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佐々木晶司4

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【元国土交通省 佐々木 晶二氏 #4】自治体の動きを止めるのは、50代後半の幹部

コミットしない人間は、いくら出て行っても仕方がない

加藤:地方自治体の職員はもっと外に出て、民間企業と接点を持った方が良いと思われますか。

佐々木氏:役所以外のいろんな社会とつながって、ハブとしての役割が求められているため、地方自治体の職員や役人が外に出ていくことが必要なのは間違いないですよね。

 でも、つなげる価値を生み出せないならやる意味がないですよね。僕自身、大出世をしたわけじゃないけれど、国土交通省や他の役所、そして、民間の活躍している人ともつながりを持てています。経験を積んで、それぞれの評価があって初めてネットワークが構築され、新しいものが生み出されます。新しい価値を生み出すことに積極的にコミットしない人間は、いくら出て行っても仕方がないんです。

まず相手を信頼する

加藤:ご自身がハブになるうえで、気をつけている点はありますか。

佐々木氏:相手を信頼すること。まず、自分が相手を信頼しないと、相手から信頼されないですよね。元々役人は、“信頼しない人”が多いんです。国家公務員、地方公務員、せめて大企業の社員なら信頼して付き合ってもいいけれど、名も知らない会社とは関係を作らないという、閉じた世界で安心してしまっているわけです。ただ、最近は変わってきていて、今ちょうど過渡期にあるように思います。

自治体の評価は減点方式

佐々木氏:ただ、私は外に出て行って役所の中ですごく損をしました。

 たとえば、総務課長だった東日本大震災の時に、自主的に現地に入って、現場の人に話を聞きに行くことがありました。その話をもとに、他の課長に「こうしたほうが良いんじゃないか」と話をしたら、「総務課長が現地に行かなくても良いんじゃないか」と批判を受けたり、攻撃されることもありました。 

 役所は減点社会なので、プラスになっても評価はされないわけです。それでもやる気があれば、相手の話を信じて一緒に考えることを通じて、前に進むことができます。そのほうがトータルで考えると、相手も自分も幸せにすることだと感じています。

自己判断で任せてくれる場が必要

加藤:行政の評価の仕組みを変えて、加点評価に切り替えられると思いますか。

佐々木氏:評価よりも僕が最近注目しているのは、大企業でやっている社内ベンチャーのような仕組み。組織のピラミッドが大きすぎるからこそ、行政の組織の中に小さいチームを作って、自由な活動を促進する仕組みを取り入れることができないかと思っています。

 若くてやる気がある職員が何かしようとしても、上に何人も役職者がいるため、決裁をとる間に話がつぶれてしまうわけです。これを自己判断で任せてくれる場ができると、もっと可能性が広がるはずです。

“できない壁”を自ら作る自治体

佐々木氏:地方自治体は自主的に条例を作ることができますが、実際に条例が作られることは少ないです。

 自治体が自由に権限を使うことで土地の規制などを緩和すれば、地域のいろいろな人を応援できるのに、“できない壁”を自ら作ってしまうんです。これだけ地方分権が進んでいるので、市町村の施策自体をもっと民間応援型に変えたいですね。

“できない壁”を破るには“意識改革”が必要

加藤:できない壁を破るには、何が必要でしょうか。

佐々木氏:意識改革だけですね。2000年に地方分権一括法が施行され、機関委任事務が廃止されました。今は、法律で「~にしなければならない」と記載していること以外は自由にできるようになったわけです。それにもかかわらず、今は「権限は使わない、使いたくもない」という意識があります。ここを変えなきゃいけないですね。

動きを止めるのは、50代後半の幹部や管理職

佐々木氏:多くの場合、新しい取り組みをする際にネックとなるのが、50代後半の幹部や管理職。定年までの時間を混乱なく過ごそうと考えているため、将来の価値に関心がないわけです。その壁は厚く、どうやって突破したら良いかという相談がとても多いです。

 民間企業であれば、リスクのとれない人間は真っ先に外される。国の場合は、入った年次で1人が次官になって、他は辞めていくため新陳代謝が早いですよね。地方自治体は力のあるポストになる年齢が遅いために、リスクを取れない年齢で権限を持ってしまうことが課題だと思います。

市長か副市長に直接話すべき

加藤:上司が理解してくれない場合、どういうアプローチがありますか。

佐々木氏:そもそも、辞める直前の部長に話を持っていくくらいなら、市長か副市長に直接話した方がいいと思います。市長は任期が4年と短く、地元とダイレクトにつながっているため、感度の高さは全然違います。あとは、役人上がりの知事ではなく、いろんな経験している人とつながっていると面白いと思います。

自治体職員は超エリート いろいろな経験をするべき

加藤:兵庫県や岐阜県にいた時にも、若手職員で頑張っている人に出会う機会は多かったのでしょうか。

佐々木氏:そうですね。田舎で県庁や市役所に勤務している人は超エリート。そういう優秀な職員こそ、民間にもっと出て行っていろいろな経験をするべきだし、国でやっている官民交流みたいなことを、地方自治体でもきちんとやるべきだと思います。

 加えて、副業ですね。一緒にいろんな仕事を経験することが認められていないのは問題です。公務員しか経験がないからこそ、その地位にしがみつくということにつながると思います。

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※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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