インタビュー

【元国土交通省 佐々木 晶二氏 #6】“外の世界”と“歴史”を学んでほしい

佐々木晶司6

外の世界・歴史を学んでほしい

加藤:国と地方における経験から、国家公務員と地方公務員それぞれに伝えたいことはありますか。

佐々木氏:ひとつは、海外や民間など、“外の世界で起きている事象を学ぶこと”。ふたつ目は “歴史を学ぶこと”ですね。

 行政の仕事は社会全般を相手にしています。そのため、国・民間にかかわらず、いろんな国で“行われていること”、そして、“行われたこと”を知るのはすごく大事だと思います。最近は、社会工学やビッグデータを使って予測するという風潮が強いけど、人間の行動、ことさら集団の社会や経済は予測できないもの。予測できないからこそ、過去に学んで、いろんなことに備える必要があると思います。

 ふたつ目は“歴史を学ぶ”ということ。たとえば、先ほど話した大学の定員抑制の話。高度成長期は、自民党が強くて地方議員も多かったこともあり、東京や大阪の大都市に工場とか大学を立地・増設させないと決めたんです。でも、それが長い目で見て日本の国際競争力や知的能力を落としているということで、結果的に廃止された歴史があるわけです。歴史は壮大で知的な社会実験の積み重ねなので、よく調べる必要がありますよね。

行政の仕事は、市民を幸せにすること

加藤:自治体で仕事をする醍醐味を教えていただけますか。

佐々木氏:行政の仕事は、市民を幸せにすることによって社会を良くできる、非常に利他的な仕事ですよね。市民の生活を良くするための施策を実行できる。なかなかそういった仕事はないから、それは醍醐味だと思います。

 でも、せっかく行政の仕事に就いているのに、自分の保身に走ったり、業界と付き合っておいしい思いをしようとするのは、全然面白くない。壁を壊して、市民の幸せになることを、自発的に実行していくと良いと思います。

 また、一回役所を辞めて、民間などで成果を上げて戻ってくるとか、流動的な人事システムができると、職員ももっと生き生きとしてくると思います。能力のある人間の流動性が高まり、役所の世界でもヘッドハンティングが起きたら面白いですね。周りの職員の刺激にもなるし、無理して民間とつながらなくても、役所の中が官民経験者で混然一体とした世界になっている可能性は今後、十分ありますよね。
(編集=橋本綾乃 加藤年紀)

編集後記

 率直にご自身の意見を仰っていただいた。『歴史を学ぶ』ことの重要性が説かれているが、佐々木氏のお話自体がその歴史の一部分であると感じる。

「能力のある人間の流動性が高まり、役所の世界でもヘッドハンティングが起きたら面白いですね」という、佐々木氏の言葉には深くうなずくものがある。そして、当然の成り行きとして、官民における人材流動性が高まるとともに、活躍した自治体職員がまた別の自治体でその力を発揮することが、いま以上に増えても良いのではないかと思う。

 それは、プロ経営者が企業を転々としながら、自分の能力を生かすのと同じことである。一度、成功事例を作った人が、間断なく自治体を回ることになれば、その専門性がより広い地域で生かされることになるからだ。

 多くの場合、成果は人に直結する。日本では転職自体が活発ではなく、まるで離職することが裏切りのように捉えられたりする風潮もある。その弊害として、伸び行く産業領域や改革を見込める領域に優秀な人を集中させづらいデメリットが働く。

 佐々木氏は挑戦する人を強く応援していた。それは恐らく、過去の自分自身が挑戦をし続け、その経験が自身の人生を豊かにしたという自負があるからだろう。挑戦に寛容な組織は少しずつ増えていると思うが、さらに、その動きに拍車がかかることを願う。

※本インタビューは全6話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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