしく」みたいなことを言って、後押ししてくれているんです。それに僕はすごく感動しました。周りの大人たちを説得していただくという、まさに部下が上司に望むことをしていただけたんです。

 そもそも、課長職だった人がすぐに「わかった」って言ってくれることがすごいですよね。正直、僕はもともとケンカする気満々だったんです(笑)。「そんなん止めとけ」とか言われたら、「プライベートに口出すんですか?」みたいな感じで(笑)。

加藤:(笑)。晝田さんご自身はどういう公務員になりたいですか?

晝田氏:私も神尾さんのように、部下を否定するんじゃなくて、またそれをそのまま通すわけでもなくて、「どこを目指しているのか」という目的を聞いたうえで、後押しできるような公務員になりたいと思っています。それは上司になったときもそうだし、いまも、『ここやる』でもそうです。

人類をアップデートしたい

加藤:自分の人生の中で、成し遂げたいものはありますか。

晝田氏:僕の人生のミッションは『人類のアップデート』だと思っています。

 iPhoneとかスマートフォンって、多分、ジョブズがいなかったとしても、2030年ぐらいにはみんな持っていたと思うんです。ただ、彼がいたことによって20年時間を早めたと思っていて、それがすごい価値だと思っています。

 人生100年ぐらいは生きられるようになっても、せいぜい100年。そんな中でも未来を見たいんですよ。ドラえもんも誕生してほしいし、シンギュラリティも見たい。それを『人類アップデート』って言っているんですけど、それによって社会を良い方向に導いていきたいと思っています。

 今新しく、Code for AICHI(コード フォー アイチ)というのを立ち上げて、実際にシビックテック(市民がテクノロジーを利用して自ら社会を良くしていく)で社会に、『こと・もの・サービス』をローンチしていこうとしています。これも、社会を良い方向に導いていきたいからです。

地方自治体の仕事を世界に広げる

晝田氏:地方公務員の人って、「市民のために」とか、「市民の幸せのために」と言うんですけど、もっと僕は視点を広く持てると思っています。日本の地方自治体の仕事って世界を変えていける、世界を良い方向に導いていける仕事だと思っているんです。

 なぜかというと、日本は課題先進国で10年後の海外の課題にいま直面している。もし地方自治体の仕事が仕組み化できれば、日本はもちろん世界にも広がるんですよね。もちろん、ローカルにアジャストする必要はありますけど。

 そこでいま僕らがやれることは、どんどんトライアルをして社会を変えるアクションを仕組み化すること。それは仕事でもそうだし、『ここやる』でもそうです。

行政は住民の幸福のために青写真を描ける

加藤:最後の質問です。自治体職員として感じる醍醐味はなんでしょうか?

晝田氏:今は強い想いを持っていますが、私は正直、「9時5時で安定しているから」と思って公務員になりました(笑)。そんな私のような人間でも、何かを生み出しやすい環境があるということです。

 最も大きいものとして、役所や公務員には“信用力”があります。中小企業支援をしている中で、企業訪問をさせていただくんですが、「岡崎市役所の晝田です」と言うと話を聞いてくれて、いろんなこと教えてくれます。

 そして、良いか悪いかは別として行政は利益追求をしていないので、住民の幸福のために青写真を描けるんです。「こういう未来を作りたいんです」って本気で言える。それが醍醐味ですよね。そこから世界を変えていける可能性がある。

「50歳になったときに、あなたは何をした人だと憶えてもらいたいですか?」という言葉をP.F.ドラッカーが言っているんです。私は自分が50歳になったときに『ここやる』をつくった人とか、その程度の話じゃなくて、もっと上の話ができないといけないと思っているんです。そのためには、実証実験じゃないですけど、もっと沢山トライアルをしなければいけない。物事なんて100やって1花が咲けば良いくらいに思っています。
 もし、何をどうやっていいかわからないという方がいたら、『ここやる』でぜひ一緒にやりましょうって思っています(笑)。

編集後記

晝田氏の特筆すべきポイントはいくつもあるが、私は2つのことが心に残っている。

 まず、自身が『ここやる』を立ち上げた動機が、「塩尻市役所の山田崇氏を見返したいからだ」と述べたことである。人はとかく過去の自分を美化してしまいがちだ。しかし、晝田氏は、「見返したい」という表現が美談らしからぬものと理解していながらも、ありのままの自分をさらけ出す、その心根に魅力を感じてしまうのである。

 もう一つ。これはインタビュー記事には残していないが、晝田氏は「自分のダメな部分も記事に書いてほしい」という言葉を繰り返した。その意図は、「自分のような人間であっても、活躍できる可能性がある」と伝えることで、どこかで苦労している若手職員や、公務員志望者を勇気づけ、行動につなげられる可能性があるからだという。

 自分の見映えを気にするのではなく、この記事によって何かを生み出そうと考えている晝田氏には頭が下がる思いである。

 今後、挑戦ができない組織は長期的には弱体化していく。そうならないためにも、晝田氏のような若手が挑戦、活躍できる環境構築が自治体に求められるのではないか。若手には伸びしろという『将来性』があるのはもちろんだが、高い『行動力』や『先見性』があるということは、世の常ではないだろうか。

 若手が挑戦し、それが成功に終わればハッピーエンドである。そして、たとえ失敗したとしても、それを将来への“教育投資”と理解すれば必ずしもマイナスとは言えない。
 地方自治体内外から、“失敗”に対する寛容性が醸成されるべきではないかと思うのである。

※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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